主要なリーダーの プロフィール連載記事

インド太平洋 の行方 ニュージーランドからの視点

FORUM スタッフ

ニュージーランド陸軍令状将校クライブ・ダグラス(Clive Douglas)氏が、2019  5 月に開催された太平洋陸軍力LANPAC)シンポジウムおよびエキスポの際に、フォーラム誌と席を共にし、ニュージーランドからの視点について共有してもらった。同氏は、2025 年以降のニュージーランド 軍最高司令官のビジョン、PacificPathways への貢献、そしてニュージーランド軍の勇気、献身、同志としての一体感、そして尊厳といった価値観がどのようにして太平洋やその他の地域における兵士の訓練プログラムや協力関係を形成 しているのかについて話してくれた。  

フォーラム:准尉として、また上級曹長を務 めた経験からニュージーランド陸軍での 任務についてお聞かせください。

ダグラス氏:私は上級兵士として陸軍幹部チーム の取締役の一員であり、上級下士官に助言をする役目ですが、兵士とその家族の意見を代表することも重要な役割の 1 つです。このグループだけに限りません。役員や民間業者もです。私は軍指導部の一員であり、将来に向けて軍指導部が行う戦略的決定について兵士たちの視点を提供しています。この仕事に就いてちょうど 2年になります。あと1年ほどこの仕事に就いています。SMA [陸軍最先任上級曹長]になった時には、常にプランを持っていましたし、それが選ばれた理由の 1 つでした。プランの一部は兵士を教育、そして将来の SMA を成長させる非伝統的なキャリアと学習の道筋の強化に焦点を当てるというものでした。そして私は兵士と士官のための教育政策の承認を得ることに成功し、また、私たちのキャリアと学習の道筋に関する政策を立案することにも成功しました。 

フォーラム:入隊されたのは、1985年ですね。過去30年以上にわたり、ニュージーランド軍がどのように進化してきたかについてお聞かせください。

ダグラス氏:私が入隊した当時、私たちは 2つの大隊からなる軍隊でした。現在もそうですが、一隊はシンガポールに駐屯しており 1957 年のマレーシア非常事態(Malaysian emergency)以来、駐屯しています。私が見てきたもので装備を挙げるとすれば、当初歩兵隊が携行するものはコンパスやライフルでしたが、それが統合通信システムへと変化しました。以前はアナログでしたが、現在、重要な変革プログラムの1つとして陸軍とC 2システム (ミッション指揮統制システム)のデジタル化があります。かつてどのように通信していたか考えてみてください。今では最下位の階層の兵士も画面の操作を行っています。技術面の変革は非常に大きいです。 

フォーラム:これまで見てきた中でニュージーランドの兵士の訓練方法には他国の陸軍部隊と比べてどのような特徴がありますか?

ダグラス氏:似たような訓練だと思いますが、個人のスキルセットにより集中しています。米国同様、移動、射撃、通信、リスク軽減、兵士がまず習得するスキルの訓練を行いますが、すべての MOS [軍の職能]について共通のコースを受講します。我々が小隊だからできることです。全員がすべての武器のコースを受講します。誰もが同じカリキュラムで教育されるので、そこで兵士としての最初のスキルを習得します。MOS では、トレードのためだけにトレード・コースを行います。さらにパートナー国と海外で演習を行い、部隊の展開を組み合わせて一連の流れを体系的に学習すると、バランスの取れた兵士になることができます。 

2019 年 7 月、イラクのタージ軍営(Camp Taji)で行われた 射撃訓練に参加するニュージーランド陸軍のマシュー・ウォール (Matthew Wall)中尉 伍長タマラ・カミングズ伍長/米国陸軍予備隊

フォーラム:Pacific Pathwaysとニュージーランド軍が過去に果たしてきた役割、Pacific Pathways2.0での予想される役割についてお聞かせください。

ダグラス氏:オーストラリアとニュージーランドは太平洋を熟知しています。この地域で活動したい他のパートナー国は、私達を活用することができます。そして、これこそが米国の望むことだと思います。オーストラリア人とニュージーランド人、そして米国人 (兵士)を数名ずつ派遣して、我々の重要なパートナーを太平洋に招き統合して機動力訓練チームを作る機会を模索しています。もう 1 つは我々にはフィジー、トンガ、バヌアツについての情報を持つ技術系准士官、上級曹長がいます。オーストラリアにもいます。したがってこれらの国々に関する知識と密接な関係が得られます。もし、米国が強い関係を持つどこか他の国で私たちが活動するのであれば、米国と同様に行動し米国の協力を活用させてもらうでしょう。Pacific Pathway 2.0 は、これまで築いてきたものを強化しさらに機会を模索するものだと考えています。全ての国において重要なのは、どのような支援を必要としているのかを尋ねることでしょう。私たちが良かれと思うことを強要しないことが大切です。

フォーラム:ニュージーランド人はミクロネシアとポリネシアを彼らの裏庭と呼んでいます。ニュージーランド陸軍は、太平洋の島国である近隣諸国と他にどのようなパートナーシップや訓練を結んでいますか?

