対外 関与

対外 関与

時間と資金を投資して 「自由で開かれたインド太平洋」を推進する カナダ、フランス、英国

FORUM スタッフ

自由で開かれたインド太平洋地域」の概念は世界的に支持を得ている。平和で安定し繁栄する地域という概念を自国の戦略に揃えるという考え方を支持する国がますます増えている。カナダ、フランス、英国などの諸国との提携や共同プログラムがインド太平洋地域で見られるようになった。これらはすべて地域の経済的・政治的繁栄を確実に実現することを目的としている。2019年 10 月、カナダ インド ビジネス協議会(CIBC)を率いるカシ・ラオ(Kasi Rao)社長兼最高経営責任者(CEO)はForbes.comに対して、 「初めて重心が大西洋からインド太平洋に移ったという実感がある。そのため、これを何としてでもアジアで成功させなくてはならない」と述べている。

しばらく前からその戦略的重要性により、同地域に世界の注目が集まっている。米国国務省によると、南シナ海だけを見ても、世界の海上貿易船の約 3 分の1 が同海域を通過する。しかも、世界で最も利用が多い港湾のうちの9港が同地域に所在している。2017 年11 月に開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)CEO(最高責任者)首脳会議でドナルド・トランプ (Donald Trump)米大統領は、「ここ数十年におけるインド太平洋地域の歴史は、国民が自国の未来の主導権を握れば成功できるという見本を示すものである」とし、「同地域の諸国はどの国の衛星国ともならず、それぞれが独自の光を放つ恒星として美しい星座を形成している」と述べている。

多くの国が継続的にインド太平洋地域の情勢に注意を向けるのも当然のことと言える。同地域およびその持続的な平和と繁栄に対する取り組みへの熱意を示すために、カナダ、フランス、英国がどのように時間と資金を投資したかを大まかにお話ししたいと思う。

2019 年 8 月、4 ヵ国の軍隊により実施された合同訓練「ヒドラクラブ(Hydracrab)」演習中に集合写真を撮るオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国の遠征軍 。 ケルシー・L・アダムス(KELSEY L. ADAMS)二等兵曹/米国海軍

カナダ

経済的・政治的に成長を続けるインド太平洋地域は、繁栄、開発、包摂、持続可能性、平和、安全に関するカナダの地域戦略にとっては極めて重要な存在である。
2006 年以降、中国とインドに在外公館を 10 拠点 に新設したカナダは、ASEAN(東南アジア諸国連合)にも新しい資源を投入し、2013 年 3 月にはカナダで初となるビルマ駐在大使を任命した。

カナダは 2025 年までに対外輸出を倍増する計画を策定し、引き続きインド太平洋地域への注力を強化する構えである。Forbes.com によると、2000 年時点ではカナダ貿易活動の約 76% は米国相手の取引で、インド太平洋地域を相手国とした取引は 10%に過ぎなかったが、2018 年には米国相手の貿易の占める割合が 63%に減少し、インド太平洋地域の割合が 17%に増加している。

カナダは「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」参加国である。同協定はカナダの他にインド太平洋で活動するオーストラリア、ブルネイ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの他 10 ヵ国が参加する自由貿易協定である。参加国 11 ヵ国すべてが発効すれば、合わせて 4 億 9,500 万人の消費者による国内総生産合計が世界経済の 13.5%を占めるほどの貿易圏が形成され、インド太平洋とラテンアメリカの主要市場へのカナダの参入度が高まる。 

ASEAN との交流歴が最も長い提携国の 1 つであるカナダは、最近、注目に値する取り組みを開始して東南アジアへの関与を強化している。カナダは現在もテロ対策と災害救援の主要提携国として活躍している。2020 年にベトナムが ASEAN 議長国を務めることになると、カナダは同国との二国間関係に強い関心を示すようになった。ベトナムに向かうカナダ船舶の数がますます増え、最近では、カナダ軍による軍事訓練へのベトナム人民軍参加に関する正式な合意が締結された。

2019 年 5 月、ベトナム国防相のゴ・スアン・リック (Ngo Xuan Lich)大将がカナダを訪問した。1973 年に二国間関係が確立されて以来、ベトナム国防相が同国を訪問したのはこれが初めてとなる。両国は国際連合平和維持活動などの分野に関する人材育成と専門知識の共有に関する協議に加えて、南シナ海と ASEAN を含む共通の地域的・世界的関心事について議論しただけでなく、防衛関係の発展手段についても対話を進めている。オンライン雑誌、ザ・ディプロマットが報じたところでは、議題にはサイバーセキュリティ、災害救援、救助、並びに両国の沿岸警備隊間の法執行協定の拡大およびカナダ海軍艦艇のベトナム寄港や演習などの海上安保が含まれる。

