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新型コロナウイルスが蔓延する中、北朝鮮が一連の発射実験を実施

ヘッドライン | Mar 20, 2020:

FORUMスタッフ

ここ3ヵ月ほど北朝鮮によるミサイル発射は鳴りを潜めていたが、韓国(ROK)当局によると、2020年3月上旬、北朝鮮は1週間の間隔を空けて一連の短距離飛翔体を発射し、挑発的な行動を再開した。韓国政府系報道機関の聯合ニュース(Yonhap News Agency)が報じたところでは、国連安全保障理事会は新型コロナウイルス対策のための物資を北朝鮮に搬入するために対北朝鮮制裁の適用除外を求めた申請を承認したが、1回目の実験が行われたのはそのわずか1週間後のことである。

大韓民国国軍は声明で、「北朝鮮によるこの種の行為は、朝鮮半島の緊張緩和への取り組みを阻害するものである」と述べている。ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、3月2日に発射された2発の飛翔体は約240キロを飛行して日本と北朝鮮の間の日本海に落下したと見られているが、これに関するデータを現在分析している大韓民国国軍は、「こうした行動を直ちに停止することを再度北朝鮮に要請する」と述べている。

同紙によると、北朝鮮・元山市近くの東海岸で3月上旬に実施された発射実験は朝鮮人民軍の軍事訓練の一環だと韓国当局は考えている。聯合ニュースが伝えたところでは、北朝鮮の金正恩(Kim Jong-un)最高指導者が「火力打撃演習」を視察したと、北朝鮮の公式報道機関が発表している。(写真:2020年2月29日、演習を視察する北朝鮮の金正恩最高指導者。北朝鮮の朝鮮中央通信社が発表した画像)

韓国統合参謀本部がロイター通信に語ったところでは、その後の3月9日に北朝鮮は複数の短距離飛翔体をおそらく複数の発射台から日本海に向けて発射したが、これも明らかに別の火力打撃演習の一環である。2回目の飛翔体の飛行距離は最大200キロ、最高高度は約50キロで、3月2日の実験時に発射された飛翔体よりも高度が高い。

ロイター通信が報じたところでは、飛翔体が少なくとも3発発射された2回目の実験の後、米国と中国が同日に北朝鮮政府に対して、非核化と弾道ミサイル計画廃止に関する協議再開を呼びかけた。

米国国務省の報道官は、「北朝鮮に対して、挑発を避け、国連安全保障理事会決議に基づく義務に従い、そして非核化の完全履行に向けた継続的・実質的な交渉に戻るよう引き続き呼びかける」と述べている。

ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、2020年2月下旬、国連安保理は金正恩政権による新型コロナウイルス対策を支援するため、対北朝鮮制裁の適用除外を求めた申請を承認し、診断装置や医療機器の北朝鮮への送付を許可している。同制裁により、北朝鮮では同国の核・ミサイル計画を促進する可能性のある機器の入手や輸入が禁止されていた。

2020年2月27日、国連安保理の制裁委員会のクリストフ・ホイスゲン(Christoph Heusgen)委員長は世界保健機関(WHO)から申請された適用除外を承認する際、「制裁委員会は、DPRK [朝鮮民主主義人民共和国] に関する国連安保理決議を通じて同理事会が課した制裁措置は、DPRKの国民に悪影響を与えることを意図するものではないことを改めて表明する」と書簡に記している。

さまざまな報道機関が報じたところでは、北朝鮮が今回の実験を実施したのは、6,000人以上の感染者が発生している韓国がウイルス流行対策に喘ぐ中、新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)拡大を考慮して米韓の軍隊が年次共同演習を遅らせると発表した数日後のことである。

2020年3月10日現在、北朝鮮はウイルス感染者の発生を認めていないが、実際のところ、同政権は予防の取り組みを強化している。中国との穴だらけの国境や他の要因・証拠も考慮に入れ、新型コロナウイルスはすでに北朝鮮に侵入していると疑う声も出ている。ラジオ・フリー・アジアによると、北朝鮮でも感染者と死亡例が確認されていると、韓国報道機関が報じている。

ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、2019年11月28日に北朝鮮が明らかに短距離ロケットと弾道ミサイルと考えられる一連の発射実験を実施して以来、同国が発射実験を行ったのはこの3月の短距離飛翔体が初めてとなる。

聯合ニュースの報道によると、2020年3月4日、米国上院軍事委員会の公聴会でマーク・エスパー(Mark Esper)米国防長官は、北朝鮮の弾道ミサイル機能は「ますます複雑化しており、同国が全範囲にわたるミサイルシステムの近代化を図っていることが」実験から読み取れると述べている。

北朝鮮政権は核兵器と長距離ミサイルの実験を2年間停止していたが、2019年12月下旬になって金最高指導者は同実験を再開すると脅しに出た。米公共ラジオ局(NPR)が報じたところでは、北朝鮮の公式報道機関が、同最高指導者は「近い将来、新たな戦略兵器」を発表する予定であると述べたと伝えている。

ソウルに所在する梨花女子大学校国際学部のレイフ=エリック・イーズリー(Leif-Eric Easley)教授はニューヨーク・タイムズ紙に対して、北朝鮮は「4月に予定されている韓国の総選挙および米大統領選の予備選挙が多州で一斉に行われる『スーパーチューズデー』の前に勝算を高めようという意図があるようだ」とし、「北朝鮮は今回のようなミサイル実験を行うことで、中国政府、韓国政府、米政府の政治的関心や公衆衛生に対する懸念に構わず、自国の軍事力の改善を図り、今後も大きな要求を出すという意図があることを明らかにした」と話している。

大韓民国第21代総選挙は4月15日に予定されている。(2020年の米予備選挙のスーパーチューズデーは3月3日に当たる)

北朝鮮は国連安保理が対北朝鮮制裁の適用除外を求めた申請を承認した1週間後に実験を実施している。今回の実験に関しては即座に非難の声が上がったが、ドイツの国連常駐代表であるホイスゲン委員長もその1人である。3月5日にベルギー、英国、エストニア、フランス、ドイツが3月2日の実験を非難する声明を発表した。

聯合ニュースによると、ニューヨーク国連本部で開かれた記者会見で、ホイースゲン委員長が連合を代表して、上記の欧州5ヵ国と国連安保理の全常任理事国が「北朝鮮の弾道ミサイル実験に対して深い懸念を抱いている」と発表している。

同委員長は、「こうした挑発的な行為を非難する。北朝鮮は地域の安全性と安定性だけでなく、国際的な平和と安保を損い、満場一致で採決された国連安保理決議への明らかな違反を犯した」と述べている。

同委員長はまた、「北朝鮮に対し、誠実に非核化を目的として米国と有意義な交渉を行い、すべての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を完全かつ検証可能かつ不可逆的な方法で放棄するための具体的な措置を講じ、そして今後は挑発的な行動を控えることを引き続き要請する」と発表している。

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