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インド太平洋における フランスの 海上安全保障

インド太平洋における フランスの 海上安全保障

ジャン=マチュー・レイ(Jean-Mathieu Rey)少将が FORUM に地域的展望を語る

事実上の太平洋諸国として、フランスはインド太平洋地域の問題に関心を寄せている。「同地域のフランス領には 160 万人が居住しており、20 万人のフランス国民がインド太平洋諸国に居住しています」。FORUM にそう語るのは、アジア太平洋海域フランス共同司令官(ALPACI)ジャン=マチュー・レイ(Jean – Mathieu Rey)とフランス領ポリネシアのフランス軍だ。レイ共同司令官は主にインド太平洋で25年間の海上勤務経験がある。イギリスおよびフランスで高等司令部・参謀コース(Higher Command and Staff Course)を卒業したレイは、コマンドー小隊長、巡視艇司令官、フリゲート司令官から空母打撃群シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)の参謀長、防空駆逐艦フォルビン(Forbin)の司令官までの役職を歴任している。外務省に出向し、アジア・南米の安保・防衛協力の顧問を務めた経験もある。さらに 2017 年から 2020 年の間には、水陸両用艦、原子力潜水艦および空母の運用準備を監督する艦隊サービスサポートの副部長を務めている。

太平洋においてフランスはどの程度の EEZ(排他的経済水域)を保有しているのでしょうか?

フランスの EEZ は世界第2位の規模です。様々な地域の EEZ の中でもフランスの太平洋におけるEEZは最大のものであり、延べ 680 万平方キロメートルがオーストラリアとメキシコの間に位置する4つのハブ拠点の周りに分布しています。それらの拠点とは クリッパートン島、フランス領ポリネシア、ニューカレドニア島、ウォリス・フツナ諸島です。

EEZ はどのように管理されているのでしょうか?

フランスの EEZ は大規模のため、EEZ の管理と海上監視は非常に困難です。EEZ の保護には、海上安全 (捜索・救難活動、船舶交通の監視)、環境保護
(石油流出への対応と準備)、海上警備(法執行、テロ対策)、違法行為(IUU(非合法・無報告・無規制)漁業、人身売買、麻薬・兵器輸送)の抑制の 4つの主な任務が含まれます。

フランス軍はどのような装備を保有しているのでしょか?

太平洋におけるフランス軍は監視フリゲート、巡視船、公海支援・援助船、沿岸タグボートなどの多岐にわたる装備を保有しています。合わせてファルコンガーディアン(Falcon Guardian)、CASA、ドルフィンヘリコプター(Dolphin helicopters)などの航空機も使用されてます。さらに、衛星による監視により広範囲の探索が可能となっています。

2020 年 12 月、統合海上警備行動を実施中の海上自衛隊のヘリコプター駆逐艦 「JSひゅうが」と編隊を組んで航行するフランス海軍の攻撃型潜水艦「FS エメラルド(FS Emeraude)」。マーカス・カスタネダ(MARKUS CASTANEDA)二等兵曹/米国海軍

私の沿岸警備隊の任務としては税関、海事部門、憲兵隊、国家警察、海洋資源保護を担当するポリネシア行政など、海に関連するすべての機関の行動の調整を行っています。2011 年には海上監視を改善するための海事庁間センター(Maritime Inter Agency Centre)が創設されました。情報の統合、漁業監視、捜索救助をそれぞれ担当する 3 つの部門で構成されています。

フランスの海上活動はフランスの EEZ 内に限定されているのでしょうか?

