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インド太平洋提携諸国がミャンマー治安部隊による暴力を非難する中、クーデターを暗黙に支持する中国

FORUMスタッフ

ミャンマーの軍事クーデターを単なる「内閣改造」と表現した中華人民共和国(中国)により、国連声明からクーデターを非難する文言を削除されただけでなく、拘留されている与党幹部等の釈放に取り組む国連の動きが鈍化したが、インド太平洋の提携諸国がミャンマーの民主主義復活に取り組む姿勢を示した。

2021年2月中旬に、米国国務省のネッド・プライス(Ned Price)報道官がオーストラリア、インド、日本、米国の外相が「ミャンマーで民主的に選出された政府復帰の緊急的必要性、および周辺地域における民主主義の回復力強化という優先課題」について協議したと述べたと、フランス通信社(Agence France-Presse)は報じている。

茂木敏充外相の発言によると、日本は抗議活動に関与した「民間人に対する(ビルマ)国軍の暴力的な対応の即時停止を強く要請」している。

CBSニュースが伝えたところでは、今回の国軍による乗っ取りを正式にクーデターと定義した米国は、米国におけるミャンマー政府の保有資金を凍結し、ミャンマー政府向けの支援プログラムの見直しを促した。米国国務省当局は、「当国はビルマ軍による民主的政府幹部等の拘留に対して深刻な懸念を表明した」とし、「事実と状況を注意深く調査した結果、ミャンマー与党のアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)国家顧問および選挙により正式に就任したウィンミン(Win Myint)大統領は2月1日に軍事クーデターに起因して罷免されたという結論に達した」と述べている。

ミャンマーの近隣諸国もまた、アウンサンスーチー国家顧問を釈放し、抗議者等に対して殺傷力の高い武器を使用することを停止するよう国軍に圧力をかけている。2月28日、ミャンマー治安部隊が群衆のデモ隊に対して再び発砲したことで18人が死亡した事態を受け、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟諸国も臨時外相会議を開催して議長声明を発表している。ロイター通信の発表によると、2月1日以降、抗議行動に関連して少なくとも21人が死亡している。(写真:2021年3月2日、ミャンマーのヤンゴンを行進する反クーデター抗議者等)
シンガポールの李顯龍(Lee Hsien Loong)首相はBBCニュースに対して、流血事件はミャンマーの悲劇的な後退を示すものと語り、インドネシアのルトノ・マルスディ(Retno Marsudi)外相は政治的抑留者の釈放を求めた。

中国共産党(CCP)からは懸念は表明されていない。クーデター発生時、中国の国営通信社である新華社通信は国軍による乗っ取りを「大規模な内閣改造」と表現している。翌日開催された国際連合安全保障理事会(国連安保理)の非公開会合では、拒否権を持つ中国とロシアにより、クーデターを非難する国連安保理の取り組みが鈍化した。

中国がクーデターを暗黙に承認したという噂を中国外務省(中華人民共和国外交部)は否定しているが、クーデター後に軍事政権を積極的に支援する同国の姿勢には疑問を禁じ得ない。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のスーザン・ハッチソン(Susan Hutchinson)アナリストが2月23日に発表した記事によると、2月下旬に1週間以上にわたりミャンマーのヤンゴン国際空港と中国雲南省の昆明長水国際空港を不定期の旅客機が毎晩のように往復している。同記事によると、中国政府は水産物を運搬する貨物便であると主張しているが、両国政府がこれを秘密裏に行っていることから、これが単なる水産物輸送の可能性は低い。

同記事には、「こうした便を手配した人物は、航空機の往復を必死に隠蔽しようとしている」と記されている。航空機のトランスポンダは切られており、空港のオンラインでチェックしてもこれは昆明長水国際空港の定期便ではない。輸入した魚類の冷蔵・冷凍食品が2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)ウイルスの発生源であるというほぼあり得ない説を中国当局が繰り返し主張してきたことからも、ここに来て中国が頻繁に水産物を運搬するという行動も疑わしい。

しかも、衛星画像、ヤンゴン国際空港の労働者、ミャンマーで反クーデター抗議を繰り広げる市民等から詳細情報が収集されている。両空港間の往復には2つの理由が考えられるとする同記事には、「1つは、中国が『Tatmadaw』と呼ばれるビルマ軍による情報とインターネットへのアクセスを支援することを目的として、中国人部隊とサイバー専門家をに派遣している可能性である。もう1つは、中国が軍に装備を提供している可能性である」と記されている。

体制に対する異議を抑制するためにソーシャルメディアサイトを検閲するのは中国の得意技である。同記事によると、中国はとの活発な兵器取引を継続することで経済的利益が得られる。昆明市は中国人民解放軍・成都軍区の第4砲兵旅団の本拠であり、さまざまなシギント部隊やサイバー隊も存在している。

 

画像提供:AFP/GETTY IMAGES

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