海上における 警備

海上における 警備

インドネシアの新政府機関リーダーが提案する海賊、違法漁業、その他の 脅威への対策

FORUM スタッフ

軍参謀副長官であるアフマッド・タウフィックロフマン(Achmad Taufiqoerrochman)中将は、2018 年 10 月からバダン・キーマナン・ラウト・レプブリク・インドネシア (BAKAMLA: Badan Keamanan Laut Republik Indonesia) として知られるインドネシア海事安全保障機関の長官を務めている。

タウフィックロフマン中将は、1985 年にインドネシア海軍陸軍士官学校を卒業した後、執行役員に任命され、水上艦艇に従事し、対潜戦を専門とした。彼はいくつかの船舶、護衛小艦隊、および艦隊の訓練を指揮した。彼の任務における働きは高く評価され、出世を早めた。また、海軍将官としては、海戦対策長と艦隊司令官を務めた。彼は、2011 年にメラプティ(Merah Putih:赤と白)タスクフォースを率いて、ソマリアの海賊に襲われたインドネシアのばら積み貨物船、M/V シナル・クルドゥス (M/V Sinar Kudus) 号の乗組員を救出した。

デュタ・サムドラ・タスクフォース(Duta Samudra Task Force)は、この地域における他のタスクフォース、特に統合タスクフォース 151 と共同して活動しておりインドネシアの海軍と陸軍の特殊部隊から支援を受けていた。2011 年に将官に選出された後、タウフィックロフマン中将はインドネシア海軍兵学校の副知事となり、2014 年には知事、2015 年には西部艦隊の最高司令官になった。在任中は、「西部艦隊緊急班」を創設して、マラッカとシンガポール海峡での武装勢力による強奪や海賊行為の撲滅に貢献し、6 ヵ月経たないうちに、制圧に成功した。

タウフィックロフマン中将の指揮の下、BAKAMLA は国内および国際的な海洋コミュニティから信頼される、専門の海事安全保障機関を目指している。BAKAMLA は、強く自立した主権者としてのインドネシアの実現を目標とする。2014 年に発足したこの機関は、最高指導者がインドネシア海軍の長官に
よって選ばれているものの、インドネシア国軍の一部ではない。 

BAKAMLA の使命は、インドネシアの領海および管轄水域で安全を維持し、群島国家であるインドネシアの代表として振舞うこと、世界の海洋中心地の守護者になることにより、海事国家としてのインドネシアのアイデンティティを強化すること、そして国益を保護するため、インドネシアをより強力な海事国家にすることである。

同組織の主な役割は、違法漁業や麻薬密輸を含む海洋での違法行為を防止、または取り締まるためにインドネシア海域において海上パトロールを行うことである。BAKAMLA は 1,000 人以上の人員を有し、小型から 110 メートル長までの海上航行船を 36 隻持ち、さらに 15 の監視ステーションが含まれる 3 つの基地であるバタムの西部ゾーン基地、マナドの中央ゾーン基地、アンボンの東部ゾーン基地を持つ。

シンガポール海峡で、米国沿岸警備隊の Stratton 船と共に航行する、インドネシア海事安全保障機関の KN Tan Jung Data 船(左)。ラビ・リード(LEVI READ)一等兵曹/米国沿岸警備隊

大統領直属であり、政治・法務・治安担当調整省の管轄であり、運輸省管轄のインドネシア沿岸警備隊とは分離されている。BAKAMLA は、大統領令により設置された違法漁業撲滅タスクフォースの関係機関である。

フォーラム:数多くの重要な任務での経験を経て、あなたはインドネシアの海事安全保障機関の長官に就任しました。BAKAMLA の使命と、これまで組織をどのように変革してきたかについてお話しいただけますか? 

タウフィックロフマン中将:2018 年、シンポジウム(第 23 回 US ネイバル・ウォー大学国際シーパワーシンポジウム)のためにロードアイランドに滞在していた時、インドネシアの大統領から BAKAMLA の指揮を取ってほしいという電話がありました。帰国後、私は大統領の補佐官に会い、BAKAMLA を率いる人間として私を選んだのは間違いではないかと尋ねました。なぜなら、私は海軍で34年間、常に戦闘部隊にいたからです。戦闘の任務から法執行機関での仕事へ頭を切り替えるのは困難です。ミッションが攻撃から防護に変わるわけですから。マインドや考え方を変えるのは難しいのです。しかし、大統領は私が BAKAMLA をリードし、組織をより良くして欲しいと仰いました。私は命令に従い BAKAMLA に来ました。

