自立 向けた支援

自立 向けた支援

インド太平洋諸国の 努力を開発支援が援助。

ブルース・マクファーランド/米国国際開発庁

衛専門家の多くにとって、開発支援と安全保障のツールとは直ちに結び付きにくいであろう。しかし、インド太平洋地域の国家の安全保障 に関する戦略的な対話はいずれも、最終的に従来の 防衛活動分野以外の統治、教育、医療、経済などの 分野に関わってくる。国家安全保障とは実に多くの 局面に依存している。

米国は、志を同じくする多くの国と共通のビジョン を持っている。つまり自由で開かれたインド太平洋 における、全ての国家が主権独立国家として共存共栄するということである。しかし、全ての国家が国内外の脅威と対峙している。世界を暗躍する犯罪者やテロリストから抑圧的な独裁主義者まで、悪意ある者は勢力を拡大すべく脆弱な国家を不安定化させ、繁栄や主権を奪い去ろうとする。これによりインド太平洋地域の人々の安全保障、繁栄、機会が脅かされる。地域内の全ての国家が、このような悪人による被害を受けている。既に存在する安全保障の問題に加えて、各国はこのような問題についても一括して対応しなければならない。開発援助はうまく利用すれば、人々の苦しみを和らげる以上の効果が得られる。また、悪意のある影響に対してコミュニティを強化することもできる。   

自立に向けた支援とは、相手国とどのように連携してその国自身の発展を支援するかを表す際に、米国国際開発庁(USAID)が用いる表現である。この取り組みは、米国国際開発庁が過去 50 年間、米国の海外援助を通じて世界発展の推進力を担ってきた中で培った豊富な経験に基づいている。このような援助は支援先の国民、コミュニティ、民間部門政府のコミットメントと能力が揃えば最大限の効果を発揮する。USAID による支援は主に相手国の決意と能力の養成を促して相手国が自らの目的と道筋を明確にし、自立と回復力を構築できるよう支援することである。 

USAID の定義によれば「自立」とは、地域の開発課題に対する解決策を計画し、資金調達し、実施する能力および効果的にかつ包括的に、そして説明責任をもってこれらの課題解決に取り組むことであるとである。この定義が、政府機関によって集められた証拠と USAIDの活動を支える価値観とに基づく海外援助の取り組みの基礎となっている。国がより自立した国家となることで自国の発展への道を自ら計画し、直面する課題を乗り越えていくことができるようになる。自立していくには回復力が必要となるが、USAID の定義によれば回復力とは、ショックやストレスを緩和し、これに適応し、慢性的な弱体化を防ぎつつ、包括的に成長を促し乗り越えていくための国民、世帯、コミュニティ、国家、システムの能力 のことである。 

自立と回復力は USAID モデルの重要 な柱であり、もっともな話である。世界で最 も安定して成功している国をみればわかる。これらの国々では教育水準が高く、健康で豊かな国民が、国民の声に応えられる能力と対応力を備えた政府とともに力強くて開放的な経済に関わっている。一方、国民が苦しみ、景気が低迷する国や地域は不安定であり悲惨である。政府が国民をないがしろにする国は不安定となり、改善がされなければ安全が脅かされ混迷を極めることになる。 

長い目で見れば地域内の国々が法治に関して共通の認識を持ち平等に共存し、完全な主権をもって自らの意思で可能性を追求することが地域の持続可能
な安全保障につながる。健全な競争と自由・公正・開かれた市場は、商業的にも思想的にも地域社会における国家間の均衡を維持し、安定と繁栄を確保する。国家および国際的な安全保障には、各国がその脆弱性を克服し強靱で自立した主権独立国家となり、国際社会に完全に受け入れられなければならない。

USAID はこのアプローチを国別ロードマップを通じて実現している。このマップは  USAID の主要な可視化ツールとして機能しており、対象国の自立度
を評価する。評価にあたっては、17 の第三者機関によって公開される、努力と能力を多角的に捉える測定基準が使用されている。USAID は世界銀行が
分類した 137 の低・中所得国すべてを対象に毎年国別ロードマップを作成し公開している。国別ロードマップは、https://selfreliance.usaid.gov/で閲覧できる。 

これらのロードマップは各国の発展状況の把握に利用される。対象国の政府、民間部門、市民社会、その他の利害関係者との対話を通じてその国の軌跡に
対する理解を深めることができる。こうすることによって、USAID は発展を加速しうるあらゆる対策を講じる。ここで2つのアプローチが特に重要となる。自立に向けた資金調達と民間部門の関与である。自立に関する資金調達は、自国の資源を適切に整理して管理する能力を強化するためのアプローチである。一方、民間部門の関与は、堅牢な市場環境と発展の課題に対する市場主導型の解決策を促進する。これらの目的を達成するための具体的なプログラムや活動が実施され対象国の自立が進むにつれて、USAID は対象国政府と協力してコミットメントと能力を向上し、協力関係の強化を図っている。

国や社会が自立へむけた自分たちの道筋を決定するのは欠かせないことである一方、USAID のこれまでの経験からより効果的な方法があることもある。民間部門を巻き込んだ市場ベースのソリューションは、当面のニーズを満たすだけの一度限りの投資よりも持続する傾向にある。初期段階から包括的な開発手法を実践することによって、プラスの結果をより迅速に得ることができ、社会全体のコミットメントを向上させる。透明性があり責任ある取り組みから始めて、これらの方針を政府・社会の全ての階層において維持することによって発展が加速する。経済、市民社会、政府、そして国民全体にわたる人的・体制的能力を構築することは、バランスのとれた解決策を維持していくために不可欠である。   

