開かれた  通信網

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インドと米国の間の セキュア通信 ・ 互換性協定 により  提携国が地域の安全を強化

2019 年 4 月、インド洋上空で米印海軍の哨戒機が合同飛行し、下では米駆の誘導ミサイル駆逐艦が離岸した。2018 年にセキュア通信・互換性協定に署名して以来初めて、軍事提携国は共同で対潜水艦戦の演習を行い、過去に問題となった通信の障壁はもはや問題ではなくなった。

2018 年 9 月に調印された画期的な通信互換性保護協定(COMCASA)により、インド軍と 米軍との間の作戦調整が強化された。中国が海軍 艦隊を拡大し、インド洋への進出を頻繁に行うようになると、提携国は、通信互換性保護協定により、シームレスに通信し、地域の安全を守ることができるようになる。

両国の高官は、この合意が防衛提携の成熟を示すものであることを認めた。 

左から、ジム・マティス米国防長官、マイク・パンペオ米国務長官、当時のスシュマ・スワラージインド外相、当時のニルマラ・シタラマンインド国防相が、2018 年にセキュア通信・互換性協定に署名する前に、ニューデリーで会談を行う。AFP/GETTY IMAGES

当時の米国防長官代行パトリック・シャナハン(Patrick Shanahan)は、2019 年 6 月、シンガポールのシャングリラ会合で演説し、「米印防衛関係はこの 10 年間で大幅に強化され、インドは今や主要な防衛提携国となっている」と述べた。「我々は、軍事関与の範囲、複雑さや頻度を増やし、今年後半に初の 3 軍演習を行う。」

通信互換性保護協定が調印されるまで、米国はインドに販売する軍事プラットフォームから高度通信機器を撤去しなければならなかった。もう 1 つの障害は、米国は、共同演習中にインドの航空機や船舶に一時的なシステムを設置し、両軍が通信できるようにする必要があったことだと、オンラインのニュース雑誌ディプロマットは伝えている。しかし、2019 年 4 月の演習では、両海軍のP8哨戒機がインド洋を哨戒し、 米国海軍の誘導ミサイル駆逐艦スプルーアンス (USS Spruance)も訓練に参加した。米国海軍が発表したところによると、この演習は対潜水艦戦の訓練、航空機と船舶の情報共有と調整を目的としてディエゴ・ガルシア島付近で行われた。

スプルーアンスの指揮官である米国海軍のマシュー・シュミット(Matthew Smidt)司令官は、軍事提携国インドについて、「我々は彼らの海上哨戒・偵察機(MPRA)の専門性と能力に大いに感銘を受けた」と述べた。「この演習は素晴らしい経験と機会であり、私たちはそこから学び技術を磨いた。」

何年にもわたる交渉

ディプロマットによると、インド政府は戦略的自治の維持に引き続き熱心に取り組んでいることもあり、デリーが 2016 年に米国との物流交換覚書に調印するまでには、十数年にわたる交渉を要したという。国家間で通信互換性保護協定の交渉が行われた際、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)政権は、標準協定に対しいくつかの修正と条件を主張した。

協定は 10 年間有効だが、6 ヵ月前に予告すれば解除できる。また、米国は協定が有効な間、暗号化された通信システムを停止することはできず、インドのプラットフォームから取得したデータをインドの同意なしに第三者と共有することはできないとしている。インドと中国との国境問題の対立が、インドの通信互換性保護協定に対する姿勢の転換点となったとの報告が少なくとも1件はある。米印防衛協力の緊密化がもたらす利益の実例となった。

2017 年 6 月、中国軍は建設用車両と道路建設用の機器を装備して、北はチベットのチュンビ渓谷、東はブータンのハ渓谷、西はインドのシッキム州に接するドクラムまで、道路を南に拡張しようとしていた。ドクラムは、1961 年からブータンが領有権を主張しているが、中国も領有権を主張している。2017 年 6 月 18 日、中国軍の道路建設を阻止するため、武器と2機のブルドーザーを装備した約 270 人の インド軍がドクラムに到着した。10 日間の 対抗の後、両国は軍隊を撤退させたと発表した。

左インドは遠隔操縦航空機シーガーディアンを 30 機米国から購入する予定。 ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル

インドの英字紙エコノミック・タイムズに掲載された記事は、この事件が通信互換性保護協定の価値に対するインドの見方に変化をもたらしたと指摘している。

この協定の調印は、インド海軍の海事意識を高めることにもなる。米国の艦船や航空機が脅威を検知すると、米国海軍から暗号化されたデータを送信することで、その地域のインド海軍艦艇と瞬時に通信できるようになると、ニューデリー・テレビジョン社は報告している。通信互換性保護協定の一環として、インド海軍の資産に汎世界連合情報交換システム(CENTRIX)が搭載されている。米国は、汎世界連合情報交換システムを世界中の戦闘部隊コマンドをサポートする機密連合ネットワークの集合体と説明している。

