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中国を訪問した世界保健機関科学者の強制隔離処置により新型コロナウイルス調査が遅延

FORUMスタッフ

2020年7月中旬、世界保健機関(WHO)の科学者2人から成る「先遣隊」の調査団が中国入りし、2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)の起源に関するより広範な調査に乗り出す足掛かりができた。しかし、実際の任務を開始する前に、調査団は中国政府が課した14日間の隔離期間を経る必要がある。

世界保健機関で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン(Mike Ryan)博士は記者会見で、「明らかに到着と同時に隔離され、遠隔から作業に当たらなければならない状況は理想的とは言えないが、中国が設定しているリスク管理手順を完全に尊重する」と述べている。

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、他の専門家が合流するまでに数週間かかり、本格的な調査に乗り出す状態が整うまでに数ヵ月以上を要する可能性があると、ライアン博士は話している。(写真:2020年1月、中国・北京の人民大会堂で開催される会議の前に、中国共産党中央委員会総書記などを兼務する習近平中国主席と会談する世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長(左))

新型コロナウイルスの起源や同ウイルスに関連する危険性について中国側の透明性が欠如しているとして反発や批判が続いたことから、世界保健機関による調査が実施される運びとなった。世界保健機関が調査団の中国訪問計画を発表する直前、中国で確認された豚インフルエンザの新型株に関する論文が学術雑誌の米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。同論文によると、2009年に世界的に流行したH1N1豚インフルエンザウイルスの変異種と考えられるこの新型ウイルスは「ヒトに感染する重要な特徴を高度に備えている」。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、「ユーラシア系鳥由来ブタH1N1ウイルス『G4(遺伝子型4)』」と呼ばれるこのウイルスは、2016年以降、中国の豚の中で感染が蔓延しているが、現在のところ「ヒト・ヒト感染」の事例は確認されていない。

新型コロナウイルスを調査する世界保健機関の研究者調査団は、野生動物や狩猟肉を販売する湖北省武漢市の武漢華南海鮮卸売市場に焦点を当てると考えられている。流行初期における新型コロナウイルス感染症例の多くの感染経路は同市場にある。

世界保健機関当局は声明で、「さまざまな国における過去の疾患流行事例で示されているように、新型のウイルス感染症の原因究明という作業は非常に複雑である。綿密な計画により実施される一連の科学的研究により、動物のレゼルボア(病原巣)とウイルスのヒトへの感染経路に関する理解が進むであろう」とし、「この取り組みはさらなる世界的な科学研究と協力に繋がる可能性のある有望なプロセスである」と述べている。

7月上旬のライアン博士の説明によると、最初は専門家が現場調査を実施する予定はない。ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、世界保健機関の科学者等はまず中国の当局者や研究者と面談して、データの確認と調査範囲の策定を行うことになる。

同博士は、「先入観を持ってはならない。科学はあらゆる可能性に対して柔軟な考え方を持つ必要がある」と語っている。

外交問題評議会(CFR)で中国の公衆衛生を専門に研究する黄严忠(Yanzhong Huang)博士がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところでは、中国と世界保健機関の新型コロナウイルス感染症パンデミックへの対応は綿密な調査の対象となっている。批判を表明したオーストラリアや米国などの諸国の代表者が調査内容や記録の閲覧を許可されるかどうかは不明である。

黄博士は同紙に対して、「一言で言えば、徹底的かつ客観的な調査が可能かどうかは未だ不明である」と話している。

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