インド太平洋における安全保障を守るため、開発支援は防衛と外交を補完する。米国や同盟国など 志を同じくする相手国が連携する中で、USAID の自立へ向けた支援の取り組みは脅威を根本から抑制し、経済的機会と商業的関係を強化し、自由と民主主義を促進して災害時に同盟国が必要とする人達に確実に寄り添える信頼関係を構築する。USAID の海外援助の最終的な目標は、この支援が必要でなくなることである。各国、地域の発展が、地域全体の発展につながる。

ブルース・マクファーランド(Bruce McFarland)は、アメリカインド太平洋軍の USAID上級開発アドバイザーである。ここで紹介された意見は著者自身のものであるが、本記事は USAID 政策の枠組みに合わせて編集されている。


米国、太平洋島嶼国への援助を拡大

FORUM スタッフ

国は、平和で自由で開かれたインド太平洋地域を促進するために、インド太平洋地域の近隣諸国や友好国に対して長年にわたり関わってきた。中でも
メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアとの関係は米国にとってより重要となってきている。

2019 年 9 月、国連総会で太平洋島嶼国首脳と会談したマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国国務長官は、新たに約 70 億円(6,500 万米ドル)の新規援助を発表した。この 1 ヵ月前の第 50 回太平洋諸島フォーラムで発表した約 40 億円(3,650 万米ドル)に対する追加の援助となる。米国国務省によると、米国はこれらの取り組みに加え、この地域のより豊かな未来を築くためのプロジェクト、支援、軍事行動に年間で約 380 億円(3 億 5000 万米ドル)を投資している。

国務省は、「米国は、太平洋嶼国と連携して、地域の安全保障と安定性を促進し、持続可能な成長を推進して環境問題に対処し、自然災害に対応しながら人同士の繋がりを強化するなど地球規模及び地域規模の課題に取り組んできた。またこれからも協力していくつもりである。」と述べた。

米国国務省によると、インド太平洋戦略の一環としての太平洋協力約束(Pacific Pledge)のもとで、米国は同地域に対し約 110 億円(1 億米ドル)を新たな援助として投じてきた。この中には米国国際開発庁(USAID)による新プロジェクトに投じられる約 66 億円(6,300 万米ドル)が含まれており、前年から倍増している。

国務省によると、太平洋地域への支援に投じられる資金の使途は以下の通りである。

  • 環境問題に対する回復力の向上:米国は災害回復力、気象予報の援助および太平洋地域の環境問題への対応に約 11 億円(1000 万米ドル)を提供する計画
    している。米国国務省は、「海面上昇による脅威と地域の自然災害に対する脆弱性により、環境劣化や気候変動への対応が太平洋の優先事項であると認識している」と述べた。
  • レジリエント(回復性のある)なインフラ整備と接続性の拡大:米国は、パプアニューギニアへの電力供給に、2019 年末に約 24 億円(2300 万米ドル)の緊急融資を行うことを約束し、2030 年までに大太平洋地域の少なくとも 70% に電力を供給するためオーストラリア、日本、ニュージーランドと協力
    している。また、USAID は太平洋島嶼国全体にブロードバンドを拡大するために約 8 億円(750 万米ドル)の支援を行う。
  • 適正な統治の強化:インド太平洋透明性イニシアティブ(Indo-Pacific Transparency Initiative)の一環として、米国は「地域内の健全で、公正かつ対応力のある統治を促進し、国民が腐敗と闘い国家の自律を強化できるように」約 16 億円(1,500 万米ドル)を拠出する。国務省のグローバル・エンゲージメント・センターは、地域の報道能力の強化にも取り組んでいる。
  • 海上保安の強化:USAID は太平洋地域各国の排他的経済水域における、許可なく規制をくぐり抜けた違法な漁業活動を取り締まるために約 8 億円(750 万米ドル)の支援を行う予定である。
  • 安全保障協力の強化:国務省は治安強化のためフィジー、パラオ、ソロモン諸島にアドバイザーを置く予定である。フィジーではフィジー国防省に防衛戦略政策・計画改革アドバイザーが組み込まれる。パラオでは法務省の海洋法執行部に組み込まれたアドバイザーが新たな海洋法センターの運営を支援する。ソロモン諸島では、警察・国家安全保障省のソロモン諸島警察部隊に組み込まれたアドバイザーが海洋の統治と安全保障を強化する。
  • サイバー能力の構築:米国は 2019 年 8 月、太平洋島嶼国を対象に国家サイバー戦略の策定、リスク管理と事件対応、広帯域スペクトルとデジタル接続の管理に関する能力構築ワークショップを開催した。

バングラデシュにおけるUSAIDの活動が、特に不利な立場に置かれた
家庭の学童の可能性を育んでいる。USAID

2019 年 11 月の「自由で開かれたインド太平洋地域:共有ビジョンの発展(A Free and Open Indo-Pacific:Advancing Shared Vision)」というタイトルの国務省報告書において以下のように述べられている。「米国はインド太平洋国家であり、常にインド太平洋国家であり続けるであろう。私たちは、大小さまざまな国々の主権が守られ、国際法と公正な競争の原則に則った経済成長を追求できる、自由で開かれたインド太平洋を維持することに尽力する。インド太平洋諸国の自治、選択の自由を脅かす試みには徹底的に対抗するつもりである。」

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