開かれた 物流  レーン

開かれた 物流 レーン

米国とパートナー国との間 で締結された物品役務相互提供協定がミッションを合理化させる

フィリップ・J.・ヴァレンティPhilip J. Valenti

 け焦げたパートナー国の海軍艦艇の廃船が、米国から太平洋を越えて自国の港に曳航されている。米国海軍は、相手国の海軍艦艇で海上補給を行い、燃料、弾薬、予備部品、食糧を補給する。米国空軍 KC-10 は、3 機の同盟国の航空機に 30,000 フィートの燃料を補給する。パートナー国は大地震に見舞われ甚大な被害と破壊を受けると、災害救援物資や軍隊輸送のために米国軍の航空機を 「雇う」ことで自国の空軍を増強する。米国海軍は、海上で行方不明になったパートナー国の航空機とパイロットを捜索するため海上で捜索と復興作業を行う。米国はその国で他国パートナーと共に活動し、両国はレンタカー要件を組み合わせて大量注文割引を得て、双方の価格が釣り上がらないようレンタカー市場での競合を回避する。 

このような多様で一見無関係である状況に共通するものは何であろうか。これらはすべて、物品や役務を交換したパートナー国と米国間の物品役務相互提供協定
(ACSA)によって可能となった。 

ACSA は、米国国防総省とパートナー国の国防省との間の二国間協定である。ACSA は、米国が協定を結んでいる諸国と相互の後方支援を行うのに必要な法的権限を米国軍に与えている。米国は 2019 年 1 月までに、国連をはじめインド太平洋地域の 16 の国や機関を含む 119 の国や組織からなる ACSA を設立した。

2019 年 9 月、パプアニューギニアのラエで、パシフィック・エンジェル  (Pacific Angel)の歯科医であり、オーストラリア空軍のアリステア・ スーン(Alistair Soon)航空隊長(中央)と、パプアニューギニア国防軍の バシティ・ケップ(Vasiti Kep)大尉(右)とが治療について話し合う。 ジェリン・クインタニラ(JERILYN QUINTANILLA)技能軍曹/米国空軍

ACSA がなければ、米国軍はパートナー国の軍事組織や政府からロジスティック・サポート・サプライ・アンド・サービス(LSSS)を調達する手段が限られてしまう。一般的には、米国軍が海外のパートナー国に対して LSSS を提供できるのは、危機対応計画よりも意図的な行動計画に似た詳細なプロセスに従った対外有償軍事援助(FMS)プログラムを通じてのみである。FMS プロセスは複雑かつ綿密であるが、時が経つにつれ、緊急のニーズに対応する柔軟性に欠けることがわかった。FMS は船舶、固定翼機および回転翼機、精密誘導兵器、小銃、魚雷および大砲などの主要な防衛物品及び防衛役務(MDSA)を提供することができる。そして、重要なことにFMS は一方向的である。米国は FMS を通じて同盟国に LSSS を提供することはできるが、このプログラムで同盟国から LSSS を得ることはできない。

緊急の要件に相互に対応するために必要な柔軟性を確保したいという要望により、1970 年代に北大西洋条約機構(NATO)相互支援法が成立し、最終的に現在の ACSA プログラムに発展した。FMS とは異なり、ACSA の取引は MDSA の交換を禁止し、許可された品目や役務は小さな領域に限定される。ただし、ACSA はその売買の制限を考慮しても、米国軍がパートナー国軍に売却したり調達したりできる品目や役務を幅広く提供している。このリストには食料、水、衣類、宿泊費などの一般的な品目が含まれている。空輸機、鉱油、石油、潤滑油、セキュア通信サービスおよび非セキュア通信サービス、医療サービス、弾薬を含む輸送が認められている。また、基地軍事作戦支援、保管サービスや施設の使用、研修、スペアパーツやコンポーネントの修理とメンテナンス業務、較正業務、港湾業務も含まれている。何よりもこれらのタイプの LSSS の交換は、相互に行うことが可能である。

ブルネイ国軍 Pg Azmali bin Pg Haji Mohd Salleh 大佐 (右)と米国海兵隊ボイド・ミラー(Boyd Miller)大佐は、2019 年 10 月にブルネイ国際空港で、両軍間の 物品役務相互提供協定により円滑に行われた最初の 弾薬販売を認めた。カミロ・パロディ軍曹/アメリカ太平洋海兵隊

世界中どこででも物品やサービスが交換可能なことに加えて、ACSA プログラムには米国およびパートナー国軍にとって好ましい後方支援の手段となる極めて魅力的な特徴がいくつかある。その利点とは以下の通りである。

• ほとんどすべての ACSA の取引は、相互に合意した ACSA フォーム1ページを使って行うことができ、このフォームは単純でわかりやすいものとなっている。フォームは発注文書と受領文書の両方として機能し請求書としても機能する。これにより60 日以内の支払いが供給側からあることを受給側に通知する。ACSA の注文により、受給側は、供給側からの請求書が提示されてから最大で 60 日物品とサービスに対する支払いを遅延させることが可能であり、ACSA は無利子のクレジットカードのような機能も果たす。ただし、借り手が全額ではなく最低額を支払うことの可能なクレジットカードとは異なり、ACSA は期日までに全額を支払う
必要がある。