まず最初に、組織の現状について知る必要がありました。これまでそれについて考えたことなどありませんでしたから。そして、BAKAMLA を結成し、
インドネシアの沿岸警備隊として機能させるという大統領令について知りました。また、隊全体を対象とした研修施設・研修プログラムを整備するという命もありました。私たちは、沿岸警備隊とは何かを定義する必要がありました。そして、米国沿岸警備隊(USCG:U.S. Coast Guard)が、200 年以上も存続し、最も経験豊富な海事警備隊であることを知りました。

USCG のマニュアルの最初のページを開いてみると、USCG は米国の7つの制服化された組織のうちの 1 つであると書かれていて、とても興味深いと感じました。「制服化された組織」とは何だろう?と思いました。そして私は、それが法と法執行機関のための仕事を指しているのだと気づきました。私は、BAKAMLA の沿岸警備組織としてのアイデンティティーを確立するために、長袖のバティックとサファリスタイルの制服を変えました。最初のステップは、新しいユニフォームを通して人々の心を変えることでした。現在は、夏用の正装ユニフォームと戦闘服を使用しています。

インドネシア海域を巡回する BAKAMLA のボート。インドネシア沿岸警備隊

さらに、組織を設立する基になった法律について知った後、私たちの使命についてもきちんと定義しなければならないと思いました。BAKAMLA の使命は、海上阻止行動に基づいた海の安全保障のためと、すべての利害関係者の相乗効果のためであるパトロールの実施であり、海上安全を実現するために利用可能な情報を最大限に利用します。私たちはパトロール、企画、そして取りまとめを行います。使命遂行には、私たちの処理能力が関わっています。そのため私は、隊員たちに優先順位をつけるように言いました。まず、CONOP、つまり作戦構想(Concept of Operation)を打ち立てる必要があります。基本艦隊には、77 隻の船、29 機のヘリコプター、6 隻の海上哨戒機、複数の基地、そして最も重要である司令部が必要です。予算がかなり限られていることを知っていたので、優先順位をつけ最初に司令センターを建設しています。まず単純に、私たちには多くの利害関係者がおり、規制と法律が必要です。BAKAMLA が最も信頼できる情報を提供できるように、任務実行においての指揮の統一だけではなく、努力の統一も大切だと考えました。

次に、私たちは最初の沿岸警備隊をどこに配置するかについて話し合いました。そして、戦略的に重要な場所であるコマンドセンターに 2 つ配置することにしました。例えば、インドネシアには、世界で 9 つのチョークポイントのうちの 4 つがあります。さらに、セキュリティを保証するために4つの補助線や、他の戦略的な地点もあり、合計 21 の沿岸警備隊のステーションを持っています。

インドネシアは長い海岸線を有しています。各所に沿岸警備隊の基地を置くことはできません。各所に基地を置けば非常に費用がかかります。ですから
優先順位が変わるごとに移動できるような、移動式の警備隊ステーションが必要なのです。いくつかの領域に設備を移動し、別の領域は差しあたって無視するのです。最初に重要なのは、違法行為を検出して阻止するために、監視機能を確実にすることです。もちろん、法執行と海上阻止行動においての支援も必要です。これらが、今後私が優先する事項です。

フォーラム:あなたが接する組織や機関は主にどこですか? 

タウフィックロフマン中将:1 つ目は海軍です。彼らにはすでに設備資産があり、十分に訓練された人材を持っています。私たちは海軍と密接に協力しています。さらに法執行については警察と緊密に協力しており、また、BNN(National Anti-Narcotics Agency of the Republic of Indonesia, あるいは Badan Narkotika Nasional)、運輸省、漁業者などとも提携しています。しかし、主には海軍と警察です。BAKAMLA には、海上で法執行活動を行っているさまざまな機関で相乗効果を生み出すという課題と、それを実現する機会が与えられています。状況を改善するために、すでに BAKAMLA は海上保安法案の批准をインドネシア議会に提案しています。この法案が可決されれば、さまざまな機関の調整においての BAKAMLA の役割はさらに増すでしょう。

インドネシアのバタムに停泊している間、米国沿岸警備隊の Stratton 船の指揮官であるボブ・
リトル(Bob Little)大尉を訪問する、インドネシア海事安全保障機関の KN Tan Jung Data 船の指揮官であるニョト・サプトナ(Nyoto Saptona)大尉(左)。ラビ・リード(LEVI READ)一等兵曹/米国沿岸警備隊

