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報告書著者からの警告:ファーウェイ社の「公共安全」ソリューションは顧客にとって不確実

FORUMスタッフ

新たな報告書によると、中国の大手通信会社がシステムの有効性を誇張表現することで顧客にデジタル監視プログラムの導入を勧誘している。しかし、これにより、顧客は管理不能な債務を負う羽目に陥る可能性がある。

ファーウェイ(Huawei Technologies Co. Ltd.)社は「公共安全」ソリューションとして、グローバルネットワークで顔認識技術、自動車ナンバー自動読取技術、ソーシャルメディア監視などの監視機能を販売している。戦略国際問題研究所(CSIS)が52ヵ国における73件の「公共安全」プロジェクト契約を検討したところ、ファーウェイ社が宣伝資料で主張する犯罪減少率が公開データと矛盾していることが判明した。(写真:中国・深センのファーウェイ社構内に設置されたテレビモニターで自社の顔認識と人工知能技術を宣伝する同社)

2019年11月4日に発表された報告書では、ファーウェイ社の公共安全ソリューションの利点ついては「検証が困難で、場合によっては誇張されている可能性がある」と、戦略国際問題研究所の専門家が述べている。ファーウェイ社のあるプレゼンテーションでは、ある都市で暴力犯罪が15%減少、事件処理率が45%増加、緊急対応時間が10分から4.5分に短縮、市民満足度が60.2%から98.3%に増加したと謳われているが、「もちろん、上記の主張は検証できない」と報告書には記されている。

また、上記の主張は公表犯罪統計とも矛盾している。ファーウェイ社の宣伝によると、監視システムを設置したケニアのある地域における2015年の犯罪率は前年比46%減となっている。ケニア国家警察の報告では、2015年にナイロビの犯罪率はわずかに減少し、モンバサではわずかに増加している。両都市とも2014年にファーウェイ社の機器が設置されている。また、ナイロビにおける2017年の犯罪率は、機器が設置される以前の率よりも増加したことが確認されている。

ブルームバーグビジネスウィークによる2019年11月の報告でも、同様の差異が見られる。パキスタンのイスラマバードに所在する緊急指令室には、1,950台の監視カメラの映像を映し出す72台のスクリーンを備えたビデオウォールが設置されている。同紙によると、約100億円(約1億米ドル)をかけたファーウェイ社の公共安全プロジェクトは2016年に完了している。

パキスタン国家警察が発表したところでは、監視が強化されたにも関わらず、2018年には強盗、拉致、殺人事件すべてが前年よりも増加し、犯罪総数は33%増となった。立法委員会の説明によると、考えられる理由の1つとして、半数のカメラが故障していたことが挙げられる。

戦略国際問題研究所の報告書では、ファーウェイ社の公共安全プロジェクトの顧客の約60%がインド太平洋地域とアフリカの発展途上国で占められていることから、設置と保全のコストに関する懸念が指摘されている。同報告書には、「ファーウェイ社の機器を導入した後に交換費用が高額になると、国が立ち往生する可能性がある」と記されている。

中国の権威主義哲学の魔の手が伸びる可能性を指摘する同報告書には、ファーウェイ社の公共安全プロジェクトの契約先の71%が、米国に拠点を置くシンクタンク、フリーダム・ハウス(Freedom House)により人権が「ある程度尊重されている」(44%)および「尊重されていない」(27%)と評価された国に所在していることが示されている。

同報告書の著者の1人の意見によると、監視技術に伴うプライバシーの侵害および疑問の余地がある投資利益率を考慮し、今後契約を検討している顧客は警戒を高める必要がある。同報告書の共著者である戦略国際問題研究所のジョナサン・ヒルマン(Jonathan Hillman)上級研究員は、「こうしたシステムによるプライバシー侵害とかかる費用を容認するのであれば、契約通りの安全と安保が確保されているかどうかを追跡するために、政府と市民は公共監視体制を設置することを強く要請するべきである」と述べている。

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