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ファーウェイ最高財務責任者の米国への引渡しを巡る審理を継続する判定を下したカナダ裁判所

AP通信社

2020年5月下旬、ファーウェイ(Huawei Technologies Co. Ltd.)社上級幹部の米国への身柄引き渡しを巡る裁判において、カナダのブリティッシュコロンビア州最高裁判所は審理を継続する判定を下した。これにより、中華人民共和国(中国)とカナダの間の関係がさらに悪化すると考えられる。

同判決を受け、在オタワ中国大使館はカナダ政府に訴訟の取り下げを求めただけでなく、中国のハイテク大手企業を潰すことを企んでいるとして米国を非難する声明を発表した。

2018年後半にバンクーバー国際空港で拘束された同裁判の被告人、ファーウェイ社の孟晩舟(Meng Wanzhou)最高財務責任者(CFO)はファーウェイ創業者の娘である。米国は詐欺容疑で孟被告の引き渡しを要求している。孟最高財務責任者の逮捕の知らせは中国政府を激怒させたが、カナダ当局は同国の司法制度は独立していると強調してきた。

同裁判所副長官のヘザー・ホームズ判事は、孟被告の容疑が「双罰性」(容疑がカナダと引き渡しを求める国の双方で犯罪に相当すること)の基準を満たしており、引き渡し手続を続行するとの判定を下した。(写真:2020年5月27日、ファーウェイ社の孟晩舟最高財務責任者の審理が行われたカナダ・バンクーバーのブリティッシュコロンビア州最高裁判所の前に集まる群衆)

米国はファーウェイ社が香港のペーパーカンパニーを利用して米国の対イラン制裁を回避し、イランに機器を販売したとして同社を非難している。米国当局の主張によると、48歳の孟被告はHSBC銀行幹部に対して、イランに拠点を置く香港企業と自社の関係を隠して連邦法に違反した。

孟被告の弁護士団は、2020年1月に行われた審問で、同事件は米国の対イラン制裁に関するものであり、詐欺事件ではないと主張している。被告側はカナダがイランに制裁を発動していないことから、同国の法律下では詐欺罪が成立しないとの主張を一貫して通してきたが、カナダの裁判官はこの主張を退けた。

ホームズ判事による判決書には、「孟被告の双罰性に関する審理については、詐欺および他の経済犯罪容疑の被告の引き渡しという観点から、国際的義務を履行するカナダの能力が著しく制限される」と記されている。

同判事はまた、当時カナダが対イラン経済制裁を発動していなかった事実を踏まえた上で、米国による制裁は「カナダの価値観に根本的に反するものではなかった」と指摘している。

孟被告の弁護団は、逮捕前の証拠収集時点の行為においてカナダ国境サービス庁(CBSA)、王立カナダ騎馬警察(RCMP)、および米国連邦捜査局(FBI)が被告の権利を侵害したという主張で今後も弁論を進める予定である。通常、カナダでは引き渡し案件の裁判は数年を要する。

同被告に下された5月下旬の判定により、すでに傷付いた中国政府とカナダ政府の関係がより険悪になると予想される。

在オタワ中国大使館は声明で、「中国は強烈な不満と断固たる反対を表明し、カナダに対して当国が非常に真剣であることを明確に通知した」と述べている。

中国大使館はまた、「孟被告を直ちに釈放して安全な中国への帰国を許可し、これ以上間違った措置を取らないよう」カナダに警告した。

同被告の逮捕に対する明らかな報復措置として、中国は元外交官のマイケル・コブリグ(Michael Kovrig)と起業家のマイケル・スペーバー(Michael Spavor)のカナダ人2人を拘束しただけでなく、キャノーラ油糧種子など、さまざまな物資の対中国輸出に関してカナダに制限を課している。中国政府はまた、突然に実施された再審で、有罪判決を受けていたカナダ人麻薬密輸業者に死刑を言い渡した。

一部のアナリストの主張によると、電話・インターネット企業を対象とするネットワーク機器の世界最大の供給業者であるファーウェイ社は、技術窃盗容疑が申し立てられている中でも国際的な規則や規範を継続的に無視している。技術大国に成長した中国の進展を表す象徴である同社は、米国の安保機関や法執行機関の懸念の対象となっている。

米国司法省は声明で、「米加間の犯人引き渡し条約に基づく進行中の案件の継続的な支援について、米国はカナダ政府に感謝の意を表する」と発表している。

2020年5月下旬、判決に先立ち、裁判所前の階段で勝利のサインでポーズを取って写真撮影に応じた孟被告だが、黒いワンピースを纏い、足首に電子監視装置を装着された状態で出廷した。

声明で「当社は判決に失望した」と述べたファーウェイ社は、「カナダの司法制度により、孟被告の無実が証明されることを期待している」と続けている。

カナダのガイ・セイント=ジャック(Guy Saint-Jacques)元駐中国大使は、中国がカナダにさらに報復を加えると考えている。

セイント=ジャック元駐中国大使は、「2つの報復が考えられる。第一に、残念なことだが、マイケル・コブリグ元外交官とマイケル・スペーバー氏は裁判にかけられることになるであろう。懲役刑を回避するのは非常に困難である」とし、「第二に、商業面では、中国は様々な契約を撤回して輸出を禁止すると予測される」と話している。

同元駐中国大使の見解では、中国政府がカナダへの医薬品の供給を停止することはない。そんなことをすれば、世界諸国から抗議の声が上がるためである。

同元駐中国大使はまた、「2人のカナダ人逮捕の報道が流れた時点で、中国のイメージに傷が付いた。中国によるウイルス流行対策の初動の遅れに対する一連の批判と相まって傷が深まる。特に欧州は中国人に懸念を抱いている」と述べている。

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