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テロリストに携帯ミサイルを提供することで、ビルマの反乱を潜在的に促進する中国

FORUMスタッフ

2019年11月下旬の報道によると、ミャンマーとしても知られるビルマ(翻訳者注:日本政府はすでに日本語の呼称を「ミャンマー」と変更済み)の民族反乱軍が中華人民共和国(中国)製の携帯ミサイルを入手していたことが明らかとなった。

アジア・タイムズ・オンラインが報じたところでは、反乱軍が支配するシャン州北部の村落に隠蔽されていた相当量の兵器をビルマ軍が押収した2019年11月22日、ビルマにおける民族紛争の発火剤としての中国の「影の役割」が暴露された。発見された武器のほとんどが中国製であったためである。

ビルマの現地新聞「7デイ・デイリー(7 Day Daily)」紙のウェブサイトが伝えたところでは、ビルマ語で「Tatmadaw」と呼ばれるビルマ軍は、タアン民族解放軍(TNLA)がホーメイン(Ho Mein)村周辺に3ヵ所に分けて隠蔽していた「既成の概念を変える」中国製の携帯式地対空ミサイル(携帯式防空ミサイル)、TN-6、大型弾薬などの170個を超える武器を発見した。

バンコクに拠点を置くアンソニー・デイビス(Anthony Davis)安保アナリストが著述した2019年11月28日付けのアジア・タイムズ・オンラインの記事には、「11月22日に発生した押収事件の真の重要性は、押収武器の量や出所自体よりも、政府の国軍であるビルマ軍の敵対勢力として活発に活動を続ける反政府軍が、軍事的にも政治的にも既成の概念を変え得る兵器で構成される携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)を保持しているということが明確に確認された点にある」と記されている。

これで少なくともビルマ空軍が新たな脅威に直面することになり、その戦術を適応させる必要性が発生した。デイビス安保アナリストは、「別のレベルでは、反政府軍が簡単に持ち運べる携帯式防空ミサイルシステムを手にしたことで、特にラーショーやミッチーナー、さらにマンダレーなどの北部都市周辺だけでなく、さらに離れた西部のラカイン州の民間航空が曝される脅威に対する懸念が必然的に発生する」と記している。

軍隊による押収武器の保有声明を出したタアン民族解放軍は、反政府勢力が同様の兵器をさらに入手していることを示唆している。タアン民族解放軍の報道官、マイ・エイク・チョー(Mai Aik Kyaw)少佐は7デイ・デイリー紙に対して、「最近、当民族解放軍の一時拠点はビルマ軍から継続的に攻撃を受けていた。ビルマ軍は攻撃に空撃と大砲を用いている。当軍は一部の軍事設備を移動したが、すべてを運び出すことはできなかった。押収された武器は、移動が間に合わなかった分である」と述べている。

ミャンマー平和・安全研究所(MIPSS/Myanmar Institute of Peace and Security)の事務局長を務めるMin Zaw Oo(ミン・ゾー・ウー)博士とデイビス安保アナリストは、押収武器のほとんどが中国製であることを確認している。7デイ・デイリー紙に対して「押収された対空ミサイルも中国製である。モン・コー(Mong Ko)村で発生した戦闘において、ミャンマー軍の航空機を狙って同様のミサイルが使用されたことがあるが、航空機は撃墜されなかった。タアン民族解放軍はこのときもFN-6を使用していた」と述べたウー博士の説明によると、タアン民族解放軍は強固な武器供給ルートを確立しているが、堅牢な軍事拠点は未だ構築されていない。

タアン民族解放軍による対空兵器の正確な入手経路は不明である。アジア・タイムズ・オンラインの記事におけるデイビス安保アナリストの推測によると、これは中国が関連組織に課している他の反乱軍との武器共有禁止措置を解除したか、または関連組織が中国政府の指示に反して武器を譲渡したかのいずれかであると考えられる。

同アナリストは、「ビルマ軍に圧力をかけることで、同軍に進行中の攻撃作戦を停止させ、タアン民族解放軍およびミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)やアラカン軍(AA)などの他の北部反政府勢力で構成される北部同盟との早期停戦を導くための手段として、中国の国防部参謀本部軍事情報局の当局者が勝手に禁輸を解き、強力な中国の影響下にあるワ州連合軍(UWSA)に携帯式防空ミサイルシステムを横流しさせた可能性がある」と記している。

いずれにせよ、中国はこうした兵器をおそらくはワ州連合軍経由で、「ならずもの国家」を構築する恐れのある組織と非国家主体の手に渡すことで、地域で将来的にテロ攻撃や反乱が発生する可能性を促進したことになる。(写真:2019年8月、シャン州北部で14人の死者を出した民兵組織同盟軍の組織的攻撃により破壊された橋の上を歩くビルマ軍兵士等)

少なくとも2000年以来、中国は30年以上にわたり、ビルマ軍との停戦状態を維持している東アジア最大の軍事非国家主体「ワ州連合軍」に携帯式防空ミサイルシステムを提供してきた。同アナリストによると、中国は1970年代から1980年代にかけてワ州連合軍を支援してきたという長い歴史を持つ。

他にもビルマ軍はタアン民族解放軍から小火器を押収し、同地域に78ヵ所所在する同民族解放軍の拠点のうち41ヵ所を壊滅させたと7デイ・デイリー紙に語ったビルマ軍北東部司令官のアウン・ゾー(Aung Zaw)少将は、記者団に対して、今回のビルマ軍によるアジト襲撃は兵器に関する密告によるものと説明している。

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