ダグラス氏:NCO [下士官]の観点から見ると、士官と NCO が私たちのコースに来るので経験を共有することができます。機動力訓練チームを訓練したい国々に送り込んでいます。つまり人的な協力です。戦略レベルでは、私のレベルにおいては地域内で密接な関係を築いています。互いの国で対話したり、訪問したりします。将来を見据えて、LANPAC(太平洋地上軍シンポジウム)で行うことと PACC/PAMS (太平洋方面軍司令官会議・太平洋方面軍管理
セミナー)でやっていることを活用しようとしています。まず対話です。しかしどうやって行動に移すかが鍵となってきます。 

フォーラム:地域の小規模な陸軍として、ニュージーランドはどのような方法でパートナーや同盟国を活用し、ニュージーランド軍の貢献を最大化していますか?

ダグラス氏:私たちの軍隊の強みの 1 つは、私たちの文化と私たちの先住民文化であるマオリ文化とを我が軍隊にいる他のすべての民族グループも合わせて統合していることです。私たちは、ポリネシア人とミクロネシア人について理解してます。私たちの文化とソフトパワーを活用してアクセスと影響力を獲得して彼らのニーズを理解することができます。その他の部分では、リーダーシップの枠組みがあります。パプアニューギニアは、我々の枠組みを取り入れそれを模範として独自のものへと変えていきました。彼らに私たちの枠組みを示し、彼らをニュージーランドに招いて訓練を行いました。その後、彼らは祖国へ戻り独自の枠組みへと変えていきました。フィジーやトンガもこの枠組に興味を示しています。我々には、オーストラリアほどの活動資金が有りませんが、人同士のつながりを活用して我が軍の強みにしています。

ワイウル軍営(Waiouru Military Camp)のリクルート正規部隊395 からの新兵を検査するニュージーランド軍司令官ジョン・ボズウェル(John Boswell )少将 ニュージーランド陸軍

フォーラム:20193月のクライストチャーチを含め、あらたに予想外の場所でテロ攻撃が起き続けています。この事件はニュージーランドにおけるテロ対策にどのように影響しましたか。また、陸軍のテロ対策にも影響しましたか。

ダグラス氏:警察主導の事件だったので私の専門分野ではありませんが、軍隊が民機関 (つまり警察)を支援しているということです。この事件で、ニュージーランドは変わったかという点について、ニュージーランドでこのようなことが起こるとは考えていませんでしたが、この事件をきっかけに国民の団結が強くなり特にムスリム社会の支援について強く団結するようになりました。ムスリム社会に対してニュージーランドは、大きく働きかけをしてきました。そして我が国の首相は、このような悲劇に対してどのように国民を導くのかを世界に対して示しました。安全保障や脅威について対応する能力という点で我々は常に準備ができています。

フォーラム:最後に LANPACでのパネルディスカッションにて、近代化と基礎を引き続き兵士の訓練の優先事項とする必要性について話し合あわれました。その点について少し、未来の陸軍についてのビジョンを共有していただけますか。

ダグラス氏:良い質問ですね。陸軍の長としての 在任期間におけるビジョンは、機敏で適応力が 高く、軽戦闘兵で現代的な軍隊であることです。陸軍にとって、2025 年以降はいわゆる「スマート・ソルジャー」の構築を目指しています。[ 陸軍のスマート・ソルジャーの取り組みには、兵士に専門的な軍事教育の提供、研究資金の 申請手続きの形式化、計算能力と識字率の 向上、兵士の才能の活用が含まれている。] デジタル化という観点では、2025 年までに 完全にネットワーク化されるでしょう。我々 の人的資源は成長してきており、主要な パートナーと相互運用できると考えています。そして、ニュージーランドが、政府の国家安全保障上の優先事項や国際ルールに基づく秩序を 強化するニッチな能力を提供できるようになると 考えています。

フォーラム:最後に、ニュージーランド軍が行っていることについて、パートナー諸国と共有したいことはありますか。

ダグラス氏:最後の質問と今回の質問 についてもう少しお話します。この複雑な 世界で我が国とパートナーが共に協力し合うには、強力な関係の構築が肝心です。 (LANPAC のような)これらの活動や演習を 通じて、配備されている期間であっても 関係の発展を助け、互いの能力を理解 することが我々を前進させるのです。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Back to top button