イランに拿捕されたタンカーと乗組員の解放に向けた韓国の外交努力

イランに拿捕されたタンカーと乗組員の解放に向けた韓国の外交努力

FORUM スタッフ

イラン政権との金融取引の制限を伴う米国の対イラン制裁により、2019年以降、韓国の銀行口座から7,000億円相当(70億米ドル)のイラン資産を送金できない状況が続いている。複数の報道によると、この扱いを巡ってイランと韓国の対立が激化する中、2021年1月4日にイラン革命防衛隊(イスラム革命防衛隊)が韓国籍の石油タンカーを拿捕し、乗組員を拘束するという事件が発生した。

AP通信が報じたところでは、韓国政府高官が同問題を協議するためにカタール訪問の前にイランを訪れることは以前から予定されていたが、その直前に拿捕事件が発生したことで、イランは韓国政府に圧力をかける狙いがあると考えられている。

さらに、タンカーを拿捕した同日、イランはウラン濃縮度を20%に引き上げる作業に着手したと、AP通信は伝えている。これは、2015年にイランと世界大国が合意した核合意で定められる上限を大幅に上回る濃度である。これによりイラン政府はすぐにでも簡単な技術プロセスで兵器用に純度を高めることが可能となる。

コリアタイムス紙が伝えたところでは、韓国当局はタンカーと乗組員の解放を要求しているが、環境法違反の容疑がかかっている同タンカーの問題は司法判断が必要な事案であるとイラン側が主張しており、拿捕から約1週間を経た現在も交渉の進展が「曖昧」な状態であることから韓国政府の外交的希望に陰りが見えている。

9,797トンの石油タンカー「韓国ケミ(Hankuk Chemi)」(写真参照)に乗り込んでいたビルマ、インドネシア、韓国、ベトナム国籍の乗組員20人は、現在、タンカーが拿捕されたホルムズ海峡近くの港湾都市バンダレ・アッバースに拘留されたままの状態である。乗組員のうち5人が韓国人であると伝えられている。

韓国外交部の崔鍾建(Choi Jong-kun)第一次官を含め、韓国外交官等が乗組員解放に向けて取り組んでいる。コリアタイムス紙の報道によると、1月10日にイランに到着した崔第一次官は、アッバース・アラーグチー(Abbas Araghchi)外務次官、モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ(Mohammad Javad Zarif)外相、イラン外交戦略会議のカマル・ハラジ(Kamal Kharrazi)議長などのイラン政府高官と会談している。

イラン学生通信(ISNA)が報じたところでは、ビルマ人乗組員11人についても、ビルマとイランの外交官がインドのデリーで会合してその釈放を交渉している。

米国もタンカーの即時解放を要求した。

米国国務省の報道官は、「ペルシャ湾において[イラン]政権は継続的に船舶の航行する権利と自由を脅かしている。同政権が制裁緩和を目的として国際社会に圧力をかけようとしていることは明白である」と述べている。

イラン政府報道官の主張によると、拿捕は「環境汚染」に基づくイラン裁判所の命令に準じたものである。

同タンカーの船社である釜山のタイクン・シッピング(Taikun Shipping Co.)社は、イラン当局がタンカー拿捕の事前に環境法違反の可能性を調査していたという兆候はなかったと述べている。

韓国外交部の崔瑩三(Choi Young-sam)報道官が発表したところでは、韓国はイランに対してタンカーによる海洋汚染の証拠を提示するよう要請した。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えたところでは、タンカーによる環境違反の証拠は見つからなかったが、2019年に中華人民共和国(中国)の港湾で実施された直近の検査において軽微な安全上の問題がいくつか指摘されたと当局は発表している。 

サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)紙によると、韓国は「事態を政治問題化して無益な宣伝を行うのを停止し、当国が法的手続を進められるように協力すべきである」と、アラーグチー外務次官は話している。

AP通信の報道では、イラン政府当局は韓国政府による原油代金の支払不履行と今回の拿捕との関係を繰り返し否定している。イラン革命防衛隊が石油タンカーを拿捕した翌日に「イランは人質を取るような国ではない」と述べたイラン政府のアリ・ラビェー(Ali Rabiee)報道官は、「『人質』と言うのであれば、『無駄な口実』を設けてイラン資産を凍結している韓国政府こそが人質犯である」と語っている。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、拿捕事件が発生する前に両国はイランが約5,000万円(約50万米ドル)の資金を使用して2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)ワクチンと関連医療機器を購入できる機構の確立に向けて取り組んできており、これについては米国財務省からの特別承認もすでに下りている状態であった。 

 

画像提供:ロイター

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