報告書:南シナ海の法治を損なう中国の行為

報告書:南シナ海の法治を損なう中国の行為

FORUMスタッフ

ブルッキングス研究所が発表した2019年11月の報告書によると、南シナ海における中華人民共和国(中国)の攻撃的な行動が国際海洋法弱体化の一因となっている。

ケンブリッジ大学の上級研究員および国際戦略研究所(IISS)の準研究員を務め、アジア太平洋安全保障担当としてアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に参加するリン・クオック(Lynn Kuok)博士は、「国際法というものは安定を促進し、紛争リスクを最小限に抑えるために制定されている。世界諸国は同法で定義される範囲内に競合を留めることを望んでいるが、同法の弱体化により、世界諸国だけでなく中国にも害が及ぶ可能性がある」と述べている。クオック博士が著述したブルッキングス研究所の報告書の題名は「How China’s Actions in the South China Sea Undermine the Rule of Law(仮訳:南シナ海における中国の活動によりいかに法治が損なわれるか)」(https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2019/11/FP_20191118_china_scs_law_kuok.pdf)である。

同報告書には、沿岸国の排他的経済水域(EEZ)への侵入、軍事展開の強化、紛争海域における米国や他国の航行の自由を拒否する試みなど、領土・水域の領有権主張と機能の支配を追求する中国の企みが挙げられている。(写真:領有権紛争が発生している南シナ海の哨戒活動を終えて、米国海軍の航空母艦「カール・ヴィンソン(USS Carl Vinson)」に着陸する米国海軍のF/A-18戦闘機)

中国による「広大な国際水域を自国の領海または内水とする主張により、南シナ海における事故発生リスクが高まった」と、同博士は記している。

たとえば、2018年9月に英海軍の艦艇が航行の自由に関する権利を行使して、中国が定めた西沙諸島(パラセル諸島)のいわゆる違法の基線内を航行した際、中国は英海軍が「中国の主権を侵害した」と警告を発している。その後、2019年4月にフランス海軍のフリゲート艦が台湾海峡を航行した際も、中国は「中国の領海に違法侵入した」として抗議を申し立てている。

クオック博士は同報告書内に、「中国が口頭で警告を発しているうちはまだ良かった。しかし、最近の同国の行動は無謀であり、米国との間で合意された行動規則を中国人民解放軍海軍が遵守しないため、事件と紛争が発生するリスクが高まっている」と記している。

しかし、中国は法治を損なう行為を続けているが、規則の維持を推進する他の諸国の取り組みのほうが依然として優勢である。

「中国が南シナ海で優位に立っているとは言えない」と結論付けた同博士は、各国が海洋権と自由を引き続き主張し、中国の戦術に対抗することを推奨している。同博士はまた、米国が同盟・提携諸国と共に同地域で二国間・多国間の演習を継続的に実施することで、スカボロー礁に軍事施設を建設することにより深刻な影響がもたらされることを中国に知らしめることを奨励している。

同博士は、「南シナ海はそれだけを切り離して考えることはできない。東南アジア諸国が同地域に対する自国の立場をどのように主張するかは、より広範にわたる戦略的および経済的状況に依存する」と記している。

南シナ海における領土・水域の領有権紛争には、東沙諸島(プラタス諸島)、西沙諸島、マックルズフィールド堆、スカボロー礁、南沙諸島(スプラトリー諸島)などの地域が含まれる。

南シナ海に関しては、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムも中国の主張と重複する地域の領有権を訴えている。米国は南シナ海の領有権を主張こそしていないが、2019年11月に紛争海域に軍艦を2回も派遣するなど、同海において強力な存在感を提示している。

こうした米国の行為の継続を奨励するクオック博士は、止められぬ勢いを持つ国として中国の勢力を過大評価する意見を重視していない。

同博士は、「こうした見解は間違っているだけでなく、危険である。こうした姿勢はおそらく自己実現的なものである。中国はある程度の優位性を獲得してはいるが、これまでのところ、米国とその同盟国は海洋権と自由の主張を通じて、南シナ海全域の支配を企む中国政府を良好に押し返している。

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