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経済計画と国防法改正に関する五中全会の全貌を明らかにしない中国共産党

FORUM スタッフ

複数の報道によると、2020年10月下旬、中国共産党の最高指導機関である中央委員会は4日間にわたり第19期中央委員会第5回全体会議(五中全会)を開催し、来年から始める5ヵ年計画(国民経済および社会発展第14次5ヵ年計画)の提案を可決したが、全貌は明らかになっていない。

1年に1度開催される五中全会の後に発表された公式声明には詳細がほとんど含まれておらず、国営報道機関が発表した公式声明は漠然としたもので、アナリスト等は以前に開示されている情報を踏まえて憶測する以外に手がない。AP通信が報じたところでは、最終的な5ヵ年計画は全国人民代表大会(全人代)の開催が予定されている2021年3月に発表される予定である。

アナリスト等によると、中国共産党中央委員会総書記などを兼務する習近平(Xi Jinping)中国主席(写真参照)は、任期を限らず党主席として権力を掌握し、今後も中国人民解放軍(PLA)を統率する意図を明らかにしている。中国メディアプロジェクト(China Media Project)のデビッド・バンダースキー(David Bandurski)共同ディレクターが同プロジェクトのウェブサイトで説明したところでは、中国共産党は公式声明の中で「軍事力強化に関する習主席の考えを具現化する」必要性を強調し、「中国人民解放軍における核心的地位を擁護する」必要性に言及している。

中国共産党は2020年までに国内総生産(GDP)を2倍にするという目標を達成できなかったことは正直に認めており、同国政府は今後5年間は品質に焦点を当てる計画であると表明している。アナリスト等の説明によると、以前の経済・技術目標の達成期限を10年延長して2035年としている。ロイター通信は、「来年の計画発表時に向う5年間の成長の数値目標が示されるかどうかは未だ不明である。中国共産党はまた、2035年までに1人当たりのGDPを中堅先進国並みにすることを目指すと付け加えたものの、今後10年間におけるGDP倍増目標については言及していない」と報じている。

2020年5月の中国共産党政治局常務委員会の会議で最初に提唱された「双循環戦略」を通じて、中国共産党は自立した成長を促進する構えである。AP通信が伝えたところでは、同アプローチは第一段階では国内の供給業者と消費者に依存し、後に対外貿易と投資で補完する新発展モデルを構築するものである。

ブルームバーグ・アジア経済部門の舒暢(Chang Shu)主任経済学者は、「米中貿易戦争と新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で、中国の成長は改革開放以降最も鈍化している」とし、「技術面や人口統計学的な問題、そして気候関連の課題に対処するためには、経済の多くの側面に影響を与える戦略的な政策の再調整が必要となる」と述べている。

フォーリン・ポリシーForeign Policy誌のジェームズ・パーマー(James Palmer)副編集長が週刊「チャイナ・ブリーフ(China Brief)」に著述した記事には、五中全会で議論されたと報じられている中国共産党の「2035年までの長期目標」では、民間経済における同党の役割強化が指摘されている。

ロイター通信によると、公式声明には経済に合わせて防衛費を増加する内容が含まれている。

中国共産党機関紙である人民日報傘下の「環球時報」の英語版「グローバル・タイムズ」が五中全会開催前に報じたところでは、中国は自国の「開発利益が脅威に曝された」場合に「全国または地方の防衛動員を実施できる」ように規定範囲を拡大して国防法を改正する可能性がある。現行の法律では、中国の「主権、統一、領土保全、安保」が脅かされた場合に軍事動員が可能になるとされている。

公式声明では、農村部と都市部の住民の間で不平等が拡大している現状を認識し、財産権の「大規模な進歩」が約束されている。オンライン雑誌のザ・ディプロマット誌のシャノン・ティエジ(Shannon Tiezzi)編集長が執筆した記事には、「中国の共産主義体制下では、すべての土地は原則的に政府の所有物となる。地方自治体の気まぐれで、ほとんど補償なく財産をもぎ取られる地方の土地所有者には特に不利益に働く」と記されており、「今回の公式声明で中国共産党が僅かばかりにでも財産権に言及したことで、中国の土地の権利に関して真の変化がもたらされるのか、それとも夢が打ち砕かれるような事態がもっと発生するのか」と疑問が投げかけられている。

戦略国際問題研究所(CSIS)で中国研究を担当するジュード・ブランシェット(Jude Blanchette)アナリストとスコット・ケネディ(Scott Kennedy)上級顧問が執筆した論文によると、公式声明には「香港とマカオの長期的な繁栄と安定を維持し、台湾海峡両岸関係(両岸関係)の平和的解決により(台湾の)本土への統一を促進する」という目標も含まれている。

対照的に、2015年の五中全会の公式声明では、本土との経済関係を強化することで、台湾に関しては「双方にメリットのある」アプローチに移行することが強調されていた。ブランシェットアナリストとケネディ上級顧問の論文には、「『安定』と『統一』というずけずけした表現は、中国政府による香港統治の状況と中台関係の悪化を物語るものである」と記されている。

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