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新型コロナウイルス感染の対応に関する「公平かつ独立した」調査に世界保健機関が同意

FORUMスタッフ

世界保健機関(WHO)による2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)パンデミックへの対応に関する「公平かつ独立した包括的な調査」が実施される見通しとなった。

パンデミック世界危機への世界保健機関の対応に関する厳格な検証を求める決議は欧州連合(EU)加盟国から提出され、2020年5月18日から19日にかけて開催された第73回年次総会で同決議が194の同機関加盟国・地域の全会一致で採択された。

決議は調査に「パンデミックに関連する予防、準備、対応能力の改善に向けた推奨事項を盛り込む」ことを求めている。

通常、年次総会はスイス・ジュネーブの本部で開催されるが、新型コロナウイルス感染を考慮して今回初めてビデオ会議(テレビ会議)で開催された総会の閉会の辞で、世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は「調査を最も早い適切な時期に実施する」と表明した。(写真:第73回年次総会にビデオ経由で出席する世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長)

同決議は広範にわたる国際社会の対応の評価を要求するものであり、世界保健機関の行動に限定されるものではないことを指摘したゲブレイエスス事務局長は、「世界的な保健安保と世界保健機関を強化するあらゆる構想の提案を歓迎する」と述べている。

同事務局長が閉会の辞を述べた時点で、同機関ウェブサイトの「WHO新型コロナウイルス(COVID-19)ダッシュボード」に表示されていた全世界の確認症例数は470万人、死者数は31万5,000人超に上っている。

2019年末に初めて症例が報告されてから公衆衛生災害に発展した同感染症は、疾患蔓延の実態よりも、責任問題や不十分な対策への不満に注目が集まっており、年次総会でもこうした「恨み」が滲み出る結果となった。

5月18日付で米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がゲブレイエスス事務局長に宛てた4ページの書簡には、 米政権は世界保健機関が「新型コロナウイルス感染症流行対策に失敗」したと評価しており、これは同機関の「中華人民共和国(中国)との憂慮すべき癒着」を明白に示すものであると記されている。

また、書簡には「信頼性の高い報告により、2019年12月上旬時点、またはそれより前に武漢市[中国]でウイルス感染が拡大していたことを示す情報があったにも関わらず、これを一貫して無視した」との批判も含まれている。

世界保健機関の某専門家は、野生生物を売買する武漢市の生鮮市場は「発生源か感染拡大環境のいずれかとして、何らかのかたちで今回のパンデミックに関係がある」と述べているが、今回の決議では新型コロナウイルス感染症の起源や特定加盟国の行動については触れられていない。独立調査を求める議決は全会一致で採択されており、米国もこれに反対することはなかった。

世界保健機関に関する独立調査のめどが立っていなかった2020年4月に、トランプ米大統領は同機関への拠出金を停止している。同大統領が送付した書簡には、同機関が「向こう30日以内に実効性のある改革に取り組むことを約束しない」場合は、米国の資金拠出の恒久停止と脱退を検討するとする警告が含まれている。

調査実施時期は明確にされておらず、発行された勧告を制定するのは個々の加盟国次第となる。

米国やオーストラリアなどの世界諸国からの独立調査の要請を一貫して拒否しただけでなく、オーストラリアからの輸出製品を中国国民にボイコットさせると同国に脅しをかけていた中国は、年次総会の席では進行と決議を黙認した。

中国共産党中央委員会総書記などを兼務する中国の習近平(Xi Jinping)主席はビデオ会議の席で、世界保健機関の年次総会に出席した加盟国代表者等に向けて、「中国は国際社会の対応に関する包括的な調査の決議を支持する」と表明し、特に開発途上国におけるウイルス対策と復興への取り組みを支援するため、2年間で2,000億円相当(20億米ドル)を拠出することを公約している。

習主席はまた、「中国政府は世界保健機関と関連諸国に最も適時に情報を提供した」として、ウイルス対策について自国の行動を擁護している。

しかし、習主席の主張に米国当局は動じていない。

アレックス・アザール(Alex Azar)米国保健福祉長官は総会初日のビデオ演説で、「加盟国のいずれかが誠実な行動を取らないという事態が発生した場合、情報を共有し、透明性を維持するのが世界保健機関の中核的な使命であるにも関わらず、同機関はこれに失敗した」として、中国が症例発生時に詳細を隠蔽したために、致命的な結果がもたらされたことを暗に非難し、「こうした事態を二度と起こしてはならない」と述べている。

アザール長官はまた、米国が世界のパンデミック対策を支援するために9,000億円相当(90億米ドル)以上を用意していること、また同国が世界初の新型コロナワクチン臨床試験を開始したことを発表している。

さらに、「試験が成功し、米国が透明性の高い方法でこれを共有すれば、全世界に恩恵が行き渡ることになる」と続けている。

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