増大する課題の中、低迷が続く北朝鮮経済

増大する課題の中、低迷が続く北朝鮮経済

FORUM スタッフ

韓国政府系報道機関の聯合ニュース(Yonhap News Agency)が2020年8月下旬に報じたところでは、経済が依然として停滞している北朝鮮では、世界的な制裁措置と2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)パンデミック(世界的流行)に追い打ちをかけるように発生した今回の台風被害が同国の経済回復の大きな足枷となったと、韓国の国家行政機関である統一部が発表した。

統一部の発表によると、北朝鮮は10月10日の労働党創建75周年を目安として「国家経済発展5ヵ年戦略」の成長目標を達成することを目指してきたが、「制裁、新型コロナウイルス感染症、豪雨による米の生産被害など、三重苦により経済低迷が続いている」。

あらゆる報道から推測できるだけでなく、北朝鮮の金正恩(Kim Jong-un)最高指導者自身も認めたように、同国は経済目標を達成できなかったわけである。ニューヨーク・タイムズ紙によると、8月中旬、金最高指導者は2020年までに「社会主義経済強国」構想を実現するという国家経済発展5ヵ年戦略が未達成であると公に発表した。

2016年に金最高指導者が発表した同5ヵ年戦略が功を奏し、同年の経済成長は対前年比約3.9%増となったものの、その後は一連の障害により不振が続いていた。その最大の要因は同最高指導者の政策によるものと考えられている。2017年、金政権は自国の兵器計画を強化し、大陸間弾道ミサイルだけでなく、自国が水素爆弾(水爆)であると主張した兵器の実験といった禁止活動を繰り返したことで、国連安全保障理事会からより厳格な制裁を課される結果となった。韓国の中央銀行である韓国銀行の発表によると、こうした経緯から、北朝鮮経済は2017年には一転して3.5%減となったと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。同紙が報じたところでは、2018年もこの傾向が続き4.1%減となったが、国内の建設需要と農業生産が増加したことで、2019年には北朝鮮経済は0.4%増の成長率となった。

しかし、2020年には新型コロナウイルス感染症パンデミックの発生により、再び成長予測が打ち砕かれる結果となった。新型コロナウイルス感染症が発生すると、北朝鮮は中華人民共和国(中国)との国境封鎖を実施した。貿易データを追跡するウェブサイト「経済複雑性観測所(OEC/The Observatory of Economic Complexity)」によると、中国は北朝鮮の総輸出量の60%を占める輸出先である。韓国統一研究院(KINU)が発表したところでは、北朝鮮の中国への輸出量は2020年の前半6ヵ月間で75%減少している。ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、現在、主要金融アナリスト等は2020年に北朝鮮経済は8.7%減となると予測している。アナリスト等によると、これは北朝鮮が飢饉に見舞われた1997年以来最悪の低下率である。

2020年に発生した豪雨により、北朝鮮では今後も食糧不安が続くと考えられている。国際赤十字赤新月社連盟の報告書には、2018年の収穫が10年来最悪であったことから、2019年にもその悪影響が及んだと記されている。(写真:2020年8月に台風8号(バービー/Bavi)の被害を受けた黄海南道を視察する北朝鮮の金正恩最高指導者。北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)が発表した画像)

2020年8月に自国政権の「目標未達成」を認めた同最高指導者は、北朝鮮が同時にパンデミックと広範囲に及ぶ洪水被害という「2つの危機」に見舞われたことをその理由として挙げている。ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、感染症流行の悪化を懸念する同最高指導者は、それでも北朝鮮はいかなる国際援助も拒否すると宣言している。

また、北朝鮮の国営通信社である朝鮮中央通信によると、8月に平壌で開催された朝鮮労働党中央委員会の総会の「決定報告書」には、北朝鮮の国民の生活水準は「ほとんど改善されていない」と記されている。

韓国側が15億円相当(1,500万米ドル)を拠出することで建設された開城市の南北共同連絡事務所を2020年6月に北朝鮮が爆破したときの北朝鮮側の態度、またこれまで長年にわたり支配者として失敗を公に認めることがなかった同最高指導者の家系の慣行を考えると、今回同最高指導者が経済状況の悪化を公に認めたことは非常に異例な事と言える。

聯合ニュースが伝えたところでは、北朝鮮は2021年1月に北朝鮮労働党の党大会を開催して、新たな国家経済計画を策定する予定である。

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