• 現金取引を必要とするほとんどの購買契約とは異なり、ACSA では供給側が次の 3 つの方法のいずれかを使用して返済を選択可能となっている。 

∎ 通貨による返済:現金通貨、小切手、電信送金、または電子振替決済

∎ 現物による交換(交換取引ともいう):受給側は、供給側から受けた LSSS を、受領したLSSS と実質的に同じ性質の物に置き換える。たとえば、米国が 100 ガロンのディーゼル燃料をパートナーに供給した場合、パートナーは米国に対して 100 ガロンのディーゼル燃料を所定の日付までに返済する。

∎ 等価交換:受給側は、供給側から受けた LSSS を等しい値段の LSSS に置き換える。上記の例を続けると、米国は 50,000 円(500 米ドル)相当のディーゼル燃料 100 ガロンをパートナーに供給し、パートナーは米国に 50,000円(500 米ドル)相当の食品をもってその取引を返済する。 

• 米国とそのパートナーは、自国の軍隊が支払うのと同じ価格を上乗せや追加料金なしで互いに請求することに同意している。実際には、燃料 1 ガロンに対する米国の定価が 300 円(3 米ドル)である場合、米国はパートナーに 300 円(3 米ドル)しか請求できないことになる。このような概念では、供給側は ACSA 取引で利益を得たり損失を受けたりすることなく、取引の収益が中立になる。

• ACSA により、パートナー国が米国軍から空輸、海上輸送、空中給油、海上補給を購入できることからパートナー国の軍隊の戦力増強に役立つ。ここでいう
フォース・マルチプライヤー(force multiplier)とは、軍事力が保有していない能力を得たり、保有している能力を拡大してもそれに見合った人員、装備、インフラへの投資を行わないものと定義される。具体的には、小規模のパートナー国は、ACSA を用いてその空輸能力や他の能力を米国から調達することができるため、空輸可能な航空機を購入する必要はない。 

• ACSA の最後の利点は、契約の有効期間が無期限であること、つまりは有効期限がないにもかかわらずどちらの当事者も 6 ヵ月前に書面で通知することによって契約を解除することができる。この解除権はいずれかの当事者が契約に不満を持った場合、その当事者が自由に解除できることを意味する。なお、米国が ACSA を締結している約 115 の国や機関のうち現時点で解除したところはない。

米国と ACSA を締結することをためらう国もあるが、そのような国は契約がこのようなものでないと思い込んでいるためである。簡単に言えば ACSA は9 ページにわたる法的拘束力のある国際協定であり、米国とパートナー国の軍隊がどのような状況下と制限下で相互の後方支援を提供できるかを定めるものである。一部の印象とは対照的に、ACSA は相互防衛条約や地位協定あるいは訪問協定ではない。米国の戦争や作戦または訓練にパートナー国を拘束したり、関与させたりすることはない。ACSA はパートナー国に米国軍や艦船、航空機を駐留させることを認めておらず、またパートナー国の陸国境や領海への侵入権も認めていない。ACSA は、調達契約と同様に物流支援を提供する契約上の義務を負うものではないが、パートナーは「国の法律、規制、政策」に沿った支援要請を満たすために「あらゆる努力を払う」ことに同意する。

MH-60S シーホークは、2019 年 12 月に海上で垂直補給を行っている。ダレン・ニューウェル(DARREN NEWELL)一等水兵/米国海軍

米国と ACSA を締結するプロセスは簡単だが、完了するまでに通常 12 ヵ月から 18 ヵ月かかる。締結には、米国議会、米国国防総省、米国統合参謀本部、アメリカインド太平洋軍(USINDOPACOM)が関与している。すべての米国の省庁間の承認を得た後の最初のステップは、米国大使館がそれぞれの外務省に協定草案を提示することである。特定国の防衛省や外務省が合意案を検討する十分な時間を確保したう上で、USINDOPACOM はパートナー国に代表を派遣し詳細な説明や ACSA に関する質問に回答したり、ACSA 交渉を行ったりする。米国はパートナーの要請に対応するためにあらゆる合理的な努力を払っているが、言語に実質的な変更を加えると、提案された ACSA の合意が遅れたり承認されない可能性があるため、提案された本文の言語にできる限り近づくことを各国に奨励している。ただし、パートナーには次の項目を決定する単独権限が与えられている。その項目とは、ACSA 取引から除外したい物流支援、補給品、サービス。政府内においてを実施協定(Implementing Arrangements) を締結する権限を持つ者(実施協定とは空中給油や大量燃料販売など、特定の状況で使用するために ACSA 条項をさらに拡大する協定)。希望する ACSA の発効方法(法的拘束力を持つようになる)。当事者間で文書の合意が成立し文書の言語を承認する必要のある米国の国務省と国防総省でその文書が調整された後、両当事者は署名者、署名場所と時期、および広報の対象範囲を特定する。

ACSA を締結する利点は、以下に要約するとおり明確かつ重要なものである。

• いずれの当事者も支援要求を拒否できる。

• 支払方法が柔軟である。 

• 必要なのは注文書式の 1 ページのみであり、注文が容易である。

• 請求書を受領してから 60 日後に無利子での支払を行ってもよい。

• ACSA は世界中で適用できるために、地理的制限がない。

• いずれの当事者も、6 ヵ月前の書面による通知をもって解約することができる。

ACSA もたらす利点すべてを考慮すると、いずれの当事者にも不利益はなく有効期限も伴わないためこの契約を締結する説得力のある場合がある。ある国が米国と ACSA を締結することに関心があったり、この貴重な安全保障協力ツールについてさらに学ぶことに関心があったりする場合、現地の米国の防衛駐在官または安全保障協力担当官がさらに詳しく説明してプロセスを開始することができる。

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