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専門家等の見解:中国による南シナ海の違法漁業対策は不十分

ヘッドライン | Feb 25, 2020:

ジョセフ・ハモンド(Joseph Hammond

米国当局は中国に対して、南シナ海におけるIUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)を黙認する姿勢を改めるよう促した。

2020年1月7日、戦略国際問題研究所(CSIS)の主催によりワシントンDCで開催された第2回年次海洋安全保障フォーラムで、IUU漁業対策における中国の役割について米国沿岸警備隊・作戦実行部門の副長官、ダニエル・エイブル(Daniel Abel)中将が言及した。

エイブル中将の説明によると、中国の制度改革を支援することを目的として、15年前に米国沿岸警備隊は中国の船舶乗組員や法執行官が同警備隊の船舶に乗り込むことを許可するプログラムを導入している。2000年にカナダ、日本、ロシア、韓国、米国が参加する北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)が設立されたことがこうした協力体制に繋がったのである。

2020年に話を戻すことにしよう。

中国によるIUU漁業規制の実施を支援する米国の取り組みについて言及した同中将は、「米国は中国を支援してきた」と話している。しかし、今日の中国海警局は15年前とは異なる。同中将の言葉を借りれば、「中国海警局は巨大で、米国沿岸警備隊よりも大きくなった」のである。

それぞれの艦隊の艦船数と規模の両方においてこれは事実である。世界最大の沿岸警備隊の船艇は、中国海警局が保有する12,000トンの「海警3901」であると言われている。同様に、国の助成金を受けている中国の漁船団の規模は巨大で、台湾と共に世界の遠洋漁業漁獲量の60%を占めている。同中将は、「漁業が国力の推進力となっている」と説明している。

今年、中国は漁船団の船舶数を3,000隻に抑えることを誓約した。1980年代半ばまでは遠洋漁業の漁獲量はないに等しい状態であった中国は、最近の規模拡大により、世界の漁業資源に圧力をかけるほどに成長した。文化や言語の壁を越えて環境問題に関する対話を促進する慈善団体と自称するロンドンのチャイナ・ダイアログ・トラスト(China Dialogue Trust)が提供するチャイナ・ダイアログ・オーシャン(China Dialogue Ocean)によると、今日、世界で枠の上限まで漁獲されている、または乱獲されている商業漁業資源は93%に上る。(写真:中国江蘇省東部の港湾に帰港する中国漁船)

南シナ海に関する中国政策の第一人者であるタビサ・マロリー博士は、「中国にとっては主権問題のほうがIUU漁業よりも重要である。したがって、中国海警局は中国の漁業を推進するように動く。規制に基づき他国の船舶を取り締まるほどに、自国の船舶を取り締まることは絶対にない」と説明している。

中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しているが、世界諸国はこれを認めていない。

海洋安全保障フォーラムで講演したマロリー博士は、IUU漁業に関して中国に対する否定的な見方が高まっていることが、同国がいくらかの改革の取り組みに着手した要因であると付け加えている。中国は7件の漁業条約と管理組織に参加していることから、自国の港湾でIUU漁業対策を講じる責任がある。

今、中国はやっと小さな一歩を踏み出した。同国政府は漁業法を改正し、漁業法に違反する船舶のブラックリスト登録を義務付けている。チャイナ・ダイアログ・オーシャンの報告によると、法律改正は正しい方向に向かう第一歩であるとの評価がある一方で、電気漁業や物議を醸す他の慣行については何ら対策が取られていないという批判の声も上がっている。電気漁業とは、魚類を楽に捕獲できるように、電流の感電作用を利用して魚類を誘導する、または一時的に麻痺させる手法を指す。

ポセイドン水産資源管理(Poseidon Aquatic Resource Management)および国際組織犯罪対策会議(Global Initiative Against Transnational Organized Crime)による2019年報告書では、IUU漁業に関与する国の指標で中国が最低の順位にランク付けされている。

非政府組織「シーシェパード環境保護団体」のピーター・ハマーシュテット(Peter Hammarstedt)局長はFORUMに対して、「国際的にIUU漁業を超国家的犯罪として扱う傾向が高まっている」とし、「世界諸国では取り締まる側がIUU漁業対策として使用できる法執行手段を多様化している傾向にある。残念ながら、中国政府がIUU漁業を犯罪ではなく管理上の問題として扱う限り、同国はこの波に乗っていないと言わざるを得ない」と話している。

ジョセフ・ハモンドは、インド太平洋地域における防衛問題に関する記事を発信するFORUM寄稿者。

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