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新型コロナウイルス対策で采配を振るうベトナム

ヘッドライン | Apr 24, 2020:

FORUMスタッフ

ベトナムは新型コロナウイルス対策において実力以上の力を発揮している。

ベトナムは国内のウイルス感染急増を防止するために適時にコスト効率の高い対策を講じただけでなく、100万枚を超すマスクなどの保護具をカンボジア、中華人民共和国(中国)、ラオス、および欧州の数ヵ国に無償提供し、米国への支援物資も製造している。

2020年4月初旬、ベトナムはカンボジアとラオスにさまざまな医療用具を提供した。ベトナム外務省のTwitter投稿によると、グエン・クオック・ズン(Nguyen Quoc Dung)外務次官を通してベトナム政府から東南アジア2ヵ国に約3,040万円(70億ベトナムドン/約30万4,000米ドル)に相当する専用防護服や医療用マスク、また検査システムや検査キットが寄贈された。

オンライン雑誌「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」の上級編集者であるプラシャンス・パラメスワラン(Prashanth Parameswaran)博士の記事によると、同国の動きは「ウイルスパンデミックが発生している状況下でも、東南アジア地域で指導力を発揮するというベトナムの意欲を示すものである」。パラメスワラン編集者はまた、ラオスとカンボジアへの支援を行うなど、ベトナムは引き続き同圏域で主要な役割を果たしていると記している。

カンボジアに39万枚、ラオスに34万枚のマスクなどを寄贈した数日後、ベトナムはフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の欧州5ヵ国にも55万枚のマスクを無償提供している。英字日刊紙のベトナムニュースが報じたところでは、ベトナムのト・アン・ズン(To Anh Dung)外務次官は、同政府がベトナム駐在大使等にマスクを寄贈するという行為は、欧州とベトナム間の戦略的提携の価値、並びに「国際協力と団結の強化」が新型コロナウイルス感染症の流行を抑制するための鍵となることをベトナムが認識していることを実証するものであると述べている。

ドイツ外務省のぺトラ・ジグモンド(Petra Sigmund)アジア太平洋課長は、「友好国ベトナムの支援に感謝する。我々は団結を維持し、今後も手を取り合って新型コロナウイルス対策に励むべきである」とツイートしている。

パラメスワラン編集者は、「援助には重要な意味がある」とし、「この動きは、新型コロナウイルス対策については国内でも引き続き警戒態勢を強化しているにも関わらず、ベトナム政府が二国間・多国間協力を念頭に置いて能力を最大限に発揮し、支援を続行するという同国の意欲を示すものである」と記している。

ロイター通信によると、ベトナムは最近、自国の工場で製造されたデュポン(DuPont)製の防護服45万着を米国のテキサス州ダラスに発送した。4月8日、支援物資が国内に届いたことを自身のTwitterで明らかにした米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は、「ベトナムにいるパートナー」に感謝の意を表明している。

中国共産党機関紙である人民日報傘下の「環球時報」の英語版「グローバル・タイムズ」が伝えたところでは 、2020年2月、ベトナム政府は約5,000万円(50万米ドル)に相当する医療用手袋、マスク、保護服を中国湖北省武漢市に寄贈している。

同紙によると、支援物資の発送を受け、中国外交部の耿爽(Geng Shuang)報道官は、「誠実な支援と援助を提供してくれたすべての人々に心から感謝する」と述べている。

ベトナム最大の発行数を誇る日刊新聞「トゥオイチェー(Tuoi Tre)」が報じたところでは、2020年2月、ベトナム赤十字社も米国に約1,000万円(10万米ドル)に相当する医薬品を無償提供している。

ロイター通信が伝えたところでは、現在、ベトナムでは40ヵ所における工場で1日当たり700万枚の布製マスクが生産されており、同国政府は1日当たり570万枚超増となった自国の生産能力の伸びを高く評価している。

ベトナム最大級の企業群もそれぞれの生産ラインを人工呼吸器や体温計などの医療用品の製造に切り替えていると、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は報じている。

米国国際開発庁(USAID)はパンデミック対策の医薬品をベトナム企業との提携で製造することを検討している。

ボイス・オブ・アメリカによると、「これはベトナム企業にとって個人用保護具(PPE)と医療用品を欧米市場に輸出する非常に良好な機会となる」と、ベトナム共産党の機関紙「ニャンザン(Nhan Dan)」は報じている。

さまざまな報道によると、ベトナムが他国を支援できる立場にあるのは、自国に機敏な製造基盤が存在するというだけでなく、パンデミックにすばやく対応したことで報告症例数が数百件と比較的少数に抑えられているためである。

ハノイに所在するソーシャル・データ・ラボ(Social Data Lab)人工知能部門のホンコン・グエン(Hong Kong Nguyen)研究者はプロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)ウェブサイトの記事で、ベトナムは外国人観光客が多く、外国からの帰国者や帰国学生が相次いだにも関わらず、しかも医療体制が不安定な資源不足の地域と見なされる国でありながら、同国はウイルス流行を成功裏に管理したことで多発地域にならずに済んだと説明している。

グエン研究者は、「同国が症例数を比較的少数に抑制できたのは、技術を活用した明確な通信と官民協力がその主な理由である」とし、「中国で初の死者発生が公表される前、そして同国での流行発生が確認されてからわずか3日後の1月3日の時点で、ベトナム政府は国境管理を強化し、新たな肺炎症例について各病院や地方の保健部門に警戒態勢を整えるよう指示していた」と記している。(写真:2020年4月6日、ベトナムのハノイ居住者を検温する医療従事者)

 

ドイツ国営の国際放送事業体であるドイチェ・ヴェレは、「新型コロナウイルス対策として、ベトナム政府は厳格な隔離政策を制定し、ウイルス接触者全員を完璧に追跡している。ウイルス感染拡大を防止する最後の手段として都市全体を封鎖した中国で当初流行が報告された時期よりもはるかに早く、ベトナム政府はこうした対策を実施していた」と報じている。

 

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