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南シナ海に対する中国の主張に焦点を当てるASEANと地域フォーラム加盟諸国

トム・アブケ(Tom Abke)

2020年9月の開催が検討されているASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10ヵ国の会議で、南シナ海の領海領有権に対する中国の違法な主張に焦点が当てられることになる。

このASEAN地域フォーラム(ARF)の閣僚会合にはオーストラリア、欧州連合、日本、中国、米国の他、インド太平洋地域に関心のある他12ヵ国・地域の外相が出席する予定である。

共同通信社が報じたところでは、議長国ベトナムの主催による同フォーラムの閣僚会合は2020年7月31日に仮想会議形式での開催が計画されていたが、南シナ海の資源に対する中国の違法な主張が高まっていることで、時期を延期して対面方式での開催が検討されていた。

2020年8月8日にオーストラリアの東アジア・フォーラム(East Asia Forum)に掲載されたベトナム国家大学ハノイ校・ベトナム政治経済研究所(VEPR)のグエン・ハック・ザン(Nguyen Khac Giang)上級研究員の記事には、2020年6月に中国海警局の船舶が「西沙諸島(パラセル諸島)で操業していたベトナム漁船に衝突し、漁獲物や機材などを略奪した」と記されている。

ザン上級研究員の記事によると、過去に自国の排他的経済水域(EEZ)でベトナムが実施していた石油・ガス掘削事業に対する中国政府の継続的な圧力工作により、ベトナム政府は同事業を断念せざるを得なくなった事件があったが、今回の漁船強奪事件は中国が一方的に実施した南シナ海漁業禁止措置で外国船を取り締まった初の事例となった。

2020年7月24日に東アジア・フォーラムに掲載されたリー・インフイ(Lee YingHui)アナリストの記事には、中国による排他的経済水域への侵入については、インドネシアとマレーシアが国連に正式に異議を申し立てたと記されている。

同アナリストは記事の中で、「法治に基づく海上秩序に焦点を当てることが、東南アジア諸国の統一要素として良好に機能する可能性がある」とし、「ASEAN加盟諸国が一丸となって、南シナ海で法治に基づく秩序を維持することの重要性をより良好な方法で中国に説く必要がある」と述べている。

ASEAN加盟諸国にとって、9月に予定されている閣僚会合はその絶好の機会となる。2020年7月13日、マイク・ポンペオ米国務長官は声明で、中国による南シナ海の資源追求は違法であると非難したが、こうした米国などの提携諸国がASEAN地域フォーラムには加盟していることから、これが強力な後ろ盾となりそうである。(写真:タイのバンコクで開催されたASEAN地域フォーラムの閣僚会合に出席するマイク・ポンペオ米国務長官(左端))

これにより、ザン上級研究員が「南シナ海、東シナ海、台湾海峡、ヒマラヤ国境で攻撃的に自国の存在感を高める」試みと表現した行為に対して、諸国の閣僚等が参加する同フォーラムが嫌悪感を持っていることを、中国政府に改めて実感させることができるかもしれない。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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