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テロ対策に向けて提携諸国との協力体制を固めるインド太平洋諸国

ジョセフ・ハモンド(Joseph Hammond)

米国が発表したところでは、地域におけるテロ資金調達と攻撃の実行を抑制することを目的としてインド太平洋諸国が米国とより緊密に協力を図っている。

米国国務省テロ対策局が2020年6月に発表した305ページの国際テロに関する国別報告書(2019年)には、バングラデシュ、インド、インドネシア、マレーシア、モルディブ、ネパール、フィリピン、シンガポールに関する報告が含まれている。

各国の報告内容には暴力的過激主義対策からテロ資金調達対策措置に至るまでの幅広い内容が記載されているだけでなく、地域全体においてテロ対策協力水準が高まっていることが強調されている。

報告書に記載されたインド太平洋地域のテロ攻撃の中には、250人以上の死者を出したイスラム過激派団体による2019年4月21日のスリランカ連続爆破テロ事件やニュージーランドで51人の死者が発生した2019年3月15日のクライストチャーチモスク銃乱射事件が含まれている。

2019年4月のスリランカテロ事件では地元のイスラム過激派団体の指導者であるスリランカ人伝道者、ザフラン・ハシム(Zahran Hashim)が首謀者とされたが、尽力により同犯人に関係する容疑者のシンガポールでの逮捕に繋がるなど、記載された各事例には提携諸国間の協力状況が説明されている。

地域テロ根絶条約に関して、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア太平洋経済協力(APEC)、南アジア地域協力連合(SAARC)などの政府間組織を通じて重要な協力が行われた。同報告書ではASEANの「アワ・アイズ(Our Eyes)」情報共有イニシアチブおよびイスラム国崩壊を目指す世界的連合が協力活動の成功例として強調されている。

また、同報告書ではオーストラリア、インド、日本、米国の4ヵ国間会談である「日米豪印戦略対話(QSD)」などの新たな多国間枠組の役割にも焦点が当てられている。(写真:2019年10月下旬、インドのミゾラム州バランテで合同テロ対策訓練を実施する日本陸上自衛隊(JGSDF)隊員とインド陸軍兵士等)

日本政府がテロ対策資金としてモルディブに5億円を供与する対モルディブ無償資金協力など、多くの場合、あまり注目されない二国間イニシアチブにも同報告書は言及している。

ニューデリーに拠点を置くインド・平和紛争研究学会(SSPC/Society for the Study of Peace and Conflict)のアニメッシュ・ロール(Animesh Roul)会長はFORUMに対して、「長年にわたりアジアではこの種の問題に対する多国間協力の欠如が深刻な課題となっていた。近年、同地域で外国人戦闘員が増加していることでもこれは明らかである」と述べている。ロール会長は、2019年11月に日米豪印間で初のテロ対策図上演習を主催したインドと米国間の協力体制が拡大している現状を称賛している。

国際テロに関する国別報告書(2019年)には、「米国政府は国境警備と情報共有能力を向上させるためにインド政府と協力を図っている。インドは監視リストの使用、入国港における経歴確認や生体認証スクリーニング機能の実装、そして情報共有体制の拡大を通して、テロリストの移動を検知・阻止する機能の改善に取り組んでいる」と記されている。

ジョセフ・ハモンドは、インド太平洋地域発信のFORUM寄稿者。

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