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最新のメコン川主流でのダム建設取り止めを求められるラオス政府

メコン川に生活の糧を依存する数百万人の流域住民に及ぼされ得る悲惨な結果を警告する環境権団体が、すでに建設認可が下りている最新のメコン川水力発電ダム工事を取り止めるようラオス政府に呼びかけている。

ルアンパバーンダムに関する6ヵ月間の「事前協議プロセス」が2019年10月8日に開始されたことで、ラオスと共にメコン川委員会(MRC)に加盟するカンボジア、タイ、ベトナムにプロジェクト計画を見直し、懸念を提起する機会が与えられた。権利団体の主張によると、同ダムの建設により最大の打撃を受けると予想される農業・漁業共同体は、以前に承認されたプロジェクトで実施された協議プロセスに失望を感じており、今回も同じ結果がもたらされる可能性を憂いでいる。

過去最大となる発電量1,460メガワットのルアンパバーンダムは、ラオス政府が協議プロセスを実施した5個目のメコン川主流ダムとなる。最初のサイヤブリダムでは10月末から本格的に発電が開始される予定となっている。(写真:ラム川とメコン川の間にあるルアンパバーン郡を撮影した航空写真)

持続可能な河川管理を提唱するタイの環境保護組織「インターナショナル・リバーズ(International Rivers)」のピアンポーン・ディーテス(Pianporn Deetes)キャンペーン局長は、「過去に実施された4回の協議プロセスには大きな抜け穴が存在し、影響を受ける共同体がプロセスから除外された」と説明している。

ディーテス局長は、「個人的な意見としては、協議プロセスはプロジェクト承認を得るためだけの役割を果たすものでしかない」と述べている。

協議の機会を設けても、メコン川委員会加盟国にはメコン川に関するお互いの計画に対する拒否権がなく、文句を言って要求を述べるだけに留まる。

サイヤブリダム建設時には、同ダムに対する住民の懸念に対応するため、濁水問題を軽減して魚類の移動が容易となるようにラオス政府とダム開発者であるサイヤブリ・パワー(Xayaburi Power)社が計画に変更を加えたものの、河川で異なる条件がモデル化されたことから、変更しても大した違いはもたらされなかったと、研究者や環境権団体は分析している。メコン川委員会事務局によると、事業者が十分なデータを共有しないことから、もたらされ得るメリットの程度が五里霧中の状態である。

権利団体は協議プロセスには全く価値がないと述べている。

関心を持つ河川流域住民と非政府組織の連合「セーブ・ザ・メコン(Save the Mekong)」はラオス政府に対して、ルアンパバーンダムと主流で計画されている他のダムの建設取り止めを強く求めている。

同連合は声明を通して、「影響を受ける共同体、市民社会、一般大衆がルアンパバーンダムに関する今回の事前協議に有意義に参加できるかどうかは言うまでもなく、今回のプロセスが過去の経験よりも改善されるという保証もなければ、最低限の透明性と説明責任の基準が確保されることを示す兆候もほとんどない」と述べている。

また、「今回もまた無価値な事前協議プロセスを実施するよりも、メコン下流に所在する各国政府とメコン川委員会に対して、主流ダムがもたらし得る影響に対する明らかな懸念に対処し、包括的なオプション評価を実施することで代替案を検討することを要請する」とも語っている。

中国南部を走るメコン川主流では2040年までにラオスで9件、カンボジアで2件、合計11件のダム建設が計画されているが、6年間にわたりメコン川委員会事務局が実施した研究では、これによりもたらされる累積的な影響により地域全体の経済と食料安保が脅かされることが判明している。同研究によると、流域全体で漁業資源が少なくとも40%、最大ではその2倍も衰退する可能性がある。

ルアンパバーンダム1つだけでも、その影響評価によると、同ダムにより回遊魚が上流に移動するのが困難となることから、多くが産卵の場を失うことになる。しかも、衝撃緩和を目的とした研究の一部は、プロジェクト建設が開始されてからしか行われない。

「アジアの発電拠点」になることを夢見て猛突進するラオス政府は、警告に耳を貸すことなくメコン川のダム建設準備に余念がない。

権利団体の主張よると、電力消費を予測しても、ダムにより生成されるほどの電力量を近隣諸国は必要としておらず、より安全な代替手段が他に多く存在している。

インターナショナル・リバーズのディーテス局長は、「そのため[ルアンパバーンダム] プロジェクトの正当性を今一度検討する必要がある。そして、プロジェクトによりすでに発生している影響は無視されているにも関わらず、銀行や開発者等と手を組む建設会社によって流域の重要な資源がますます搾取されている現状を意思決定者等はもう一度よく考える必要がある」と述べている。

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