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提携関係を通じて海上安保向上を目指すシンポジウム

Felix Kimフェリックス・キム

2019年6月、海上安保への脅威に対抗する手段を協議するため、フィリピンにインド太平洋地域の海軍士官、科学者、法律専門家が一同に会した。

2019年6月14日にマニラで開催された2019年海上安全保障シンポジウム(Maritime Security Symposium/MSS19)は、太平洋諸国の海軍将官が参加する隔年会議である西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)を2020年に主催するフィリピンのウォーミングアップ的な役目を果たしている。

フィリピン海軍のルーマー・P・ベルナベ(Loumer P. Bernabe)参謀長(写真参照)による開会の辞に続き、5人の基調講演者が海上安保、海洋統治における海軍力、南シナ海における海上民兵と「グレイゾーン」問題、および海洋保護区の管理における協力体制などの題目に関する講演を行った。

パネルディスカッションでは、超国家的犯罪や資源の枯渇、そして海洋の酸性化が取り上げられた。シンガポールに所在する南洋理工大学(NTU)S・ラジャラトナム国際学大学院(RSIS)の研究員である基調講演者のコリン・コー・スウィー・リーン(Collin Koh Swee Lean)博士はFORUMに対して、こうした問題に立ち向かうためには、同地域の諸国が自国の海軍、具体的には沿岸警備隊を強化かつ近代化する必要があると述べている。リーン博士は自身がシンポジウムで提案した他2つの事項について説明している。

同博士は、「言うまでもなく、第一に地方自治体間で実用的な海上安保協力体制を推進する必要がある」とし、「第二として、とりわけ同地域の海洋環境と生態系に関する知識の深化を促進し、違法漁業や海洋プラスチック廃棄物汚染などの長期的な脅威から海洋環境を保護することが挙げられる。こうすることで、次段階の新たなイニシアチブ計画をより良好かつ容易に策定することができる」と述べている。

同シンポジウムで他の海上安保問題として取り上げられたグレーゾーン問題については、同博士は「海洋における強要手段だけなく、非軍事的かつ経済的な手段も含め、被害者に対して既成事実を作り上げるあらゆる行為を含む」活動について懸念を表明している。

2019年6月15日にロイター通信が報じたところでは、フィリピン最高裁判所のアントニオ・カルピオ(Antonio Carpio)判事は最近発生した中国の大型船によるフィリピン漁船への体当たりを「グレイゾーン攻撃」と表現している。

環境に関する提言は、フィリピン海軍が「海洋資源の過剰探査と搾取を防止するための世界海洋の持続可能かつ生態系重視の管理」と表現した「ブルーエコノミー」の範疇に含まれる。

同博士によれば、海軍は海洋ガバナンスにおいて、漁業保護と「海洋保護区の安保のための海洋状況把握(MDA)に必要な情報提供」を含む「警察としての役割」を担う。

フィリピン海軍の報道官、ジョナサン・ザタ(Jonathan Zata)大佐は、地域海洋ガバナンスについて、国家レベルおよび地域レベルでの分野横断的な協力体制の必要性を強調している。

ザタ大佐は、「同シンポジウムは、政府機関と非政府機関の両方が海上安保において同盟を結び、地域の海軍が実践における支柱としての役割を果たす関係者間の協調的機構としての地域海洋ガバナンスの可能性を示すことで、次回の西太平洋海軍シンポジウムの基礎を築くものである」と説明している。

分野横断的な協力体制に焦点を当てた基調講演を行ったフィリピン大学海洋科学研究所(UP MSI)のデオ・フローレンス・L・オンダ(Deo Florence L. Onda)博士は、同研究所の科学的調査活動で協力者としてフィリピン海軍が果たした重要な役割を強調している。

リーン博士は、「地域海洋ガバナンスとは、法治に基づく体制下で、さまざまな国民国家と非国家組織による平和的利用を推進する地方海洋管理と表現できる。違法漁業や海洋プラスチック廃棄物汚染、そして秩序を乱し得る強制的な海軍力の使用など、同地域の海洋領域において関連性の高い課題が発生しているため、これについて協議することが重要となる」と締めくくった。

フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

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