新首都防衛の準備を進めるインドネシア防衛計画当局

新首都防衛の準備を進めるインドネシア防衛計画当局

ヘッドライン | Jan 21, 2020:

トム・アブケ(Tom Abke)

自然災害リスクと都市の混雑が要因となり、ジャカルタからカリマンタン(ボルネオ島のインドネシア領地域)の東カリマンタン州への首都移転計画を策定したインドネシア政府の国軍は、新たな防衛インフラの構築および新政権の保護対策を強化する新政策の策定に取り組んでいる。首都移転によりもたらされる戦略的利点は新たな課題と一致している。

インドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)政権は、内陸部に首都を移転することで、ジャカルタを脅かす嵐、洪水、地震などの自然災害による被害を比較的回避できると睨んでいる。同計画により、都市計画当局は現在の首都で発生している慢性的な交通渋滞と重度の大気汚染から逃れることも期待している。(写真:2019年12月、インドネシアの新首都に計画された土地を視察するジョコ・ウィドド大統領と東カリマンタン州のイスラン・ヌーア(Isran Noor)知事)

2019年11月初旬、ハディ・ジャヤント(Hadi Tjahjanto)空軍大将は議員等に対して、インドネシア国軍(TNI)司令部および大規模な人員と防衛資産の移転はかなり困難な課題ではあるが、国軍ではこれを遂行する準備が整っていると話している。

ジャヤント空軍大将は、「危機発生時や有事には国の首都は重心となり、敵が全力を傾けて攻撃する地点となる」と説明し、「それ故、首都の防衛システム開発は、インドネシアにとって絶対的に重要な要素となる」と述べている。

東カリマンタン州の北プナジャム・パスール県とクタイ・カルタネガラ県の両県にかかるボルネオ島東海岸近くの約18万ヘクタールの地域が新首都として選定されている。大統領官邸、立法機関、省庁、州機関、外国大使館などと共に「インドネシア国軍の部隊と他の軍事基地は北プナジャム・パスール県に配置される予定である」と、同大将は語っている。

ジャカルタに拠点を置く戦略国際問題研究所のエヴァン・ラックスマナ(Evan Laksmana)上級研究員によると、新首都防衛に必要な軍事力の範囲と規模を再配備する作業には相当な労力を要する。ラックスマナ上級研究員が2019年11月のオーストラリア戦略政策研究所の報告書に記したところでは、インドネシア国軍司令部だけでなく、陸軍、空軍、海軍の本部も移転される予定である。都市を防衛するために新たな首都防衛地域司令部(KODAM PIK)を設立する必要もあると、同上級研究員は付け加えている。

同上級研究員の説明によると、新たな陸軍本部と地域司令部には「歩兵隊、機甲旅団、特殊部隊を含む」約1万5,000人の要員が必要になる。

カリマンタン地域に既存する2つの軍事拠点を補完することを目的として、インドネシア海軍に新たな「大艦隊級」の部隊と師団級の海兵隊、そして主要海軍基地を追加する案が出されている。本部移転に伴い、空軍には新しい基地と施設が必要となる。これには、新たにF-16V戦闘機16機を備えた飛行隊2部隊の設置の可能性が含まれる。環境関連の考慮事項の他にも、同上級研究員は「新首都は戦略的に重要な意味を持つものとなる」と強調している。

カリマンタン島はマカッサル海峡に沿って位置しているため、東カリマンタン州の新首都は、インドネシアの主要航路の1つであるインド洋と太平洋を結ぶ直航経路に地理的に近くなると、同上級研究員は付け加えている。これにより新首都は商業の中心地となり得るが、「超国家的テロや犯罪活動」が活発なマレーシアとフィリピンと国境や海域を分けることから「潜在的な紛争の引火点」にも接近することになる。

同上級研究員は、「インドネシアはマレーシアとフィリピンとの三国間協力の拡大と制度化に向けて多くの資源を投入すべきである」とし、「これは新首都の安保のために重要となるだけでなく、そうすることでインドネシア国軍という重々しい存在に対する懸念が緩和される」と締めくくっている。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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