クラ地峡には運河でなく鉄道・道路の陸路を優先するタイ

クラ地峡には運河でなく鉄道・道路の陸路を優先するタイ

トム・アブケ(Tom Abke)

タイは道路と鉄道のプロジェクトを組み合わせて、同国南部のクラ地峡を横断する陸路の建設を検討している。クラ地峡を横断する手段があれば、貨物輸送の移動距離がマラッカ海峡経由よりもかなり短くなる。中国がこれまで推進してきた運河建設の選択肢は、費用や環境への影響、また中国の一帯一路(OBOR)政策との絡み合いにより実現可能性は低そうである。

2020年9月11日にバンコク・ポスト紙が報じたところでは、両方の選択肢の実現可能性を調査するために、タイ政府は約3,205万円(約32万500米ドル)の予算を計上している。ブルームバーグニュースが伝えたところでは、2020年8月、同地峡(写真参照、水域の向こう側)への運河建設には許容できないほどの環境被害が伴うとして、タイのサックサイアム・チットチョープ(Saksiam Chidchob)運輸相は道路・鉄道建設案を支持すると表明した。

チットチョープ運輸相の説明よると、クラ地峡を横断する陸路を建設することで、アンダマン海からタイランド湾への貨物輸送距離を1,200キロ短縮できる。提案されている案では地峡の両側に1つずつ港湾を建設し、その間を100キロの迂回路で接続すると、同運輸相は付け加えている。

シンガポールに所在する東南アジア研究所(ISEAS Yusof Ishak Institute)上級研究員のイアン・ストーレイ(Ian Storey)博士はFORUMに対して、「昔からさまざまな国から頻繁にクラ地峡への運河建設構想が持ち上がっていたが、最終的には経済的に割りに合わないという理由で建設への投資を真剣に検討する国は現れなかった」とし、「世界的に景気が後退している時代ではなおさらである」と述べている。

ストーレイ博士が2019年9月に発表した論文には、2000年代初頭、中国政府の戦略家がクラ地峡への運河建設に目を付けたと記されている。これは、運河が開通すれば、中国の石油タンカーがマラッカ海峡を通過せずに済むためであるまた、運河があれば、中国が南シナ海に新たに建設した基地とインド洋の間を中国人民解放軍海軍の艦船がより高速に行き来できるようになる。

ストーレイ博士は同論文の中で、クラ地峡への運河建設は中国政府が推進する一帯一路プロジェクトの一環ではないが、中国はタイを「100兆円(1兆米ドル)規模のグローバルインフラプロジェクトにおける重要な中心点」と捉えており、「中国がタイ南部を通る人工水路建設への投資に関心を持っているという噂が絶え間なく流れている。ただし、この噂には根拠はない」と説明している。

タイにおける一帯一路プロジェクトの中で最も注目される計画として高速鉄道(HSR)建設が挙げられるが、これが遅延と予算や運営上の問題により行き詰まったことから、タイ国民の間では一帯一路への信望は地に落ちた感がある。

同博士は、「タイの高速鉄道建設事業は過剰なコストや透明性の欠如、そしてタイが中国に過度に依存する可能性などを理由として、国内では強い批判が発生していた」と記している。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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