いいえ、海上安全保障上の脅威は国内の海上範囲に限定されません。太平洋上の海上課題に対処するために世界的なアプローチを取らなければならないと考えています。

7,000 人から 10,000 人の国防軍人を抱えるフランスは、ヨーロッパの国の中では唯一常備的な軍事プレゼンスを維持しており、これは地域の保全に対するコミットメントと世界的な野心を強調するものです。フランスの軍事組織の核となるのは、ALINDIEN として知られるアブダビのインド洋の海洋地帯、そして私が管轄するパペーテのALPACI からなる2つの地域司令部です。さらにジブチ、リユニオン(La Reunion)、ニューカレドニアの 3 つの現地司令部は、それぞれのEEZ を保護するとともに定期的に資金提供および支援を行っています。

この枠組みをご覧いただけば、フランスの行動はフランスの EEZ 内に限定されないという意図がお分かりいただけるでしょう。核大国かつ国連安全保障理事会
の常任理事国であるフランスは、地域の海上脅威への対処と危機防止に全面的に貢献しています。太平洋の恒久的な軍事拠点はフランス本土から送られる船舶や航空機によって容易に強化することができます。例えば、2019 年のシャングリラ・ダイアローグ (Shangri-La Dialogue)の際にはフランス空母打撃群
の空母シャルル・ド・ゴールがシンガポールに寄港し、新型コロナウイルス危機の中では、長距離飛行機が太平洋で決定的となる支援を行いました。他にも水陸両用任務群、駆逐艦や海上哨戒機などの配備が計画されており、これらの編成は毎年見直される予定です。海上懸念に対処しなければならない時でも効果的な運用のためには間接的なアプローチが基本となります。

私の指揮下にあるフランス軍は、海上や空の自由な航行の原則や多国間主義に基づいて北朝鮮による核兵器の拡散にも対処しています。

この地域における主な課題は何でしょうか?

航行の自由を守ることが最も重要です。世界中の海上安全保障は、航行の自由を維持することを目的とする国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいています。
太平洋におけるフランスの海軍のコミットメントは、この国際ルールに基づく秩序を促進し保護することを目的としています。長期にわたる国連海洋法条約の交渉には 150 以上の国が参加しました。1982 年にジャマイカのモンテゴ・ベイで、沿岸国による海洋資源利用の権利と歴史的な原則である領海外の航行の自由という 2つの間の最良の妥協案について各国が合意に達しました。私はこの妥協案を保護し、促進するのが私たち皆の使命だと考えています。

海上安全保障上の課題は海賊行為、IUU 漁業、気候変動、違法な人身売買、難民など、数多くのさまざまな領域に存在します。

麻薬の売買は非常に大きな問題ですがフランスはどのように対処しているのでしょうか?

麻薬密売人に対抗するための海上戦略は次のようなものとなっています。

海域に出入りする船舶、特に低速で航行する船や帆船、漁船の出入りの監視。

微弱信号の検出するため海上データベースの分析。

国内外のパートナー、特に米国の西部合同諜報タスクフォース(Joint Interagency Task Force West)および南部合同諜報タスクフォース (Joint Interagency Task Force South)との海事情報の共有。

これらのすべての情報に基づいて軍の介入が必要と判断された場合は、私が海上におけるすべての関係機関 (憲兵、税関、検察官)の調整を担当します。

この戦略のおかげでフランスの部隊は 2016 年から2020 年の間に、中央アメリカからオーストラリア・ニュージーランドへ向かう船舶から 5 トン以上の
コカインを押収しました。憲兵隊や税関部隊もまた数百隻の船舶を検問しました。

多くのインド太平洋諸国が乱獲に懸念を抱いています。これに対するフランスの戦略はどのようなものでしょうか?

フランスは次の 3 つの戦略を中心として違法漁業に対処しています。

電子センサーによる異常または不審な行動の監視。 

衛星画像の有効活用。

航空・海上部隊の配備。

外国漁船はEEZ内外で監視されていることを知っているため、結果として我々の水域で違法漁業を行うことはありません。

2020 年には外国漁船 1,677 隻を継続的に監視し、ガーディアン(Guardian)航空機は EEZ とその周辺地域で 304 隻以上の漁船の上空を飛行しました。

また、太平洋諸島諸国との強力かつ効果的な協力関係も構築済みです。このような協力関係の例としては週単位での海上情報の共有、他の EEZ 内でのフランス船舶によるパトロール、海軍船舶への連絡士官の配置、地方自治体の法執行訓練などが挙げられます。

フランスは他のインド太平洋諸国とどのような協力関係を結んでいますか?

