漁業管理失敗を象徴する北朝鮮籍「幽霊船」の裏にある中国の行為

漁業管理失敗を象徴する北朝鮮籍「幽霊船」の裏にある中国の行為

FORUMスタッフ

数々の報道によると、近年、日本海沿岸に漂着した北朝鮮籍船の数は数百隻に上っている。船内で遺体が見つかる場合もあれば、無人の難破船の場合もある。ロシア語のオンライン新聞「Lenta.ru」が2020年9月中旬に報じたところでは、多数のいわゆる 「幽霊船」が日本の海岸に漂着しており、ロシア沿岸に打ち上げられる難破船の数も増加している。

Lenta.ruの報道によると、日本当局の発表では、2019年には幽霊船158隻が日本沿岸に漂着しており、過去5年間の合計ではその数が500隻以上に及ぶ。船内で発見された身元不明の遺体は、日本とロシアの沿岸町の無縁墓地に埋葬される。

Lenta.ruが伝えたところでは、2020年の調査によると、こうした事態には「これまで途方もない海洋生物資源を要求してきた歴史で悪名高い」中華人民共和国(中国)が絡んでいる。非営利団体「グローバル・フィッシング・ウォッチ(GWF/Global Fishing Watch)」が7月に発表した報告書によると、北朝鮮近海では中国漁船が漁業を操業しているため、北朝鮮漁船が漁場から締め出されている。

日本海は日本列島、韓国と北朝鮮の朝鮮半島、そしてロシアに囲まれている。専門家によると、北朝鮮にとって国民のタンパク源となるイカ漁は特に重要である。

しかし、核兵器と弾道兵器の開発を継続した報いとしてより厳格な制裁が課されたことも相まって資金不足が拡大した北朝鮮は近海の漁業権を中国に売却し、年間で推定5億円(5,000万米ドル)から7億円(7,500万米ドル)の漁業免許料を稼いでいると、数ある報道機関が報じている。

衛星技術を使用して北東アジアの海上交通を分析したグローバル・フィッシング・ウォッチが発表したところでは、設備の良好な中国漁船は2017年から2019年の間に約440億円(4億4,000万米ドル)に相当する16万トン超のイカを漁獲している。これは同期間中の日韓のイカの合計水揚量を超える量である。CNNニュースが報じたところでは、同非営利団体は北朝鮮近海で操業する中国漁船の数を記録しているが、その数は2017年に900隻、2018年には700隻に上っている。

こうした状況の中、自国政府から高い漁獲ノルマが課されている北朝鮮漁船は、漁場を求めて沖合に出ざるを得ない。多くの北朝鮮漁船は木造で、外洋に耐える設計にはなっていない。

グローバル・フィッシング・ウォッチの報告書を共同執筆した李正三(Jungsam Lee)上級データサイエンティストはCNNニュースに対して、「北朝鮮漁船が中国籍トロール船と同じ海域で操業するのは危険が高すぎる」とし、「そのため北朝鮮漁船はロシアや日本海域で操業する。北朝鮮籍の難破船が日本沿岸に漂着する理由もこれで説明が付く」と述べている。

2020年9月下旬、某脱北者はハカイ誌(Hakai Magazineに対して、中には飢えるよりも海への投身自殺を選ぶ北朝鮮人漁師も存在すると話している。同誌はカナダを拠点とする非営利団体「トゥーラ財団(Tula Foundation)」発行の沿岸科学専門誌である。

英国のリーズ大学で北朝鮮漁業を専門に研究するロバート・ウィンスタンリー=チェスターズ(Robert Winstanley-Chesters)博士は同誌に対して、漂着する幽霊船は北朝鮮における漁業管理失敗の象徴である。次々に幽霊船が漂着していることから、北朝鮮が「深刻な食糧不足に陥っていること、そして沿岸地域社会を大きな危険に曝し、あらゆる規則を破ってでも魚介類を密猟しなければならないほど絶望的な状態にあること」が伺える。

元日本水産庁職員の小松正之博士がハカイ誌に説明したところでは、近年では多数の北朝鮮人密猟者が日本近海に押し寄せていることで、日本人漁業者側が「不必要な衝突や競合を避けるために」同海域から避難せざるを得ないという状況も発生している。(写真:2019年10月、能登半島沖で日本水産庁の漁業取締船と衝突して沈没した北朝鮮漁船。漁船乗組員の漁業者60人は全員救助された)

Lentu.ruの報道によると、北朝鮮はまた、日本とロシアの海域で漁業を操業する中国籍船に北朝鮮の旗を掲げることを許可しているため、密猟者の中で中国人漁業者が占める割合は正確には分からない。

北朝鮮漁船は今も危険に曝されている。テンプル大学ジャパンキャンパスの政治学者、ジェームス・ブラウン(James Brown)博士はハカイ誌に対して、「中国漁船が北朝鮮沿岸海域で操業すれば、北朝鮮漁船はますます沖合に出ることになる」と語っている。

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