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オーストラリア当局がサイバー戦争を解禁

AP通信社

2019年3月下旬、オーストラリアがシリアのイスラム国家組織との電子戦争に積極的に参加し、軍事作戦中の同組織の通信品質を劣化させることで、過激派集団への参加を試みる人々を積極的に阻止したと、オーストラリアにおけるトップのサイバーセキュリティ対策組織が発表した。

これは、国営のオーストラリア通信電子局(ASD)のマイク・バージェス長官が、同機関の成果について初めて公式発表を行ったものである。

バージェス長官はサイバーセキュリティ対策を調整する同機関の支援により、オーストラリア国防軍とその同盟国がイスラム国家との重大な戦いで勝利を掴んだ仕組みを例を挙げて説明している。

オーストラリアの戦略的シンクタンク、ローウィー研究所(Lowy Institute)で行われた発表で、同長官は、「まるで連合軍がテロリスト陣地への攻撃態勢に入るように、当国の攻撃担当サイバー隊はオーストラリアでキーボードに向かってその標的を絞り、サイバー空間に向かって電子攻撃を仕掛けた」と説明している。

同長官はイスラム国家の通信は「わずか数秒で劣化した」と述べている。

「テロ組織の指導者等はインターネットに接続できず、互いに通信することができなくなった。テロリスト等は混乱状態に陥り、その地点から去らざるを得なくなった。この成果を達成できたのは、一部分において戦闘地点から約1万1,000キロメートルも離れた場所でキーボードに向かっていた若い男女のお陰である」

同長官によると、同作戦ではASDと軍関係者等が数週間をかけて計画を策定している。サイバー戦争と軍関係者等の動きが密接に同期されたという点で、これは前代未聞の事例である。

「これは大成功を収めた。信頼できる通信手段がなければ、敵はテロ組織を管理する手段がなくなる。そして、連合軍が領土を奪い返したのである」と、同長官は比喩を用いて説明している。

同長官によると、ASDはイスラム国組織をサーバーから締め出してその宣伝材料を破壊し、「憎しみを広め、新しい参加者を勧誘する」能力を破壊することで、同組織の「メディアマシン」に重大な損害を与えている。

世界でもこうした作戦が詳細に明かされることは稀な事例であるが、同長官はより多くの人材を募ることを目的として、その発表でASDが果たした任務を全体にわたって詳細に説明している。

同長官は、「ASDの狙いはテロ組織の通信機能を完全に破壊することではなく、通信が重大となる瞬間に不能となるように操作することである。またはテロ組織が期待している通りには動作しなくなる、あるいはテロ組織が必要な時にその情報やアカウントに正確にアクセスできなくなる状態にすることである」と述べている。

また、同長官によると、数学や生物学からマーケティングに至るまで、異なる学歴を持ち、さまざまな分野で活躍している人材が同作戦に参加している。こうした人材がオーストラリア政府のコンピュータに向かい、シリアの戦場でイスラム国家を攻撃したのである。

急進主義に傾倒し、テロ組織への参加を試みている遠隔地の男性に関する情報をASDが掴んだ後、また別の作戦が開始されたと、同長官は説明している。科学の学位を持つキャンベラ在住の若い女性を筆頭に、言語、文化、行動の専門家等で構成されたチームが結成された。同女性リーダーが中東の男性テロリストを装うというシナリオである。

「ASDはインターネット経由で同男性を追跡して連絡を取ることに成功した。当チームのリーダーが一連のオンライン会話を通して、徐々に同男性の信頼を勝ち取った」と、同長官は説明している。

続けて、「同男性が本物のテロリストからの連絡を受信しないように、リーダーは同男性の通信モードと方法を変更させた。最終的に、リーダーはこのテロリスト志願者のジハードの目的を断念させ、別の国に移動することを納得させた。そこで、同男性が他者や自身にとって危険な行動を取らないように、ASDの提携機関が同男性を保護することになっている」と説明している。

同長官によると、同作戦を指揮したリーダーは、海外で実施されるオーストラリアの作戦またはオーストラリアを標的としたサイバー攻撃防止の支援に取り組む他多くの人材のように「かなり普通の経歴」を持つ女性である。

同長官はまた、「同女性がまだ大学で科学を勉強していた頃、自身がオンラインでテロリストを装い、オーストラリアを世界的脅威から守る作戦に参加する日が来ようとは夢にも思わなかったであろう」と感想を述べている。

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