パンデミック以上の課題が発生すると考えられる2021年

FORUM スタッフ

新型コロナウイルス感染症パンデミックが収束しないまま迎えた2021年は、専門家等の見解によると安保という点でインド太平洋地域には既存の課題だけでなく、新たな問題が発生すると考えられている。

絶え間なく攻撃的な行動を続ける中国のみならず、これまでのところ非核化を拒否している予測不可能な北朝鮮が引き続き戦略的課題が提示されると思われる。

アメリカ進歩センター(CAP)のマイケル・フックス(Michael Fuchs)上級研究員と同センターにおける国家安保・国際政策課のアジア政策に従事するハヌル・リー(Haneul Lee)研究助手が著述した同センターの分析論文には、「2021年初旬は前例のない時期になると考えられる。米国や日本、そして他諸国が引き続きパンデミックと経済危機に曝される。気候危機や中国に対する懸念の高まりに直面することは言うまでもない」と記されている。

1月20日にジョー・バイデン(Joe Biden)次期大統領の就任が予定されていることで、同盟・提携諸国がこうした課題や他の問題に対処できるように米国が提供する資源について米国の政策が変化する可能性がある。しかし、専門家等の見解では、影響力強化を目指す中国の活動抑制にバイデン政権が取り組む可能性は低い。

米国国家情報長官(DNI)代理を務めた経歴のあるデビッド・ゴンパート(David Gompert)元副長官はアジア・タイムズ・オンラインに対して、「米国は自国が介入を開始する事態の閾値というものを設定しているが、中国はその閾値を超えない程度の活動で近隣諸国への脅迫を続けようとするかもしれない。しかし、中国がその閾値の高さを誤って判断する可能性、また資産に対する脅威を認識した場合に米国がどの程度の威力を発揮するかを過小評価する可能性がある」と説明している。

武力紛争が勃発しない程度の挑発行為が行われ、平時状態でも戦争態勢でもない「グレーゾーン」の状況にうまく対応していかなければならないことから、インド太平洋地域の軍隊と政府には新たな課題が発生する。

オーストラリア国際問題研究所(AIIA)は、「本格的な戦争は発生しそうもないが、諸大国は自国を優勢に保つために、引き続き戦争と平和の間のグレーゾーンをうまく活用する可能性が高い」とし、「この有事の形態に慣れていない諸国には、非軍事的な接近という微妙な攻撃を多用する攻撃者への対策を整えることが課題となる。今必要な事柄は、法を遵守する諸国がアジアの公共領域で法治に基づく秩序を確立することに向けて努力を続けることである」と述べている。

同地域だけでなく、世界に広がりつつある別の新たな有事の形態として武装無人航空機(ドローン)が挙げられる。諸国の軍隊は全地域において、安全な自律航法で無人航空機を利用することに取り組んでいるが、オンライン雑誌「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」によると、地上操作や海底ロボット経由でこうした装備を使用することを禁止する法的枠組が欠如しており、この類の航空機の展開が加速する可能性がある。

また、同誌の記事には、「しかしながら全体的な戦争のロボット化は均一に進展しているわけではない。武装無人航空機が当たり前の時代が来てもそれと同時に武装地上ロボットや海軍ロボットの存在が常態化するとは限らない」、また「これには明確な技術的根拠がある。陸上で安全な自律航法を行うのは空中よりもはるかに困難なためである」と記されている。

また、米国のソーラーウィンズ(SolarWinds, Inc)製品を使用する企業への大規模サイバー攻撃についてはロシア政府の関与が疑われているが、同誌の記事には、これに類似したハッキングが今後発生する可能性について警告する内容も記載されている。

ザ・ディプロマットの記事では、「ハッキングに対処するのは容易ではない。まず、詳細を緊急に把握することだけでなく、アクセス可能な言語で説明することが困難である。しかもハッカー側はもちろんのこと、ハッキングされた側も公表を控える傾向にある」、また「2021年には、範囲と規模という点でソーラーウィンズ製品へのハッキング以上の事件が報道される可能性があるが、こうした事件についてそれに見合った詳細が公開される可能性は低い」と記されている。

 

画像提供:ISTOCK

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