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防衛装備製造ニーズを満たすために産業の現地化を図るフィリピン

ヘッドライン | Jan 13, 2020:

マンディープ・シン(Mandeep Singh)

フィリピン政府が軍隊の近代化を推進する中、同国の議員等は同取り組みにより主に自国の防衛産業に利益がもたらされることを保証するための措置を講じている。

フィリピン国防省(DND)によると、フィリピン軍が2012年に開始した15ヵ年近代化プログラムの費用は4兆円相当(400億米ドル)に達すると予測されており、これには航空機、無人車両、情報・監視システム、通信機器、個人用保護用具、兵器システムの購入が含まれる。

2019年11月、フィリピンのラルフレクト(Ralph Recto)上院議長代行は、「多額の設備購入を通じて地元産業に利益をもたらす必要がある」と述べている。

レクト上院議長代行の要望に沿って、議会委員会は利益の地元産業への分配を規定する法的枠組の制定を検討している。

2019年のフィリピン防衛産業開発法(PDIDA)案は、国内供給業者の発展を促進するインセンティブと規制を通じて、またこうした取り組みを監督して資金提供するために防衛技術研究と産業開発を担当する新しい次官事務所を設立することで、自国の防衛産業の自立性を強化することを目的とするものである。同上院議長代行は、「最初に実施するべき事柄は、地元で技術が利用できる場合は設備に現地製の部品を用いることを政策として規定することである」と述べている。

法案では、防衛能力開発において国内企業および原材料を含む現地の資源を優先することが規定されている。「地元で生産、製造、作成できない」場合に限り、外国から防衛関連商品を調達することになる。

法案に基づくと、外国の供給業者を使用する場合は、技術がフィリピンに移転されること、および各取引の一環として地元で雇用が創出されることを担当次官が確認する。さらに、比国防省が防衛関連入札で外国業者と地元業者の両方の入札を受け入れる場合は、外国業者の入札額が15%以上低額でない限り、地元入札業者が勝つという仕組みが法案で規定されている。

現地製の銃器、沿岸哨戒艇、軍隊輸送船、病院船、警察用船舶の品質を高く評価するレクト上院議長代行は、フィリピンの製造業者には自国の防衛ニーズを満たす能力があると固く信じている。

同上院議長代行はフィリピン中部に位置する州名を挙げ、「これらは世界最高級の造船業を誇るセブ州で建造できる」と話している(写真参照)。

ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領はフィリピン航空宇宙開発法人(PADC)の比運輸省から比国防省への移行を命じたことについて、防衛産業の現地化がその理由の1つであると表明している。2019年3月に発令された大統領令で、ドゥテルテ大統領は同国営企業を比国防省に移行した理由について、「迫り来る国内外の脅威に対処し、防衛装備に関する自国の自立性を達成し、そして近隣諸国からの技術移転を推進する必要があるため」と説明している。

ドゥルバ・ジャイシャンカル(Dhruva Jaishankar)アナリストが2019年8月にインドのブルッキングス研究所に提出した報告書には、防衛産業の現地化により国防政策全体が良好になると記されている。

同報告書では「政府は国の安全に対する最終的な責任を負う」ことが強調されており、「特に紛争により供給経路に混乱が生じた場合、兵器供給国から制裁が科される可能性、また軍隊から緊急命令が発せられる場合を考えると、現地の生産・技術力を用いて軍隊を装備する能力を備えることが非常に重要となる。防衛産業を発展させることで、競合他社に頼る可能性のある隣国にも装備を供給できるなど、他国にも戦略的影響力を与えることができる」と記されている。

マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。

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