2014 年の多国間訓練「南十字星」実施中、ニューカレドニアのテレンバ要塞でフランス軍のドミニク・ウェシュラー (Dominique Weschler)大佐(左)、ティエリー・パオルクイ(Thierry Paolucui)大佐、ジム・キィノス(Jim Xinos)中佐と対話するオーストラリア空軍のケン・クイン(Ken Quinn)司令官(中央右) 。 オーストラリア連邦国防省

北東アジアに位置する日本もカナダの関与の強化を求めている。2019 年 4 月に行われたカナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相との会談で、安倍晋三首相はとりわけカナダとのより緊密な防衛協力を提案している。安倍首相は両国の軍事組織間の情報交換と人的交流の拡大だけでなく、両国の強みと言える国際平和維持活動においてカナダと協力することを望んでいる。

カナダ国際問題研究所(Canadian Institute of Global Affairs)のデイブ・ペリー(Dave Perry)防衛専門家はカナダ放送協会に対して、「人権、民主主義の支持、良好な経済的繋がりという観点から、両国には多くの共通の価値体系がある」とし、「また、太平洋地域に展開する米国海軍の取り組みにより、過去数十年に わたり同地域では自由な参入、自由貿易、運動の自由が 維持されてきたが、カナダもこうした価値を促進する戦略的課題を掲げている。両国はこの戦略的課題についても同じ側にいると考えられため、これにより両国に利益がもたらされる」と述べている。 

カナダ政府は声明で、「カナダはアジア太平洋地域全体の開かれた市場の発展、雇用の創出、事業の競争力向上、成長を促進する貿易を確立できる漸進的なアプローチを取ることを誓約する。この目的のために、カナダは労働者の権利、環境、性の平等といった問題を貿易の議論の場で確実に協議して問題に対処できるような環境の構築に努めており、公共の利益のために政府が統制を図ることができる政府の継続的な権利を強化している」と発表している。

フランス

フランスはインド太平洋地域に重要な軍事拠点を有しており、4,100 人の兵士がインド洋地域に、2,900 人の兵士が太平洋地域に常駐している。これらの部隊は主に仏領の安全を確保し、排他的経済水域(EEZ)を監視する任務を担うだけでなく、人道支援・災害救援(HADR)活動に参加し、人身売買対策にも取り組んでいる。フロランス・パルリ(Florence Parly)フランス共和国軍事大臣が著述した 2019 年報告書「France and Security in the Indo-Pacific(仮訳:インド太平洋地域のフランスと安全保障)」の序文には、「インド洋と太平洋の両地域に領土と国民を擁するフランスはインド太平洋地域の国家でもあり、アフリカ沿岸からアメリカ大陸の海岸地帯に至るまでの地域で独特の位置付けとなっている」と記されており、さらに「フランス は地域における主権と存在力を永続的に維持することで、自国領土の利益を擁護し、主にインド、オーストラリア、米国、日本、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド、インドネシア、ベトナムの提携国と共に 地域の安定性に貢献している」と続けられている。   

人道支援・災害救援に関しては、フランスは陸軍、海軍、空軍の資産を動員することで定期的に支援を提供している。南太平洋においては、フランスは 3 ヵ国間で締結している FRANZ 協定に基づきオーストラリアとニュージーランドと協力しながら、支援が必要な諸国で災害救援活動を実施している。また、東南アジア
における国民の保護と危機管理協力を調整するために、フランスの市民安保顧問機関がシンガポールに 設置されている。 

世界第4位の経済大国であるフランスは、その 核抑止力、衛星、戦闘機、潜水艦、艦船、戦車、他の戦闘車両の自律的設計や製造力に示されるように、包括的で独立した軍事資源を誇る。

160 万人の仏国民が居住し、インド洋と南太平洋に位置するいくつかの諸島に存在する領土と広大な排他的経済水域を有するフランスには同地域に既得権がある。2019 年 6 月に第 18 回アジア安全保障会議(2019 年シャングリラ会合)で講演したパルリ大臣は、「フランスが退去することはない。フランスは同地域に属しているためである」とし、「テロや組織犯罪、またはフランスの主権を蝕む企みなど、その脅威の種類に関わらず、フランス軍はあらゆる脅威に対処できる準備態勢を整えている。脅威には単純なものもあれば、潜行性のものもある。いずれにしてもフランス軍は脅威と対決する。フランスは存在感を維持し、常駐軍と臨時部隊を編成することで自国の利益を確実に守る」と述べている。

フランスは同地域に軍事司令部5拠点と主権基地3拠点を配備している。2018 年、フランス軍はインド洋で15 トンに及ぶ麻薬を押収した。パルリ大臣の言葉を借りれば、これは「同海域に存在するすべてのサメをフラフラにできるほどの量」である。同大臣の発言によると、フランスは同地域における安保構造の構築を支援しており、すでに ASEAN との緊密な連携活動に乗り出している。