フォーラム:BAKAMLA の国際的な連携への取り組みについて教えてください。

タウフィックロフマン中将:BAKAMLA は、既存の共同活動と、能力開発の取り組みを改善することによって、東南アジアの連携を支援しています。そのため、海洋の安全を高めるための海事問題に関するトレーニング、ワークショップ、セミナーといった情報と知識の交換を行っています。今後は、米国、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国との連携も強化していきます。これによって、これらの国々と、能力開発、トレーニング、教育、情報および知識の共有において協力することができます。さらなる改善が必要なのは、地域レベルおよび多国籍レベルでの連携です。例えば、南シナ海など、現在世界的に注目されている特別な問題のための沿岸警備隊シンポジウムなどが含まれます。海洋安全保障に対する世界的な脅威は、すべての人が共有する問題です。そのため、問題を個別に解決することは難しく、解決策を見つけるためには国際協力が必要なのです。

フォーラム:能力やパフォーマンスを上げるために、どのような国際機関と連携していますか?

タウフィックロフマン中将:米国沿岸警備隊は、経験という点では一流ですが、その特性と課題は私たちとは違います。米国は、群島であるインドネシアとは大きく異なるからです。そのため、私たちはギリシャのような他の沿岸警備隊についても学びました。ギリシャは、ヨーロッパでは 1番多い 9,000 の島からなり、その点でインドネシアと似ています。さらに、フィリピン、韓国、日本についても学びました。私たちは、群島という複雑な沿岸警備隊機能の恩恵を受けています。私たちはお互いから学ぶことができます。

最初の課題は、インドネシアの戦略的地位と地理的な配置です。インドネシアは、4 つのチョークポイントと、複数のシーレーン(海上交通路)を持っています。私たちは、UNCLOS(United Nations Convention on the Law of the Sea:国連海洋法条約)の批准の下で、海の安全な通過のための警備体制を整えなければならず、それが物事を複雑にしています。2 つ目の課題は、世界的な観点での戦略環境の柔軟性です。それを実現するには、インドネシアが地域の重要国と交流し、影響を与えるだけの力を備えていることが必要です。次の課題は領土です。多くの国の間に多くの境界線があり、いくつかは議論の種になっています。こういった問題は国家間の摩擦に繋がります。私たちは、海上で危険な判断が起こってしまう事を避けるために、地域の沿岸警備隊の司令官と話し合いましたが、こういった試みによって、国と国との良好な関係を築くことができると思います。最近の例をあげると、2019 年 7 月に 6 隻のベトナム漁船の侵入があったのですが、船が係争地域に入った直後、2 隻の沿岸警備隊船が接近しました。私は、まず船が我々の領域に入るのを阻止するように命じました。そして、彼らにここが係争海域である事を告げ、この海域以外で漁獲を行うように助言するように伝えました。
さらに私たちは、ベトナム沿岸警備隊を呼び寄せ、海上で話をしました。彼らは私たちに同意し、その海域から北の方へ船を撤退させました。緊張が高まらないようにする方法はあるのです。その後、私たちは彼らがベトナムの伝統漁業の船であり、そのため地図も GPS も持っていないか、あるいは正しい位置を把握しておらず他国の海域に入ったとは思っていなかった可能性があると気づきました。

フォーラム:これらの対立を回避する方法について話し合うため、海での会議に加えて、国際会議や地域会議にも参加していますか? 

タウフィックロフマン中将:私たちには、HACGAM(Heads of Asian Coast Guard Agencies Meeting:アジア海上保安機関長官級会合)と呼ばれる組織もあります。上記のような問題について議論し、協力する方法について話し合います。また現在、メンバーたちは他国との共同訓練も行っています。最近では、BAKAMLA が初めてインドでの計画合同演習に参加したほか、ジャカルタでは、韓国の沿岸警備隊や、また 8 月にはアメリカの沿岸警備隊が、インドネシアでの CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training:協力海上即応訓練)に参加するために、沿岸警備船の Stratton を派遣しました。また、私たちは、オーストラリア国境軍との共同パトロールも実施していて、それぞれ、一隻ずつ船を派遣しました。2019 年 10 月には、共同パトロールだけでなく、より多くの共同業務を行い、より多くの国を訪問したいと思っています。

フォーラム:現在どの国で国境警備を行っていますか? 