この協定の価値は、迅速なデータ共有だけではない。2019 年 6 月の ザ・タイムズ・オブ・インド紙の報道によると、インド政府は 30 機の兵器化された遠隔操縦航空機を米国から購入する計画を最終決定したという。このシーガーディアン機は、MQ-9B スカイガーディアンの海事改造型で、時速 300 キロで飛行し、14 時間飛行し、基地から 1,800 キロも離れたところで偵察や哨戒の任務を遂行することができる。シーガーディアンは画像を管制室に送信し、管制室は双方向データ・リンクを使って航空機を操縦する。

航空機の追加販売も計画している。2015 年、インド海軍は P-8I ネプチューン機の初の戦隊をデビューさせた。この対潜水艦戦航空機は、米国海軍が使用している P-8A ポセイドンの派生型である。2019 年 4 月、米国は MH-60R シーホーク潜水艦探知ヘリコプター 24 機をインドに約 2900 億円(26 億米ドル)で売却することを承認した。このヘリコプターは、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦、航空母艦から操作するよう設計されており、対水上戦や対潜水艦戦の能力を高める。シーホークは、潜水艦の探知だけでなく船舶の無力化や海上での捜索救助活動も可能である。

インドは、通信互換性保護協定の締結以前にも、米国から C-17 グローブマスターII航空機や AH-64 アパッチ攻撃ヘリコプターを購入している。

中国潜水艦隊の増強

中国は現在、核攻撃を行うことができるミサイル潜水艦部隊を保有しており、陸上の核兵器が攻撃された場合のより信頼性の高い二次攻撃能力を有している。米国防総省は 2018 年 8 月に発表した報告書の中で、中国軍は、中国の潜水艦艦隊を「実行可能(viable)な」海上配備の核抑止力に拡大したと述べた。

米国防総省の報告によると、中国はすでにこの地域最大の海軍艦隊を保有しており、潜水艦の保有数を拡大し続けている。現在は、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦4 隻、原子力攻撃潜水艦5隻、ディーゼル動力攻撃潜水艦 47 隻が稼働している。2020年までに、この戦力は 69 から 78 隻の潜水艦にまで拡大する可能性が高い。 

2019 年 4 月に、米国海軍の P-8A ポセイドン哨戒機がインド海軍と共に潜水艦探知演習に参加。 一等兵曹ブライアン・ニゲル/米国海軍

2019 年、インドの報道機関は、中国がインド洋で頻繁に潜水艦を哨戒していることにインド海軍当局者が懸念を強めていると伝えた。このような活動について初めて公に言及されたのは、2013 年に中国が、アデン湾の海賊対策任務を遂行するために、核攻撃型潜水艦が1隻インド洋を航行していることを認めたときであった。さらに 2018 年には、中国が資金提供したスリランカのコロンボ港に中国の潜水艦が二度寄港した。

インドは、西はパキスタン、北はヒマラヤによって封鎖されており、石油の 80%をインド洋から輸入し、貿易の 95%を海上輸送することを余儀なくされているため、特に海上貿易に依存している。貿易はインドの GDP の 55%を占めている。中国は貿易が GDP の 60%近くを占め、その貿易の 85%を海上輸送に依存している。また、中国の石油輸入の 80%はマラッカ海峡を経由している。「このように、両国は潜在的な封鎖に対する自国の脆弱性を非常に懸念しており、潜水艦は封鎖の鍵となる」と雑誌ナショナル・インタレストは報じた。

課題への対応

航行の自由と領土権が保護される自由で開かれたインド太平洋を維持するためには、軍事提携国間の作戦調整を強化することが重要である。アジアン・ニュース・インターナショナルの報道によると、当時のインド国防相ニルマラ・シタラマン(Nirmala Sitharaman)はこの点を強調し、「通信互換性保護協定は、米国との関係強化に向けた歴史的な一歩である」と述べた。

米国のケネス・ジュスター(Kenneth Juster)駐インド大使によると、両国関係は、テロ対策、貿易、エネルギーなど他の重要分野でも拡大している。大使は、2019年 6 月、グレーター・ヒューストンのインドーアメリカ商工会議所で、米印関係は 「世界のあらゆる二国間関係と同じように幅広く、複雑で、実質的に豊かである」と述べた。インド最大の通信社であるプレス・トラスト・オブ・インドの報道によると、大使は「それは国際問題のあらゆる範囲を網羅している」と述べた。

ジュスター大使によると、米国の企業もインドの提携先と協力してインドで防衛装備品を製造しているという。

「国防に必要なソフトウェアや統合ネットワークも有している」と大使は語った。「画期的な通信互換性保護協定を含むインド軍と米軍間の協力・防衛協定は、軍同士の相互運用性を高め、インドが米国の最高クラスのソフトウェアやシステムを利用できるようにしている。」  

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