フランスは鍵となる外交ネットワークと定期的な軍事協力を通じて、この地域のすべての国と二国間関係を維持しています。

これに加えてフランスは、西太平洋海軍シンポジウム(Western Pacific Naval Symposium)、太平洋合同安全保障会議( Joint Heads of Pacific Security Meeting)、太平洋およびインド洋海運ワーキンググループ(Pacific and Indian Ocean Shipping Working Group)などの多国間組織と密接に関わっています。2002 年以降、フランスは四ヵ国国防衛協力機構(Quadrilateral Defense Cooperation Organization)にも加盟しており、

直近の ASEAN(東南アジア諸国連合)国防相会議にも参加しています。四ヵ国防衛協力機構は各島国に支援を提供し、二国間軍事協力と安全保障協力
のための構造的協力を最適化するために、オーストラリア、ニュージーランド、米国の主導により1992 年に創設された枠組みです。同機構はまた、太平洋諸国間の政治的対話を促進するとともに、常に最新の安全保障体制の確保に務めています。

フランスは環太平洋合同演習(RIMPAC)など多くの地域演習に参加しています。パンデミックにより困難な状況が続く中でも、この重要な合同演習
にフランス海軍の艦船を派遣することができました。これは米国太平洋艦隊およびインド太平洋に展開する全米国軍との強力なパートナーシップの表
れです。しかし、重要な演習は環太平洋合同演習だけではありません。フランスが主催し、ポリネシアとニューカレドニアでそれぞれ2年ごとに交互に
開催されるマララ(Marara)演習とクロワ・デュ・スッド(Croix du Sud)演習についても言及する必要があります。2021年4月と5月に行われたマララ
演習は、太平洋の各島国における人道支援・災害救援活動をシミュレートすることで同演習が現実的なシナリオに基づいた合同トレーニングおよび経験交換
のための重要な機会であることを確認しました。

最後に結論はありますか?

この広い海域に海軍および航空部隊を定期的に配備することは、フランスのパートナーとの二国間関係および多国間の関係の維持に欠かせないものです。海軍の2隻のフリゲート(タヒチ (Tahiti)およびヌーメア(Noumea))は、東南アジアだけでなく東太平洋でもよく知られています。フランスはまた、太平洋地域に向けてジャンヌ・ダルク(Jeanne d’Arc)任務部隊を 2013 年以降ほぼ毎年可能な限り定期的に展開しており、同部隊はヘリコプター揚陸艦と護衛艦、および空母打撃群または駆逐艦で構成されています。

最後に重要なことですが、本土の基地から遠く離れた場所に航空部隊を短期間展開するフランスの能力を強調したいと思います。2018 年 8 月、ミッションペガセ(Mission Pegase)の参加者 (4 機のラファール(Rafale)戦闘機とその支援機)は、オーストラリアでピッチブラック(Pitch Black)演習に参加した後、アジアのいくつかのパートナー国を訪問しました。


インド太平洋におけるフランス

この困難な地域におけるフランスの戦略的優先順位は、2019 年に発表された「インド太平洋におけるフランスの防衛戦略(France’s Defence Strategy in the Indo-Pacific)」で定義されている。

フランスの主権の完全性を確保しフランス国民、領土、排他的経済水域を保護する。

軍事と安全保障の協力を通じて地域環境の保全に貢献する。

世界的な戦略的競争と厳しい軍事環境の中で、パートナーと協力して共有空間への自由でオープンなアクセスを維持する。

• 包括的な多国間協調行動を通じて、戦略的安定とバランスの維持を支援する。

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