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一帯一路事業と結び付く中国の国際犯罪組織

FORUMスタッフ

2020年12月9日の国際腐敗防止デーに合わせた腐敗対策の一環として、米国財務省は制裁対象にアフリカとインド太平洋地域の一部諸国における複数の個人とそのネットワークを指定した。その中でもインド太平洋地域の観測筋の注目を集めているのが、崩牙駒(「歯抜けの駒」を意味する)と呼ばれる尹國駒(Wan Kuok Koi)である。

悪名高い犯罪組織「14K(14K Triad)」を率いるマカオ出身の尹には、殺人未遂、武器密売、マネーロンダリングなどの罪で14年間刑務所に収監された過去がある。1990年代後半、尹の指揮の下、14Kと対抗組織との縄張り争いが発生したことで、多くの死者が出た。

2012年12月に刑務所を出所した後、カジノ投資家に転向した尹(写真参照)は、ビルマ、カンボジア、マレーシア、パラオ、パプアニューギニア、フィリピン、タイに数多くのベンチャーを立ち上げている。2018年、公衆から仮想通貨の調達を行うICO(イニシャル・コイン・オファリング)に参加した尹は5分で数億米ドルを調達したと報じられている。

尹は自身の印象を良くすることを目的として、「世界洪門歴史文化協会(「天地会」とも呼ばれる)」を設立した。1600年代半ばに端を発する同協会は、秘密結社や犯罪地下組織と深く結び付いた自称「友愛組織」である。近年新たにカンボジアに本拠を設立した同協会は、愛国心の強い中国の美徳を称賛すると同時に、中華人民共和国(中国)の一帯一路(OBOR)政策による事業が展開される諸国の安保を確立し、中国人事業者の利益を保護することで、同政策を支援する組織と自称している。

しかし、米国財務省によると、尹の活動は中国の多国籍組織の正当性を強引に主張する試みに他ならない。一般的に、一帯一路事業を後押しする尹の組織や他の中国企業は犯罪ネットワークや違法行為に関与する個人と結び付いている。しかも、カジノや仮想通貨業界に従事する組織と関係があるだけでなく、自体が中国政府主要機関との繋がりを誇示し、中国国民の支援を謳う複数の協会とも提携関係を結んでいる。

東南アジアや太平洋諸島に移住する中国人事業家の間では、その地域の法律を顧みず、カジノやオンラインギャンブルのハブとして機能する経済特別区(SEZ)の構築に取り組む複雑なネットワークが存在しており、尹もこれに関わっている。米国財務省が以前に制裁を課した中国国営の天津連合開発集団(UDG/Tianjin Union Development Group)やカンボジア王国軍の元上級大将の事例と同様に、こうした事業家等は地元の武装集団や腐敗した軍関係者等と手を組んで、賄賂や利益分配を提供しながら地域の土地を搾取している。この類の経済特別区が存在することで、統治の質や経済的安定性が損なわれるだけでなく、数十年にわたる国際支援により推進された民主的な改革による恩恵が無駄になる恐れがある、と報じる調査報道は増加の一途を辿っている。

中国が一帯一路事業と組織犯罪の繋がりの隠蔽を図っていることで、中国共産党(CCP)の動機にも疑問が呈される。中国共産党は日頃から反中報道、特に2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)流行対策の初動の遅れに対する批判を非常に警戒しているにも関わらず、その犯罪組織との不良な繋がりについては無関心を決め込んでいるように見える。強い愛国心を持ち、中国共産党に忠実である限り、中国の犯罪組織はインド太平洋一帯における中国の影響力強化工作に有用な要素と党は見なしているのかもしれない。

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