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インド太平洋諸国のサイバー戦士のスキル向上に貢献する国際刑事警察機構

トム・アブケ(Tom Abke

2018年のマイクロソフト(Microsoft)の調査によると、インド太平洋地域でのサイバー攻撃による年間損失は今年170兆円相当(1兆7,000億米ドル)に達すると予想される。このように脅威が高まっていることで、同地域の法執行機関は人員の教育と捜査・執行能力の向上および情報の共有に投資する必要性に迫られている。国際刑事警察機構(ICPO/インターポール)はICPOシンガポール総局(IGCI)(写真参照)を通して、こうしたニーズを満たす貴重な役割を果たしている。

国際刑事警察機構事務局はFORUMに対して、「国際刑事警察機構はインド太平洋地域を含む194ヵ国すべての加盟国・地域の警察にサイバー関連のスキルに関する専門訓練を提供して、能力開発に取り組んでいる」と説明している。こうした取り組みはICPOシンガポール総局に設置されているデジタル犯罪センターが主導している。

マルウェア分析や先進的なサイバー捜査技術といった高度な技能を学ぶ法執行機関の人員には、国際刑事警察機構の教官による教室での訓練が提供される。「対面で訓練することで、実際のシナリオをシミュレートした実践的な指導と演習が可能となる」と、同事務局は説明している。

2017年に国際刑事警察機構は、フィジー、ナウル、サモア、トンガ、バヌアツの太平洋島嶼国の警察に訓練を提供するため、サイバー捜査教官チームをフィジーに派遣している。欧州連合(EU)と欧州評議会の共同イニシアチブにおいて、フィリピン、スリランカ、トンガの法執行機関の人員が国際刑事警察機構による訓練と評価を受けている。これは、アフリカ、インド太平洋地域、ラテンアメリカにおける12ヵ国の優先国のサイバー対策能力の強化を目的としたGLACY(Global Action on Cybercrime)として知られるプロジェクトである。

声明は、「同プロジェクトでは国際刑事警察機構がサイバー犯罪、デジタルフォレンジック、ダークネットに関連する技術に焦点を当て、法執行機関と司法当局に訓練を提供した。国際刑事警察機構はまた、各国間における迅速な情報と証拠の交換を促進することを目的として、プロジェクトに基づき国際協力ワークショップを開催した」と述べている。

インターネットの基本事項、電子メール捜査、オープンソースに関する情報などについては、オンライン講義で警察に訓練を提供している。

「警察はセキュリティで保護された国際刑事警察機構の世界規模の警察通信システムを通じて、こうした学習機会を活用することができる。進化するサイバー脅威の状況を反映させ、警察に新しい捜査スキルセットを提供できるように、国際刑事警察機構はオンラインのeラーニングモジュールを適時更新および強化している」と、声明は付け加えている。

2019年にインド太平洋地域が直面する主なサイバー脅威としてビジネス電子メール詐欺、暗号通貨関連の犯罪、マルウェア感染が含まれるというマイクロソフトの調査と同様の見解を国際刑事警察機構も示している。こうした脅威に合わせて、国際刑事警察機構は加盟国・地域との共同捜査を実施するだけでなく、当該犯罪に対する一般大衆の意識向上に取り組み、組織や個人を保護する最善の方法を提示していく構えである。

インド太平洋諸国は国際刑事警察機構が開催する「サイバー犯罪に関するユーラシア地域作業部会」に毎年自国の上級サイバーポリスを参加させている。

国際刑事警察機構の声明は、「ユーラシア地域作業部会は捜査のベストプラクティス、デジタルフォレンジック、能力開発、作戦上の支援を追求している」と述べている。

ロイター通信によると、2017年4月に実施された国際刑事警察機構の作戦活動では、ユーラシア地域作業部会の加盟国の警察が協力を図り、マルウェアが潜んでいる9,000近くのサーバーおよび数百に及ぶ侵害ウェブサイトを特定した。当時同作業部会の議長を務めていた香港警察サイバー犯罪部門のフランシス・チャン(Francis Chan)長官は、同作戦により、各国でこれまで知られていなかったサイバー犯罪の種類を特定して対処することができたと述べている。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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