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中国の影響に対するミクロネシア諸国の抵抗

FORUMスタッフ

ミクロネシア連邦(FSM)を構成する主権国の一部は、中華人民共和国(中国)の影響に対抗する措置を講じている。

人工島を建設して軍事施設を設置することで攻撃的に南シナ海の支配権を掌握するという中国の計画がほぼ完了しつつあることを考えると、同国がその野心を太平洋諸島地域に広げていることにもはや疑いの余地はない。

地政学的な情報を配信する大手プラットフォームであるストラトフォーが報告したところでは、チューク、コスレイ、ポンペイ、ヤップの4州から成るミクロネシア連邦およびクック諸島、フィジー、パプアニューギニア、サモア、トンガ、バヌアツといった太平洋諸島を標的にしている中国の地域海外直接投資は、2014年から2017年にかけて170%以上の増加となる2,800億円相当(28億米ドル)に及んでいる。

グアムのすぐ近くに位置するミクロネシア連邦のチューク州は、軍事基地の戦略的な拠点となることから、中国にとっては特に魅力的な地域である。それゆえ、経済的、政治的、社会的存在感拡大に向けた中国の計画に伴い増加する影響力と統制への野望に対してチューク州が脆弱になる可能性をアナリスト等は懸念している。

太平洋の260万平方キロに点在する605超の島から成るミクロネシア連邦は、世界で14番目に広い排他的経済水域を有する地域である。1986年11月に米国と自由連合盟約を締結することで主権国となったミクロネシア連邦で国連に加盟している太平洋諸島はすべて、中国による浸透工作の主な推進力となっている国連総会での投票権を有している。(写真:2018年9月27日に米国ニューヨーク州に所在する国連本部で開催された第73回国連総会で演説するミクロネシア連邦のピーター・クリスチャン(Peter Christian)大統領)

チューク州は2020年3月に投票を行い、ミクロネシア連邦からの離脱の可否を決定する予定である。これは、有害な事態が波及する可能性を考慮し、2019年3月時点でチューク州議会が離脱票決を1年延期したためである。

現在、自由連合盟約に基づき米国はミクロネシア連邦の予算の約60%を占める資金を提供しているが、連邦から離脱すれば、沿岸警備隊や他の政府機関の資産、そしてその長期的なコミットメントなど、年間約37億円(約3,700万米ドル)に相当する米国のさまざまな支援を喪失することになり、その結果同州は中国の略奪行為に対して一層脆弱となる。ストラトフォーによると、ミクロネシア連邦は1986年から2003年にかけて1,500億円相当(15億米ドル)の支援を受けている。

2019年4月、米国国防総省報道官のデイブ・イーストバーン(Dave Eastburn)中佐はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、「自由で開かれたインド太平洋地域を保護し、交流を維持し、そして第一選択肢の安保提携国としての地位を確保するため、米国は太平洋諸島に新たに働きかけている」と述べている。

ミクロネシア連邦に加え、米国はマーシャル諸島、パラオ、北マリアナ諸島などの国々との関係深化も計画している。

イーストバーン中佐は、「米国は従来ニュージーランドとオーストラリアが先導して重要な役割を果たしてきた小地域への関与を強化する方法を模索している」と説明している。

オーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国、台湾といった米国の同盟国も同地域全体の安保と航行の自由を維持することに戦略的関心を持っていることから、中国の潜在的な影響を相殺する方法を模索している。

チューク州が独立することで、中国の影響力が高まり、同地域が「借金地獄」や他の形態の強制措置の罠に陥ることを、一部のアナリスト等は懸念している。

オーストラリア放送協会によると、研究機関であるフィッチ・ソリューションズ(Fitch Solutions)のアナリスト等は、「チューク州は自由連合盟約に基づく支援の代替として中国に新たな資金源を見出す一方で、中国政府は太平洋に新たな同盟国を育成することができる。特に中国が群島に軍事基地を設置すれば、中国は明らかにチューク州の防衛と外交政策を引き受けることが可能となる」と予測している。

過去5年の間に、直接投資に加えて、チューク州や他の太平洋諸島に対する中国からの支援額は大幅に増加している。ストラトフォーが伝えたところでは、2006年から2014年の間に中国は1,700億円相当(17億米ドル)の開発援助を提供している。額自体は米国の支援に匹敵する規模であるが、中国からの資金提供は譲許的融資という形態がますます増えている。つまり融資を受けた国は金利を付けて返済する必要があり、多くの場合、これが主権喪失につながる。現在、同地域に最も多くの援助を提供しているのはオーストラリアである。

ジブチやスリランカの事例のように、中国の投資により世界各地の国々にもたらされた「借金地獄」の否定的な結果を考慮すれば、ミクロネシア連邦を狙う中国の浸透工作は懐疑的な見方をするより他にないと言える。

2019年3月、ヤップ州のヘンリー・ファ―レン(Henry Falan)知事は、25億円相当(2,500万米ドル)をかけて州都コロニアに約100室のホテルを建設する中国企業との契約を破棄した。ニュージーランドの独立系公共放送マルチメディア組織であるラジオ・ニュージーランド(RNZ)によれば、ファ―レン知事は2018年11月に、物議を醸している中国資金による開発計画の見直しを誓約することで支持を得て当選した政治家である。

2019年5月、ラジオ・ニュージーランドは、「ミクロネシア連邦では中国の開発者等に対する地域社会からの反対の声が高まっており、ある企業は自社の挫折を人種差別のせいにしている」と報道している。

ヤップ州観光局のトム・ターマンモウ(Tom Tamangmow)マネージャーはラジオ・ニュージーランドに対して、地元住民は中国人を差別しているわけではないと語っている。同州の地元住民はヤップ州の文化を保護し、観光客や外国の影響により同文化が荒廃するのを阻止することを望んでいるのである。

「ヤップ人はごく貧しかった時代も乗り越えて何年もの間生存してきた。今の時代でも、ヤップ人は多少貧しくても生きていける。住民は何も一夜にして億万長者になることを願っているわけではない…世の中のすべてのものを手に入れても、魂を売ってしまったら何が残るというのだ」

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