また、フランスの「自由で開かれたインド太平洋」への取り組みについても言及した同大臣は、同海域の海上交通路を世界諸国が自由に利用できる環境を構築することが欧州の繁栄および世界に不可欠な貿易主要水路の保全の鍵となると述べている。同大臣はアジア安全保障会議の講演で、「これは原則の問題である。野心のみに基づく行動を規則で制御できなくなったら、同地域の小国はどのように安全性を確保すればよいのか?国連の基本原理である主権平等とはどういう意味なのか?」と問いかけ、「フランスは正面衝突は避けるが独自の頑固な手段を用いて、しっかりとこの問題に取り組んでいく。当国は南シナ海を年に 2 回以上 航行するつもりである。異議も出るであろうし、海上で怪しげな動きに遭遇するかもしれない。しかし、フランスは恐ることなく、いかなる既成事実も受け入れない。国際法で違法とされている行為を当国が容認できるはずがない」と述べている。

英国

欧州連合(EU)離脱後、英国がどのようにインド太平 洋地域に焦点を当て直すかは不明であるが、アナリスト等が予測するところでは、外交政策の再編が間もなく発生する。今のところ、英国はインド太平洋地域に最も近い安保同盟国であるオーストラリアと日本との強力な関係を維持しており、東南アジア諸国で存在感を高めることに取り組んでいる。 

香港に拠点を置く英字新聞「アジア・タイムズ・オンライン」によると、キングス・カレッジ・ロンドンの東アジア安保専門家であるアレッシオ・パタラーノ (Alessio Patalano)博士が著述した 2019 年の報告書には、「国際的に主導的な役割を果たす英国の将来的な姿勢の本質は、同国がアジア太平洋地域の複雑な安保状況にどのように関与するかにより左右される可能性が高い」と記されており、さらに「国際情勢において同地域への興味が高まりつつあることから、英国は厳しい選択を迫られることになる。同地域における将来的な安保確立に積極的に関与するか、それとも単にその変遷の管理に貢献するかのいずれかを選択しなければならない」と続けられている。  

英国政府はインド太平洋地域との今後の関係で積極的な役割を果たす構えであると表明している。2018 年 12 月に発表された英国国防省の報告書「Mobilising, Modernising and Transforming Defence(仮訳:防衛の動員、近代化、変革)」には、「世界的な影響を与える貿易網が発展し、地域の安保問題が深刻化している太平洋地域は、英国にとってますます重要な存在となっている」と記されており、さらに「英国は二国間関係および「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」情報共有協定と5か国防衛取極(FPDA)締結国を通じて、同地域における存在感を高める。我々は共に、諸国の安全と繁栄を支える航行の自由を含め、島国の貿易国として国際規則を擁護する」と続けられている。

2019 年初頭、当時英国の国防大臣を務めていた ギャヴィン・ウィリアムソン(Gavin Williamson)元国 防相が英国の軍事資源を極力多く東南アジアに配備すると発言したことで、インド太平洋地域の同盟国に 戦略的にも物理的にも近付きたいという英国の願望に 注目が集まった。2019 年 1 月、ウィリアムソン元国防相 はサンデー・テレグラフ紙に対して、「これは国家として第二次世界大戦以来最大の局面である」とし、 「これは再び英国が真の世界大国となれる転機である。英国軍はその一部として非常に重要な役割を果たすことになるであろう」と語っている。

2018 年 6 月に開催された第 17 回アジア安全保障会議の席で、英国は激しい紛争が発生している南シナ海に軍艦を派遣し、アジア海域における「法治国家」との連帯感を示す構えであると発言した同元国防相は、 「諸国は規則に従って行動する必要があること、そして従わなければそれなりの代償が生じることを明確化する必要がある」とし、「諸国は足並みを揃 えなければならない。同地域の同盟国と連携することで、どれほど多くの事柄を遂行でき、より大きな効果をもたらし、そしてより大きな改善が生まれるかを見てみたい」と述べている。

英国はまた、2020 年に運用が開始されたら太平洋に 空母を派遣すると誓約している。当時元駐米大使 を務めていた英国のキム・ダロック(Kim Darroch)元外交官はロイター通信に対して、「2020 年に 2 隻の新型空母の運用が開始され、当国の防衛力が更新・改善されれば、英国はこれらの空母を太平洋に派遣する」とし、「英国は航行の自由を確保し、世界諸国が海路と航空路を自由に利用できる環境を維持するため、現在の米政権だけでなく、次の政権の行政目的に沿って行動する」と話している。

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