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紛争島嶼群付近の「グレーゾーン」に対する中国の強制的な主権主張の激化

FORUMスタッフ

2019年、日本政府が国有化した東シナ海の島嶼群付近への中国の海域侵入件数が記録的に増加したことで、インド太平洋地域の近隣諸国間の緊張が高まっただけでなく、日中関係改善の流れに陰りが見え始めている。

ロイター通信によると、2019年12月下旬、安倍晋三首相は李克強(Li Keqiang)中国総理に対して「東シナ海の安定なくして真の日中関係の改善なし」との立場を強調している。安倍首相と李総理は日中韓の3ヵ国首脳会談に併せて中国で会談した。

首脳会談の数週間前に海上保安庁が発表したところでは、2019年には中国海警局船艇を含む中国政府の船舶が、日本島を囲む日本領海と考えられる海域と接続水域に1,000回以上侵入している。ブルームバーグニュースが報じたところでは、これは2018年の侵入回数から80%増となる数値で、過去7年間で最高を記録する。

東アジア政策研究センターの非常勤上級研究員であるアダム・P・リフ(Adam P. Liff)博士がブルッキングス研究所に提出した2019年12月の報告書によると、日本では尖閣諸島、中国では釣魚群島と呼ばれる島嶼群への中国による領海侵犯が2012年から発生していることで、同島嶼群は領有権を巡る日中間の「最も著しい地政学的引火点」となっている。

台湾のすぐ北に位置する同島嶼群では天然ガスなどの大量地下資源埋蔵の可能性が確認されており、現在日本が実効支配しているが、中国は同海域を歴史的領土の一部であるとして、第二次世界大戦後に日本が返還すべきであった植民地であると主張している。

リフ博士の報告書「China, Japan, and the East China Sea: Beijing’s ‘gray zone’ coercion and Tokyo’s response(仮訳:中国、日本、東シナ海:中国政府による「グレーゾーン」の強制的な主権主張と日本政府の対応)」によると、島嶼群(写真参照)の主権を獲得するために、中国政府は日本への圧力を強化している。

同報告書には、「領有権を主張しながらも、自衛隊(JSDF)および米軍との直接的な対立や劇的な関係険悪化のリスクを軽減するため、中国政府は中国人民解放軍ではなく主に中国海警局を派遣している。こうして中国は限界を超えない程度の強制力を行使することで、現状を変化させることを目的としていわゆる「グレーゾーン」に領有権問題が存在することを提示しているが、これを従来型の手段を用いて抑止することは困難である」と記されている。

領海侵犯に対応するため、日本政府はより迅速かつ柔軟な対応が可能となるように、海上自衛隊の部隊構成と姿勢を大幅に変更したと、同博士は著述している。

同海域の天然ガス鉱床を巡る潜在的な紛争に加えて、漁業権も争点となっている。日本漁業協同組合は島嶼群周辺における中国海警局の哨戒活動により、日本側が漁業に従事できないと不満を訴えている。日本防衛省が2019年9月に公表した防衛白書には、「(前略)中国は、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力を背景とした一方的な現状変更を試みるとともに、(中略)海空域において、軍事活動を拡大・活発化させている」と記されている。

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