タウフィックロフマン中将:正式な国境警備はオーストラリアだけですが、ベトナム沿岸警備隊とも非公式な警備を行っています。海上で交流する事により、対立を避けることができます。私は彼らの船をすぐ近くまで呼びます。そうすれば指揮官同士が直接会って問題や解決方法を話し合えるからです。これがオペレーションとしては一番良いやり方だと思います。

フォーラム:BAKAMLA が取り組むインドネシアの安全保障上の最大の懸念事項は何だと思いますか?

タウフィックロフマン中将:最優先事項は、海上交通路 (SLOC) を確保する事で、次に UNCLOS (国連海洋法条約)の群島航路義務を遵守することです。また、私が管轄する区域の海上で、秩序を保つことも優先すべき点です。そして、最後に、特に海上での国家主権を維持する事です。IUU(illegal, unregulated and unreported fishing:無規制の違法漁獲)に関しては、大統領の権限で水産省主導のタスクフォース 115 をサポートしています。彼らをサポートすれば、それが私たちの取り組みとの相乗効果となるからです。また、私は海軍で戦闘・艦隊司令官として過ごした経験を彼らに語っています。例えば、彼らがタスクフォースを始めたとき、彼らには作戦を行うという概念がありませんでした。しかし私は作戦についてはよく知っています。

フォーラム:南シナ海について、行動規範や、すべての国が国際ルールによる秩序を守ることの重要性について話していただけますか? 

タウフィックロフマン中将:南シナ海には、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ブルネイとの国境があります。ここでは、UNCLOS 外の行動が必要です。つまり九段線の問題です。私たちの経済圏にとっては重要な問題です。それでも私たちは、法的な UNCLOS に属しています。緊張状態はしばしば起こりますが、そういう時は、司令官としての経験を呼び起こします。南シナ海では多くの深刻な挙動がたびたび報告され、私たちは警備隊を派遣しています。今までいくつかの船舶を阻止しましたが、その一部は中国の沿岸警備隊でした。彼らは「ここは中国の漁場領域である」と言いました。そこで
私は、「中国の伝統的な漁場領域については知らないが、UNCLOS では漁場域ではなく漁業権として制定している。漁業権に関する限り、私たちは国々の間で公式の協定を結んでいる。」と答えました。インドネシアとマレーシアに関しては、古代から、インドネシアの海域で多くのマレーシアの漁船が漁獲をしていましたが、彼らは現在 UNCLOS に合意しているので問題はありません。伝統的な漁場領域という主張は承認できません。私たちはあくまで UNCLOS に則り、法執行の観点から、地域の阻止活動を行っています。

フォーラム:なぜ他の東南アジア諸国や米国との協力が重要なのですか? 

タウフィックロフマン中将:戦闘グループ司令官としての私のソマリアでの経験を振り返ってみましょう。民間商船がソマリアの海賊に襲われた時、私は戦闘グループの司令官でした。大統領は任務隊を送ることを決定し、話し合いの後、私が隊を率いることになりました。大統領は、私の 2004 年の経験について知っていたからです。(私はアメリカ太平洋軍の司令官が、トーマス・ファーゴ大将だったのを覚えています。ファーゴ大将は、米国が SLOCを形成するために資産提供をしたファーゴ政策で知られています。)私は司令官として、マラッカ海峡に出向いて、作戦の助言をする許可を海軍長官に求めました。2004 年には、ハイジャックがマラッカ海峡で大きな問題になりましたが、2004 年以前は人質を解放することについては大きな成功がなかったのです。航空機については成功もありましたが、船舶ではゼロでした。私はそれに気づいてから、指揮官としてすぐに行動しました。夕方の 5 時に事件の情報が入り、正確な場所も把握していました。5 時間後には私たちは計画をまとめ、午後 11 時に、解放作戦を実施するために特殊部隊を呼び出しました。しかし、当時はまだ特殊作戦という概念はありませんでした。後退するか進むかは私の選択でした。私はリスクを取り、自身のチームを使って実行することを選びました。私は 2 つの 7 人編成チーム、つまり合計 14 人を率いていました。ハイジャック犯は 5 人で、36 人の人質がいました。私たちは状況を把握し追跡と分析を行いました。午前 1 時、攻撃を開始する好機がありました。本当に接近戦でした。それほどの接近戦の準備をしていなかったので、AK-47S を使用しました。1.5 メートルで 7.62 口径の AK-47 を使用した場合、命中すれば人の頭を吹き飛ばせます。5 人のハイジャック犯
は全員確保しました。作戦は、4 つの理由で 100% 成功と言えるものでした。第一の点は、36 人の人質全員を無傷で解放したことです。第二の点は、ハイジャック犯全員を制圧したことです。第三の点は、船舶設備の損失をゼロとしたことです。そして最後の点は、銃撃戦で兵の死傷者を出さずに無事に船を取り戻したことです。作戦の成功後、すぐにジャカルタに来るようにと海軍長官に呼ばれました。私がジャカルタに行くと、すべての将官がそこにいて、長官は私に作戦の結果を簡単に説明するように言いました。最初に考慮すべきことは、ファーゴ大将の教義です。成功した場合は、それを基礎とする。失敗した場合は、再設計する。私がそう説明すると、海軍長官は「無茶だ」と言いました。私は「その通りです。無茶をしなければ勝てませんから。」と答えました。

