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ウイグル人弾圧を正当化するために大量殺戮事件を指摘する中国

FORUMスタッフ

数千人ものウイグル人イスラム教徒を強制収容所に送り込み、未拘束のウイグル人を監視する大規模な監視活動を開始した中国は最近、その宗教的少数民族に対する厳格な弾圧を正当化する手段として、ニュージーランドで発生したイスラム教徒大量殺戮事件を指摘するという異例の行動に出た。

新疆ウイグル自治区の政府情報局はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、2019年3月にニュージーランドのクライストチャーチで50人が銃撃により死亡した事件を考えると、中国は地域に300ヵ所以上存在するモスク(イスラム礼拝所)にビデオ監視プログラムを配置する必要があると語っている。

中国政府当局は同紙に対して、「最近、多くの無実の人々が死傷したニュージーランドの銃撃事件は強い警告である」とし、「同政策はモスクの安保を改善し、イスラム教徒共同体が通常の秩序ある宗教活動を行う能力を保護することを目的としている」と説明している。

しかし、山岳地帯の新疆地域に住むウイグル人や国連監視団にとっては、同政府の政策はどう考えても「保護」には見えない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は旧居住者と現居住者の声、衛星画像、そして自社独自の報道内容を引き合いに出すことで、同政府が開始した再教育プログラムによりウイグル地区が破壊され、ウイグル地区における事業が閉鎖に追い込まれていることを実証している。

同紙が報道したところでは、中華人民共和国人民警察はイスラム教への信仰の深さを判断基準としてウイグル人の「安全度」と「危険度」を測定しているため、家宅捜査の際に問題が発生しないように、住民等はコーランを隠すか譲渡している。

過度の取り締まりと厳格な宗教規制により当局との対立が発生しているとウイグル人亡命者が主張する一方で、中国共産党指導者等は民族的緊張と散発的な暴力的攻撃が過激なイスラム教弾圧の要因であるとして異論を唱えている。

これは何ヵ月にもわたって続いている論争である。2018年8月、国連自由権規約人権委員会は、100万人を超すウイグル人が新疆ウイグル自治区の過激派防止センターに拘留されていることを示す「信頼性の高い多くの報告」を入手したと発表している。人種差別撤廃委員会(CERD)のゲイ・マクドゥーガル(Gay McDougall)副議長は、「宗教的過激主義への対抗と社会の安定維持の名の下、[中国] は新疆ウイグル自治区を謎に包まれた大規模収容所のような存在に変えてしまった」ことを懸念していると話した。

ウイグル地区では離散した家族もあれば、蒸発した家族もあると、同委員会は報告している。マクドゥーガル副議長は、「法による適正手続を受ける全被収容者の権利が侵害されている」と付け加えている。(写真:2019年3月、トルコのイスタンブールに所在するモスクの外で中国の措置に抗議するウイグル人イスラム教徒)

中国の拘禁・監視プログラムが引き続き大々的に報道される中、ニュージーランドの銃撃事件の容疑者が書いた文書の審査により同容疑者の中国政府への親近感が明らかになったことが報道機関の注目を集めている。28歳のオーストラリア人、ブレントン・タラント(Brenton Tarrant)容疑者は、特に中国が「多様化されていない国家」であることで、同国政府の価値観に共鳴すると述べている。

カナダ人作家のイーサン・ルー(Ethan Lou)は英国のオンライン新聞、インデペンデント紙に寄稿した記事で、「大量殺人の容疑者から賞賛を受けるということは、明らかに何かが間違っていると思ったほうがよい。それゆえ、少数派のウイグル人イスラム教徒の扱い方について非難の対象となっているこのアジアの国は、これを警告として捉えるべきである」と述べている。

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