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韓国の新型コロナウイルス対策における鍵:民間人の準備態勢と軍隊の支援

Felix Kim(フェリックス・キム)

2020年3月上旬、韓国は新型コロナウイルスのアウトブレイクに襲われた。わずか2週間の間に、感染症例数が約800%となる数千件に急増し、死者が発生し始めた。

しかし、韓国政府の動きは迅速であった。集会を中止し、公共の場を消毒した。また、検査、隔離、感染経路の追跡を次々と包括的に実施した。2ヵ月後、新規感染者数の推移が連日で低い水準となったことで、韓国当局はウイルス封じ込めに成功したと発表している。

人口が5,160万人にも上る同国が新型コロナウイルス感染拡大を食い止めることができたのはなぜなのか?

ランド研究所の上級国際・国防研究員であるブルース・ベネット(Bruce Bennett)博士の見解では、とりわけ同国の災害演習や軍事訓練、また法律や文化的規範が隔離・予防措置を促進する要因となった。

朝鮮半島問題について広範にわたる著書を発表しているベネット博士はFORUMに対して、「対応能力は問題を理解して認識することから始まる」と説明している。韓国人は「自国が[北朝鮮による]化学兵器と生物兵器、並びに核兵器の脅威に直面していることを認識している」のである。

韓国の軍隊と民間人が新型コロナウイルス感染症流行の危機に対応する上で、この認識が功を奏したと、同博士は述べている。疾病管理本部(KCDC)が関与する年次訓練には対生物戦の訓練が含まれている。

同博士は、「今回のパンデミックのような事態を克服するという点で、疾病管理本部の役割は非常に明確である。つまり、事態を診断して影響を受けている領域を特定することにある」とし、「疾患を速やかに理解して管理できるように国民が訓練を受けているという事実は、こうした事態で明らかに有益に働く」と説明している。

ウイルス封じ込めに関する国内法も役に立ったと、同博士は付け加えている。

疾病管理本部によると、国民の症状や動きを監視するためにスマートフォンアプリの使用が定められ、隔離規制に違反した者は監視装置の着用が義務付けられるだけでなく、多額の罰金が科される可能性もある。

同博士はまた、何十年にもわたる脅威認識から築かれた韓国の文化的態度により、政府が課した社会距離拡大戦略や隔離措置に関する規制を国民は容易に受け入れることができたと述べている。

疾病管理本部の発表では、2020年5月11日現在、韓国で確認されている新型コロナウイルス感染症例数は約1万900件、死者数は約250人である。

同博士の説明によると、同国のウイルス対策においては熟練した大規模な大韓民国国軍が中心的な役割を果たしている。大韓民国国軍の兵士の約3分の2は約2年間の兵役義務により入隊した隊員で、残りが士官と下士官、および他の特技兵となる。

ウイルス被害が発生した地域では、早期に派遣された兵士等が保護マスクや防御服の使用、公共の場の消毒、物資の配布について民間人に訓練を施している。(写真:2020年3月、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、ソウルのバスターミナルの消毒を実施する隊員等に指示を与える大韓民国国軍兵士)

ベネット博士は、「韓国では大部分の若年男性が入隊する。除隊後も予備役として兵役義務は続くため、年間にある程度の軍事訓練を受ける必要がある。これにより、除隊後も軍隊の手順の多くに関する十分な知識や技巧が維持されるため、軍隊経験者は今回のような事態で保護がいかに重要であるかを速やかに理解することができる。そのため、全体的な対応において大韓民国国軍は優れた資源となるのである」と話している。

フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

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