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17年を経て、南シナ海紛争に関する最初の協定締結を目指す中国と東南アジア諸国

ボイス・オブ・アメリカ

アジアで最も広範囲にわたる領有権紛争が発生してから17年。諸国の間に存在する海洋の領有権を長年争ってきた中国と東南アジア諸国が、この数ヵ月の間に海洋に関する行動規範策定の第一段階を完了することを目指して尽力している。

アジアのある学者によると、おそらくASEAN加盟10ヵ国と中国はこれまで、規範に関してどの国にどの島の領有権があるかといったような厄介な問題点を排除できるだけ十分な議論を行っており、201911月に開催されるASEAN首脳会議までに1回目の審議ができる状態が整うと考えられる。

行動規範を確立することで、政府にあからさまな優先順位を与えることなく、航行上の災難を回避し、船舶の交通量の多い広大な南シナ海の事故問題を解決することができる。201969日にフィリピンと中国の船舶が衝突した事故について、中国に対する地域的圧力が高まっていることで、行動規範の締結に向けての勢いがまた強まる結果となった。

シンガポール国立大学・公共政策大学院のエドゥアルド・アーレル(Eduardo Araral)准教授は、「ASEAN諸国と中国が行動宣言を発表した2002年から約17年を経ている。それゆえ、議案が可決されれば、これは非常に大きなマイルストーンと言える」と述べている。

アーレル准教授はまた、「首脳陣が11月に再び結集するときにはもっと勢いが付いていると考えられる」とし、「ASEAN首脳陣が同課題を議題の上位に据えていることから、おそらくこれが再び議題に上ることになると思われる」と語っている。

20196月下旬にバンコクで開催されたASEAN首脳会議の議長声明案では、より強力な「協力体制」および今年中に第一読会が行われる可能性が指摘されている。

同声明は、「ASEAN諸国と中国の継続的な協力体制の改善を温かく受け入れ、相互に合意した期限内での効果的かつ実質的な南シナ海行動規範の早期締結に向けて実質的な交渉が進展していることを喜ばしく感じる」とし、「今年中に交渉議案の第一読会を終了するための努力を歓迎する」と述べている。

かつては行動規範に反対することを恐れていた中国主席は、2018年の時点で2021年までに行動規範を締結できると推定しているが、この3月、中国の王毅(Wang Yi)外相より中国国営報道機関を通じて前倒しを求める発表があった。

シンガポールに所在する東南アジア研究所(ISEAS Yusof Ishak Institute)の研究員、トゥムサック・チャルムパラーヌパープ(Termsak Chalermpalanupap)博士は、「先に中国主席は3年間の猶予を求めているが、今回の王毅外相の発表によれば3年よりも早く実施できるようである。自身もこの意見に同意する」と述べている。

201969日、中国とフィリピンの船舶の衝突によりフィリピン人22人が乗った漁船が沈没し、中国船が救助を行わずにそのまま去るという事態が発生した。これにより、同事故に関する共同調査が実施された。

ある海軍報道官は中国船がフィリピン漁船を故意に攻撃した可能性があると述べている。2014年には中国の石油掘削装置を巡り、ベトナム船と中国船が衝突するという事故が発生している。ASEANと中国間の対話進行役を担うドゥテルテ比政権の報道官は、行動規範プロセスの動きが遅すぎると批判している。(写真:中国政府による継続的な南シナ海埋め立て工事に抗議するために、マニラの中国領事館前で行われたデモでプラカードを掲げる抗議者)

2019年初旬、フィリピンが実効支配する南シナ海の島、パグアサ島付近を何百隻にも上る中国船が航行したことで、さらに諸国の警戒心が高まった。

南シナ海については、ASEAN加盟国のブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムが350万平方キロの海洋の全部または一部の領有権を主張しており、中国と台湾はほぼ全域の主権を主張している。領有権を主張する諸国は同水域を漁業や船路、そして埋蔵される化石燃料を理由として高く評価している。

同水域に人工島を建設して軍事化を続けてきた中国は、2010年以来他国の大きな不安を掻き立てている。

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