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党内からの反対派圧力に苦しむ中国の習近平主席

ヘッドライン | Apr 7, 2020:

ラジオ・フリー・アジア(RFA

新型コロナウイルス感染拡大防止政策に関連して、与党の中国共産党(CCP)内部からの習近平(Xi Jinping)中国主席への政治的圧力が高まっている。

2020年3月中旬から「中国共産党中央政治局の緊急拡大会議の即時開催に関する建議」と題した記事がオンラインで出回っている。これは、「習近平主席の問題」に関して党中央政治局会議を開催し、政党、政府、軍隊の指導者を務める同主席の辞任を議論することを求める「建議書」である。

同建議書には、同主席による新型コロナウイルスのパンデミック対策だけでなく、米中貿易戦争および香港と台湾の中国への不信感助長に纏わる問題についても検討する必要があると記されている。(写真:2020年1月28日、中国・北京の人民大会堂で習近平主席と会談する世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長(左))

ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国営の国際放送事業体)と台湾国際放送(RTI)が報じたところでは、同記事は香港を拠点とする放送局「陽光衛視(Sun TV)」の創設者である陳平(Chen Ping)会長が微信(WeChat)に転載したものである。

陳会長は微信への投稿記事に「微信の投稿記事の中でこれを見つけた。この記事の内容が適度で合理的だと感じたのでリツイートする」と記している。

しかし、「匿名記事を転載しただけである。その他多くがこの匿名記事をオンラインでリツイートしている」と、執筆者については知らないことを強調している。

清華大学で政治学講師を務めた経歴のある呉強(Wu Qiang)政治アナリストによると、同記事が出回り始めたのは、ソーシャルメディアにおいても毒舌家として知られる資産家の任志強(Ren Zhiqiang)氏が失踪した直後である。任氏は当局に拘留されたと推測されている。

湖北省武漢市における新型コロナウイルス流行に対する中国政府の対応を批判する記事をオンラインに投稿した後、任氏は音信不通となった。

中国の保健当局の報告によると、2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)の震源地となった武漢市の中心部では、新たな感染事例は確認されていないが、政府による継続的な隠蔽の実態を把握している地元住民は新たな症例が発生している可能性を懸念している。

呉アナリストが説明したところでは、高い功績を持つ筋鐘入りの中国共産党員や著名な革命指導者の子孫を含め、中国共産党の高級幹部の子弟等で構成される「太子党」の間でも習主席の統治に対する不満が高まっている。

同アナリストは、「ますます多くの太子党が習主席から遠ざかりつつある」とし、「任志強氏の失踪が引き金となった(翻訳者注:任氏は太子党である)」と語っている。

同アナリストはまた、「当然のことながら、任氏の失踪は以前に同氏が投稿した記事と関係がある」とし、「これは太子党の間で失望感が高まっており、そうした感情を抑えることがますます困難になっている現状を示すものである」と説明している。

さらに、「これが [失踪した任氏への] 共感という感情と相まって、現在率直な批判に発展している」と、同アナリストは話している。

任氏が投稿した記事は、「ウイルスおよび深刻に蝕まれた体制によって台無しにされた人々の生活」と題されていた。

記事は習主席を名指しこそしていないが、同主席の直接指揮の下で下された決定を非難する内容である。これには、数千人が集まる春節(旧正月)の大規模な催しを武漢市で実施させ、その後の数週間で莫大な数の新型コロナウイルス感染症クラスター(小規模な患者集団)が発生した事態が含まれる。

記事の中で筆者は、「『裸の王様』は1枚の布を掲げるように持って、服を着ていないという事実を隠そうとするが、強力な指導者になりたいという野心に押されて、裸になっても皇帝を演じ続ける1人の道化師」と、習主席を揶揄している。

香港を本拠とする李(Li)学者は、今回出回った記事が党上層部に変化をもたらすという楽観的な考えは持っていない。

同学者は、「第一に、同記事は匿名で流れている。第二に、現在の権力構造内にこれを支持できる人物は存在しない」と説明している。

それどころか、中国政府は新型コロナウイルス流行防止対策に関する宣伝工作を矢継ぎ早に実施して攻撃態勢に入っている。

同学者は、「中国共産党は [中国の政治] 体制の素晴らしさを誇張する宣伝工作を次々に打ち出している」とし、「これにより一層国民が洗脳されることで、政府や党にかかっている世論からの圧力の一部が緩和されるはずである」と話している。

中国では国家危機が発生した際に、引退後の政治家が出席できる党中央政治局拡大会議が開催される傾向がある。

1966年から1976年までの10年間に政治的混乱と大量虐殺を招いた「文化大革命」幕開けの役割を果たした1966年12月の政治局拡大会議など、中国共産党の歴史における重要な局面でこの拡大会議が開催されている。

1980年には、当時事実上の中国最高指導者であった鄧小平(Deng Xiaoping)が政治局拡大会議を開いている。これが、その後30年以上にわたる経済改革路線への突入の起点となった。

同様の拡大会議により、学生を中心とするデモ隊が民主化を求めて天安門広場に集結した1989年の六四天安門事件の後、当時の趙紫陽(Zhao Ziyang)主席が失脚に追い込まれた。

陳会長が転載した建議書は、1980年の拡張会議の精神に倣って、同様の政治局拡大会議の開催を要求したものである。

話題を呼んだ一連の習主席に対する批判としては、この匿名の建議書は最新のものである。

習主席に退陣を要求する文書を発表したとして、中国の司法警察は服役経験のある反体制派の人権活動家、許志永(Xu Zhiyong)博士を捜索していたが、この2月に許博士が拘束されたことが明らかとなった。

現在、同博士は「指定された場所での監視付き生活」で監禁状態にあり、最大6ヵ月間、家族や弁護士との面会なしで拘留される可能性がある。

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