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新たな報告書により発覚した事実:中国共産党が軍事力増強を継続

FORUMスタッフ

2019年も引き続き中国共産党(CCPが年間軍事費を増額していたことが新たな調査により判明したことで、インド太平洋を中心とする地域への中国共産党の潜在的な脅迫行為と干渉戦術に対する国際社会の懸念が高まっている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が20204月に発表した報告書によると、中国共産党の2019年度軍事支出は2018年度比5.1%増の261,000億円相当(2,610億米ドル)に達している。つまり、中国共産党による軍隊や兵器などの軍事費への支出は25年連続して増加していることになる。

ストックホルム国際平和研究所の報告書によると、1990年代半ば以降、中国人民解放軍(PLA)の軍事費は約10倍に増加している。(写真:中華人民共和国(中国)建国70周年を記念して2019101日に北京の天安門広場で開催された軍事パレードで中国共産党が披露した核搭載型大陸間弾道ミサイル「DF-41」)

専門家等の見解では、中国人民解放軍の軍事拡大は地域の安定の弱体化を目的とする一連の戦術の一端である。中国共産党は南シナ海の岩礁を埋め立てて建設した人工島にミサイルシステムを含む軍事設備を配置するなどの扇動的な行為を続けている。同海域で独自の領有権を主張するASEAN(東南アジア諸国連合)加盟諸国は、この重要な輸送経路に対する中国の主張に異議を唱えている。

米インド太平洋軍司令官のフィリップ・S・デービッドソン(Philip S. Davidson) 海軍大将は2020年2月にオーストラリアのシドニーで行った講演で、「中国共産党は世界秩序を変え、国際法よりも中国の国家権力が重要となる新世界を創造しようとしている。つまり『強者が我が物顔で横行し、弱者が我慢する体制』である」と語っている。

ストックホルム国際平和研究所の報告書によると、190兆円相当(19,000億米ドル)に達すると推定される世界の2019年度軍事支出を高い順に並べると、米国(73兆円2,000億円相当/7,320億米ドル)、中国、インド(71,100億円相当/711億米ドル)、ロシア(65,100億円相当/651億米ドル)、サウジアラビア(61,800億円相当/618億米ドル)となる。アジア2ヵ国が支出上位3ヵ国に入ったのはこれが初めてで、研究者等の見解では、中印対立の激化が支出増加の要因となっている。

ストックホルム国際平和研究所が世界の軍事費動向をまとめた「Trends in World Military Expenditure, 2019(仮訳:2019年の世界軍事支出の動向)」に関する発表時に、同研究所のナン・ティアン(Nan Tian)研究者は、「世界の2019年度軍事支出が2010年度比7.2%増となった事実は、近年軍事支出増加が加速している傾向を示すものである」と述べている。

20201月に同研究所が発表した新たな調査を補完するこの報告書は、中国が米国に次ぐ世界第2位の兵器生産国であることを示唆するものである。

観測筋によると、この2019年度軍事費がしばらくの間最高基準として留まることになりそうである。新型コロナウイルス感染症パンデミックが進行する中、人命と生計の面で発生した多大なコストにより諸国の経済成長が妨げられ、各国政府により長期的な緊縮措置が講じられると考えられる。 

ティアン研究者は、「この支出額は2007年から2008年にかけて発生した世界金融危機以来の最高水準に達しており、おそらくこれが支出の頂点になると思われる」と話している。 

ヘリテージ財団のデービス安全保障・外交政策研究所(Davis Institute for National Security and Foreign Policy)で防衛予算を担当するフレデリコ・バルテルス(Frederico Bartels)政策アナリストは、中国共産党は実際の軍事予算をかなり低めに公表しており、データ歪曲や中国国内における報告の不透明性により正確な金額が隠されている可能性が高いとする見解を示している。 

2020年3月にニュース配信サイト「ディフェンス・ワン(Defense One)」に掲載された記事の中で、バルテルス政策アナリストは、「中国政府は今も辻褄を合わせるためにデータを操作している。防衛予算に関して同政府は長年にわたりデータを省略して少なめに提示することで、中国人民解放軍の脅迫的なイメージを払拭しようとしている」と記している。

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