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太平洋諸国の未来を脅かすトンガへの中国投資

FORUMスタッフ

アナリスト等によると、中国がトンガに数億円(数百万米ドル)に上る低利融資を提供することで、太平洋諸国に問題が発生する可能性がある。

AP通信が報じたところでは、南太平洋に浮かぶ170島超の島群からなるポリネシアの王国、トンガは、すでに中国の輸出入銀行から108億円相当(1億800万米ドル)の融資を受けている。これは同国の国内総生産の約25%に相当する額である。現在、中国は2006年の暴動により破壊されたヌクアロファ市内の大部分を再建するための融資を申し出ている。

駐豪米大使のアーサー・カルヴァハウス・ジュニア(Arthur Culvahouse Jr.)も警告を発している1人である。これは、カルヴァハウス・ジュニア大使が「ペイデイローン外交」と呼んでいるものだ。

同大使はAP通信に対して、「お金は魅力的で、もらうときは簡単だが、契約書は細字部分までしっかりと読む必要がある」と指摘している。

トンガは高くつく自然災害が発生しやすい国であり、中国による融資を返済する能力がほぼないに等しいと考えられることから、今回の「借金地獄」の罠によりトンガに大きな損害が発生する可能性があると指摘する者も存在する。たとえば、スリランカが中国の融資返済に行き詰ったとき、同国政府は中国にハンバントタ港の港湾運営権を貸し出すことを余儀なくされた。これにより、中国はインドに近い戦略的足場を獲得したことになる。

ここ数ヵ月の間、中国は太平洋島嶼国に自国の影響を拡大することに一層取り組んできた。オーストラリア、ニュージーランド、米国は個々の関係と集団的関係を強化・改善して、太平洋島嶼国に対してより透明性の高い提携関係を提供することで中国の野心に対抗している。

オーストラリア国立大学(ANU)国家安全保障カレッジ(NSC)を統括するローリー・メドカーフ(Rory Medcalf)教授はAP通信に対して、「南太平洋において中国が何を企んでいるのかは完全には明らかになっていない。中国が非常に活発に活動しており、その存在感を強めていることだけは確かである」と述べている。

しかし、戦略的な太平洋基地を確立することで、ここのところ強力な米国同盟国である日本、台湾、フィリピンの島々に干渉を続けている中国人民解放軍海軍は、太平洋進出のための安全な橋頭堡を獲得できると、同教授は推測している。

同教授がAP通信に語ったところでは、他に太平洋における中国の活動の動機として、アジア太平洋地域の漁業や鉱物、また他の天然資源の利用可能性の拡大、並びにトンガを含む一部の太平洋諸国による台湾の支持と認識の弱体化などが考えられる。国連に加盟している太平洋諸島はすべて国連総会での投票権を有していることから、中国は国連総会での投票数を稼ぐことを目的としている可能性があると主張するアナリスト等も存在する。

オーストラリアのシンクタンクであるローウィー研究所(Lowy Institute)の分析によると、2011年以降、中国は南太平洋地域を対象として約1,500億円(約15億米ドル)の援助と低利融資を実施している。オーストラリアを除けば、これは他のどの国よりも多額の支援である。将来的な誓約を含めると、この数値は6,000億円(60億米ドル)以上に膨れ上がると、AP通信は報じている。

AP通信によると、すでにトンガの島々では大部分の食料雑貨店が中国人移民により経営されており、輸入品が販売されている。トンガの住民は中国人が農業と建設業界にも進出してくることで、地元住民の生計を立てる選択肢が制限され、トンガ文化が希薄化することを心配している。

トンガでツーリストロッジを経営しているオラ・コロイ(Ola Koloi)氏がAP通信に語ったところでは、中国の存在感は非常に侵略的であり、トンガで販売されている商品の多くが中国製であることから、住民が購入できる商品も変わってきている。同氏の意見によると、トンガの全住民はこうした中国による融資を懸念する必要がある。

同氏は「自分がいつか中国人になってしまうような気がする」と、AP通信に話している。

(写真:2018年3月1日に北京の人民大会堂で開催された調印式の後、中国の習近平(Xi Jinping)主席と握手を交わすトンガ国王のトゥポウ6世王(左))

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