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人工知能を活用して救助活動を改善するオーストラリア

トム・アブケ(Tom Abke

オーストラリア空軍(RAAF)は人工知能(AI)の力を利用して、地震、津波、洪水、熱帯低気圧などにより年平均4万人以上の犠牲者が発生する同地域の捜索救難(SAR)機能を強化している。

オーストラリア空軍が掲げる「ジェリコプラン(Plan Jericho)」の人工知能開発を率いるマイケル・ガン(Michael Gan)中佐は、オーストラリア国防省のニュースリリースで、「低コストの即興捜索救難機能として活用できる無人航空機など、あらゆる航空機や他の防衛基盤を提供することが当軍の構想である」と述べている。2015年に立ち上げられたジェリコプランは、技術的に世界最高級の空軍の構築を目指す豪空軍の10年計画である。

ガン中佐が説明したところでは、「AI-Search」と命名されたプロジェクトには、「既存の視覚探索手法を補完することを目的とした機械学習アルゴリズムと人工知能センサーの訓練」が含まれる。

発表によると、AI-Searchの初実験が成功裏に実施されたのは2019年10月のことで、豪空軍のC-27Jスパルタン軍用輸送機による低空通過で、海上の浮遊物の探索を行った(写真参照)。AI-Search隊が乗り込んだ同輸送機にセンサーを積み込み、タスマニア州のタマーリバー上空を飛行して行われた実験では、システムによりさまざまないかだや救命ボート、安全装置が特定された。

2020年3月にオーストラリアのクイーンズランド州ストラドブローク島付近で実施された2回目の実験では、AI-Search隊は広大な海域における複数の小さな目的物の検知に成功している。

センサー機能の強化により捜索救難任務を改善することを目的するAI-Searchは、航空戦闘軍団の長官を務める豪空軍のダレン・ゴールディ(Darren Goldie)准将の提唱により開始されたプログラムである。最終的にジェリコプランの資源と豪空軍航空機動軍団の第35飛行隊、豪海軍の戦争革新部門(Warfare Innovation Branch)、タスマニア大学内のオーストラリア海事大学(AMC)の資源が合体されることになった。

AI-Searchのアルゴリズムを開発した戦争革新部門のハリー・ハバート(Harry Hubbert)大尉はニュースリリースで、「[国防省内では]人工知能についてさまざまな意見があるが、機械学習の純粋な処理能力を捜索救難任務に適用することで、救命活動と捜索救難任務を革新できる可能性がある」と話している。

ハバート大尉は、豪海軍の協力の下、オーストラリアのジャービス湾で2018年に実施された共同無人システム軍事演習「オートノマス・ウォリアー(Autonomous Warrior)」の人工知能対応海上自律車両の開発に取り組んだ経験がある。

AI-Searchは主に既製の商用部品およびハバート大尉が率いる部隊が開発したカスタムのソフトウェアとプログラミングで構成されている。これまでの実験では同技術の実現可能性が強調されており、豪国防省は他の航空機搭載基盤にも簡単に適用できると報告している。

同プロジェクトの成功はその自由な協調性によるものとして高く評価した豪空軍のジェローム・リード(Jerome Reid)大尉はニュースリリースで、「明晰な頭脳を誇る当軍の人材に権限を与えて助言者や資源を提供し、邪魔さえしなければ、素晴らしい成果を導くことができる」と語っている。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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