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アナリスト等の見解:中国を警戒し、米国を奨励する「2019年ベトナム国防白書」

ヘッドライン | Jan 26, 2020:

FORUMスタッフ

アナリスト等によると、2019年11月、ベトナムは10年ぶりに国防白書を公表したが、この「2019年ベトナム国防白書」には南シナ海で攻撃的な行動を続ける中国に警告を発する内容が含まれている。

また、同白書には、米国がベトナムとの関係を強化する機会が提示されていると、アナリスト等は述べている。

ランド研究所のデレク・グロスマン(Derek Grossman)上級防衛アナリストとスタンフォード大学フーバー研究所の国家安全保障問題担当研究員であるクリストファー・シャーマン(Christopher Sharman)米国海軍大佐は、外交政策や国家安保問題に関する分析、解説、討論、マルチメディアコンテンツを伝えるオンラインプラットフォーム「ウォー・オン・ザ・ロックス(War on the Rocks)」に2019年12月下旬に掲載された記事で、「最新の同国防白書は、ベトナムにほぼ集中して安保脅威をもたらし、かつ複数の側面で交戦と均衡破壊の両方を絶えず試みる中国政府が南シナ海で今後も不適切な行動を継続する場合は、ベトナムは米国との防衛関係の強化を図る可能性があると、中国に対して過去最も明確な警告を発するものである」と解説している。

同記事には、「これは、同地域から強制力を排除して『自由で開かれた』状態に維持することを目指す米国政府のインド太平洋戦略にとって重要な意味合いを持つ内容である」と記されている。

ベトナム国防筆頭次官のグエン・チー・ヴィン(Nguyen Chi Vinh)上将は声明で、ベトナム国防省が発行した同白書には自国の自主独立および1998年、2004年、2009年の白書で強調された「3つのノー」政策への国家の取り組みが概説されていると発表している。

IHSのJDW(ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー)によると、ベトナムは何十年もの間、軍事同盟に参加しない、第三国に対抗するために他国と協力しない、外国軍の基地をベトナムに置かないという方針を提唱してきた。グエン上将が声明で発表したところでは、2019年国防白書では、新たに「4つ目のノー」として「他国との関係において武力の行使や威嚇を行わない」が追加された。

ベトナムは東南アジアの中でも非常に有能な軍隊を確立した国である。オンライン雑誌、ザ・ディプロマット(The Diplomat)の報道によると、継続的に国内総生産(GDP)の約2.36%を軍事支出に費やす同国の兵器輸入量は世界最大級である。

同上将がベトナム国営報道機関に語ったところでは、2019年国防白書には「兵器と軍事装備の構築と強化」と「国の経済発展に沿った」防衛予算の維持が優先事項として特定されている。

しかし、アナリスト等の主張によると、ベトナムの「3つのノー」には条件が付いている。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の上級アナリストであるフォン・リ・トゥ(Huong Le Thu)博士は、「ベトナムは自主独立の方針を堅持してはいるが、『国が攻撃を受けた場合は、その形態を問わず防衛措置を講じることができる』という重要な条件を強調している」と、2019年12月6日に発表されたフォーリン・ポリシー(Foreign Policy誌の記事の中で指摘している。

グロスマン上級防衛アナリストとランド研究所のズン・フィン(Dung Huynh)政策研究官助手は2019年1月19日付のザ・ディプロマットの記事で、「ベトナム政府が特定の防衛協力により利益がもたらされると判断した場合は、その協力体制を無理にでも『3つのノー』政策に適合させるか、またはその活動を比較的水面下で実行する方法を模索すると考えられる。南シナ海で中国と同等に競合することで、ベトナムは米国や志を同じくする他の諸国にかなり広範な自由裁量の権利を与えているように見える」と述べている。(写真:2019年1月6日、日本からベトナムにダイオキシン分析機器を供与する計画の合意書にハノイで署名したベトナム国防筆頭次官のグエン・チー・ヴィン上将(前方左)と梅田邦夫ベトナム駐箚特命全権大使(右))

フォーリン・ポリシー誌によると、特に同白書には、ベトナムは「海軍、沿岸警備隊、国境警備隊、国際機関の船舶がベトナムの港湾に礼儀寄港や一般的な寄港をすること、または修繕および物資や技術的な補給品の調達を目的として来港すること、あるいは国の災害避難の必要性に応じて港湾に立ち寄ることを歓迎する」と示されている。

フォン上級アナリストの記事には、「現在、中国とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は南シナ海の行動規範の策定について交渉中であるが、中国がASEANとの間の紛争管理機構に自国を含めることを主張した事例に見られるように、同白書におけるこの内容は、地域諸国と外部勢力の共同活動の制限を提案する主張の一部を直接覆すものである」という解釈が記されている。

グロスマン上級防衛アナリストとズン政策研究官助手の記事には、「特に中国が哨戒活動の強化、紛争海域の開拓と軍事化の継続、防空識別圏(ADIZ)の発表、天然資源と漁場に関する競合の激化を図るような場合は、ベトナムは『3つのノー』政策をより堅牢に実施することが期待される。とにかくベトナムは今後、体裁としては攻撃的ではなく防御的であると公に説明できるような形態の防衛協力を受け入れる可能性がある」と示されている。

グロスマン上級防衛アナリストとシャーマン海軍大佐が著述したウォー・オン・ザ・ロックスの記事によると、新たに多国間防衛協力に焦点を当てたベトナムは、ASEAN地域フォーラム(ARF)に全面的に参加し、地域安保と一般的な軍事演習を促進できる力を確立する可能性がある。

実際、ベトナム政府がASEANと他諸国の合同軍事活動への参加を同白書の附属書に含めたことは、同政府にとってこれが優先事項である可能性を示唆するものであると、同記事には記されている。拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)とASEAN地域フォーラムは、米国とベトナムの利益を促進することを目的として、米国がベトナムを始めとするASEAN加盟諸国との協力体制を強化できる理想的な機会となる可能性があると、同上級防衛アナリストと同海軍大佐は主張している。

また、同上級防衛アナリストと同海軍大佐が著述したザ・ディプロマットの記事には、合同演習といった形態の多国間活動は「当分の間は無理と思われるが、中国政府の悪行が継続される場合は不可能ではないかもしれない」と記されている。

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