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軍事拠点を建設する中国:カンボジア政府は疑惑を否定

ヘッドライン | Jan 25, 2020:

FORUMスタッフ

中華人民共和国(中国)がカンボジアに海軍基地および空軍機使用に耐え得る滑走路を建設しているという証拠が続々と上がっているにも関わらず、カンボジア当局は継続的にこの疑惑を否定している。

現在、カンボジアのリアム海軍基地から65キロ北西にあるダラサコルに中国企業が大規模空港を建設中である。複数の報告によると、中国民間企業が99年の賃貸契約で同空港を建設している。

「なぜ中国はジャングルのど真ん中に滑走路を建設していると思うか?」とニューヨーク・タイムズ紙で疑問を呈したロサンゼルスの政治学者であるソーパール・イアー(Sophal Ear)博士は、「これにより中国は地域全体に中国人民解放軍空軍の力を投じることができるようになるため、状況が一変する」と述べている。

工事が進む空港の3,200メートルの滑走路は、エアバスA380などの超大型旅客機でも十分に離着陸できる。日経アジアンレビューのウェブサイトによると、この滑走路はプノンペン国際空港の3,000メートル滑走路や人気の観光地であるシェムリアップ国際空港の2,500メートル滑走路よりも長い。

衛星画像を見ると、同滑走路は軍用機、特に戦闘機による迅速な離着陸に使用できるような特別な設計になっていると考えられるが、空港を建設している建設会社は純粋な観光目的であると主張している。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えたところでは、リアム海軍基地に中国が新たな桟橋を2ヵ所建設することに、カンボジア政府がひそかに合意していた可能性がある。合意の素案によると、1ヵ所は中国人民解放軍海軍、他方はカンボジアが使用することを計画しているようである。同紙によると、桟橋の中国側使用区域では中国の人員が武器やカンボジア旅券(パスポート)を携行できる一方で、広さが77ヘクタールある同基地の中国側区域である25ヘクタールの敷地にカンボジア人職員が進入する場合には中国の許可が必要だという。(写真:2019年7月、政府が組織したメディアツアー中、シアヌークビルのリアム海軍基地に向かってジャーナリスト等と共に歩くカンボジア海軍人員)

空港と海軍基地の運用により、中国は南シナ海の領有権においてより有利な立場を得ることができる。また、中国が東南アジアの米国同盟国に圧力をかけ、マラッカ海峡への影響力を拡大することも可能になる。

香港を拠点とする日刊新聞であるアジア・タイムズ・オンラインの記事によると、中国は2017年からカンボジアに対して海軍基地に関するロビー活動を行っている。同記事には、基地は中国人民解放軍海軍のフリゲート艦や駆逐艦などの艦船が十分に寄港できる設備になると記されている。

ロイター通信が報じたところでは、2018年11月、カンボジアのフン・セン(Hun Sen)首相は国内にいかなる外国軍の基地設置も認めないと述べているが、中国はフン・セン政権の最も強力な地域同盟国であり、中国の一帯一路インフラ構想の一環として、中国はカンボジアに数千億円相当(数十億米ドル)に上る開発支援と融資を提供している。

2013年、習近平(Xi Jinping)中国主席は自国の影響力と文化を拡大する手段として、アフリカ、アジア、欧州、中東を結ぶ大規模な陸路と海路を構築する政策を発表した。同政策については、「借金漬け外交」を用いる同プロジェクトからは、多くの場合、中国側の財政的・戦略的利益しか生まれないと非難の声が上がっている。

東アフリカのジブチに初の海外軍事基地を開設した2017年以来、中国は世界的な軍事的影響力の拡大を図っている。同基地は当初「物流施設」と捉えられていた。中国はまた、南シナ海に高度に軍事化された7つの人工島を建設しており、少なくともそのうちの3島には滑走路が設置されている。

アジア地域において不審な経済的動機で中国が関与している国はカンボジアだけではない。デジタルニュースプラットフォーム「ユーラシアン・タイムズ(EurAsian Times)」によると、グワーダルの港湾などのプロジェクト建設費として、パキスタンは中国に対して少なくとも1兆円相当(100億米ドル)の負債を負っている。ある米国当局者の言葉を借りれば、中国は「略奪的経済学」を用いることで、世界的な影響力拡大を狙っている。

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