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習近平主席の取り締まりにも関わらず、腐敗が続く中国

FORUMスタッフ

2012年に他の役職を兼任して中国共産党中央委員会総書記に就任した習近平主席は、厳格な腐敗防止政策により「虎と蝿」(党幹部と末端構成員)の両方の腐敗官僚を排除すると公言した。

それから8年経った現在も、強制労働からマネーロンダリングに至るまで、インド太平洋全域や他地域ではびこる汚職に中国共産党員、国営企業、中国最裕福層の市民が関与する事例が後を絶たない。

習主席が同政策を開始してからも、これが公的腐敗対策に功を奏している様子は見られない。トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が毎年公開する腐敗認識指数で、中国は2019年も2012年同様、198ヵ国中第80位に順位付けされている。最も腐敗が少ないとされる最上位の国はデンマークで、最も腐敗の多い国として最下位の198位に付いているのがソマリアである。

同指数は、世界各地の専門家や経営幹部を対象としたアンケート調査に基づき、その国の公共部門がどの程度汚職していると認識されているかを評価して、国別にランク付けしたものである。国連が定めた国際腐敗防止デーの12月9日が間近に迫る2020年の現時点で、年間に発生する贈賄額は100兆円相当(1兆米ドル)、汚職により発生する年間損失額は推定260兆円相当(2兆6,000億米ドル)と報告されている。

過去1年間だけを見ても、中国人賭博師、中国国営企業や公務員が汚職に手を染めている。2020年7月、米国財務省は新疆ウイグル自治区における人権侵害を理由として、中国政府機関と現職幹部と元幹部2人の個人に制裁を課した。新疆ウイグル自治区におけるウイグル人イスラム教徒を含む少数民族の大量拘禁と身体的虐待を理由に制裁の対象となったのは、中国共産党の準軍事的政府組織である新疆生産建設兵団(XPCC/通称:兵団)、兵団の元政治将校の孫金竜(Sun Jinlong)、副書記と兵団の幹部を務める彭家瑞(Peng Jiarui)である。

スティーブン・ムニューシン(Steven Mnuchin)米財務長官はニュースリリースで、「米国は自国の財政力を最大限活用し、新疆ウイグル自治区だけでなく、世界各地の人権侵害者の責任を追及することに取り組んでいる」と述べている。

米国が制裁措置を発表する前の2020年4月には、中国で中華人民共和国公安部の孫力軍(Sun Lijun)副部長が逮捕されている。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じたところでは、中国共産党は孫副部長を「重大な規律違反と違法行為」の疑いで逮捕したと発表した。観測筋によると、汚職容疑である。

孫副部長が逮捕される前の2020年1月には、国際刑事警察機構(ICPO/インターポール)総裁を務めた経歴を持つ孟宏偉(Meng Hongwei)が13年超の懲役刑を受けている。2019年の公判で、中華人民共和国公安部副部長という立場を利用して2005年から2017年の間に2億円(200万米ドル)を超える賄賂を受け取ったと指摘された孟元総裁はこれを事実として認めている。

汚職容疑の事例は民間部門にも及んでいる。カナダのグローバルテレビジョンネットワークが伝えたところでは、2010年、カジノを通じて麻薬密売人が20ドル紙幣で「巨額」をマネーロンダリングしていると、ブリティッシュコロンビア州当局が警告を発した。

同州のゲーム政策執行部門のラリー・ヴァンダー・グラーフ(Larry Vander Graaf)元局長の説明によると、現金は100万円相当(1万米ドル)分で、紙幣の束がゴムバンドで結ばれていた。通常、麻薬売人は売上金の紙幣をゴムバンドで束ねて保管する。主に中国からカジノを訪れる要人客等が、組織犯罪と繋がりのあるヤミ金融から現金を受け取っていたことが、調査により判明している。

カンボジアのカジノも脆弱である。カンボジアの沿岸都市シアヌークビルではメタンフェタミンの密売事件が急増しているが、2019年7月、日経アジアレビューの取材に応じた麻薬捜査官等は、中国人賭博師の間で人気の高い同地域のカジノでマネーロンダリングの調査が実施されていると明かした。

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