そのような経験がを踏まえて、2011 年に大統領は私をソマリアでのタスクフォースグループの司令官に選んだのだと思います。その後、私は救出作戦におけるソマリア海賊への対応法についてまとめました。そして、大統領の自宅から電話がありました。大統領府から、軍がタスクグループを率いるための最低ランクの 11 の要旨を送った事を聞きました。軍はさらに他の勧告を求めましたが、それに対して政府は、艦隊訓練司令官として 1 人の無鉄砲な大尉が居ると伝えました。そして、私は大統領に呼ばれました。彼らは (30 分ほどの) 短い説明をした後、私にシンプルな命令を出しました。明日ソマリアに発つように、と。私はその時ソマリアの緊急事態に対する対応策が存在しないこと、また状況についての確かな情報もないことを知りました。補足情報を得るため、米国第 7 艦隊での知人である U.S. Seal 小艦隊司令官を含めた何人かの同僚を呼びました。翌日の日没にソマリアへ出発する予定でしたが、私はその前に収集可能なすべての情報(実際に情報はほとんどなかったのですが)それに基づいて計画を立てました。出発後、道中でも何とか計画を練ろうとしましたが、ソマリア盆地に着いた時、タスクフォース 151 の他にも、タスクフォース 550 と 552を含む多くの既存の部隊があり、またロシアと中国からの独立した配備もあるのだと気づきました。到着したとき、私が思ったことはたった 1 つで、いったいこの小型のフリゲート艦の意味は何であり、私たちの義務は何だったのか?ということでした。私は、国から依頼された国家の仕事のために来たことを告げました。タスクフォース 151 の司令官で准将である、シンガポール海軍のハリス・チャン(Harris Chan)が私の船にやって来て、計画の変更のためのたくさんの情報を提供してくれました。地域のすべての当局から許可と支援を得た後、任務はデュタ・サムドラ(Duta Samudra)タスクフォースによって成功に終わりました。

この経験で得た重要な教訓は、私たち全員が海洋の安全に関連する同じ脅威と問題を抱えているということです。これらの問題を、個別の国で解決することは不可能です。だからこそ、領域内の国同士の協力を強化する必要があります。他国の海上保安担当者と直接交流することが出来れば、円滑な協力が実現するのです。 

フォーラム:デュタ・サムドラ・タスクフォースの指揮から、何か他にも見識は得ましたか? 

タウフィックロフマン中将:インドネシア大統領から権限を与えられた後、私は最初に、それまでインドネシア海軍が行ったことのなかった長距離作戦の訓練を、私自身とタスクフォースに対して行いました。ソマリア海賊に人質に取られた MV Sinar Kudus の乗組員を解放するためには、インドネシアの管轄権のはるか外側で、人質救出作戦を行う事が必要でしたが、当時のインドネシア海軍にはそのような対応案がなかったのです。これは大きな課題
でした。そこで私は、作戦が実行される地域への航海の時間を利用して、自分の指揮下にある部隊について慎重に見極め、訓練して作戦に備えました。また、人質救出を成功させるために、他の機関との調整も継続的に行いました。そして現地に入ると、私は海軍での自身の経験だけでなく、デュタ・サムドラ・タスクフォース内で様々な人から受けた訓練の記憶もすべて呼び起こしました。作戦を支援する上で、この地域の多国籍タスクフォースとの協調も大きな役割を果たしました。全能の神の導きと保護により、海賊への攻撃と MV Sinar Kudus の乗組員の救助は海賊を除いては、死傷者なしで行われました。

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