危機への準備態勢確立のため米軍との提携を強化するモルディブ国防軍

危機への準備態勢確立のため米軍との提携を強化するモルディブ国防軍

FORUMスタッフ

2020年第1四半期、世界が2019新型コロナウイルス急性呼吸器疾患(COVID-19)パンデミックの対応に追われる中、モルディブ国防軍(MNDF)は今年もインド洋の離島で厳しい訓練を実施した。

2020年3月、攻撃された場合に諸島を防衛する準備態勢を整えることを目的として、モルディブ国防軍の海兵隊と特殊部隊が米軍特殊部隊との合同演習を実施した。26の環礁や1,100以上に及ぶ島々から成るモルディブは国防が困難な地理条件にある。

今回注目されるのは、モルディブ国防軍と米軍特殊部隊が協力して、テロリストを各地に送り出す過激主義者の共同体が巣食う島の悪を一掃し、兵器を密輸する地元の海賊に乗っ取られた漁船を救出するという設定で行われた演習である。

モルディブの史実に大まかに基づいた同シミュレーションは、モルディブ国防軍の海兵隊と特殊部隊、および米軍特殊部隊による30日間合同演習「バランス・メタル(Balance Metal)」の一環として実施されたもので、部隊間の相互運用性に重点を置いている。(写真:米軍特殊部隊と共有する技術、戦術、手順に磨きをかけることを目的として実施された2020年「バランス・メタル」演習中、侵入、乗り込み、捜索、押収訓練の準備として建物の安全を確保するモルディブ国防軍の特殊部隊)

モルディブと米国は両国共に、テロ対策および国際水路、特にインドとモルディブ間の商業輸送航路における航行の自由を維持することの重要性を認識している。

モルディブのイブラヒム・モハメド・ソリ(Ibrahim Mohamed Solih)大統領は2019年9月に開催された国連総会で発表した声明で、「当国が存在するインド洋は過去20年間にわたって世界の地政学の最前線としての役目を果たし、近年急速に海上貿易の中心地としての地位を担うようになってきた。インド洋の平和と安全は、世界の平和と安全に密接に関連している」と述べている。

中東からアジアへ搬送される製品、特に石油の搬送においては2つの主要輸送航路が存在するが、両航路共にモルディブ領海を通過することで、同島国に注目が集まっている。

モルディブを自国の一帯一路(OBOR)政策に引き込むことにますます執着する中華人民共和国(中国)は、マレ市の中国モルディブ友好橋やヴェラナ国際空港の拡張などにおいてモルディブとインフラ契約を締結している。

モルディブと地理的に最も近い貿易相手国であるインドは、インド洋と南シナ海を繋ぐ海峡における安全対策に同国と共同で取り組んでいる。同海峡は世界最大級の経済大国の一部にとって重要な軍事的・経済的航路となる。インドと中国だけでも約28億人が同水路の輸送航路を利用しており、総国内総生産高1,598兆円相当(15兆9,800米ドル)が同水路により支えられている。

主要商業航路の安全確保に加えて、モルディブは同海域における海賊対策とテロ対策にも取り組んでいる。

同国は過去10年間にわたり、安保危機への準備態勢としてバランス・メタル演習を毎年開催している。同プログラムはモルディブと米国が戦術と技術を共有し、集団的相互運用性を構築するための基盤となっている。

2018年米国国防戦略には、「米国の同盟・提携諸国は補完的な機能と軍事力だけでなく、米国の環境に対する理解の深化と選択肢拡大を促進する独自の視点、地域間の関係、情報を提供する」と記されている。

国際的な法治に基づく民主主義国家間の自由貿易を支援することを目的として実施する世界最大級の危機への対応演習とテロ対策訓練において、モルディブはインド太平洋地域の中でも米軍特殊部隊を第一選択肢の提携軍隊として認識している。

モルディブはインド太平洋地域内での合同訓練を通じて危機対応と効果的なテロ対策を実施できるように、この永続的な交流を維持してきた。

2020年2月にモルディブ議会で行った演説でソリ大統領は、「宗教的過激主義の拡大と宗教に反する価値観の表明は、モルディブの安全に対する脅威と見なされる」と述べている。

モルディブと米国の提携はテロ対策による国家安保の強化という両国の相互利益に根ざすものである。2019年2月、インドのウェブサイト「ストラテジック・ニュース・インターナショナル(Strategic News International)」の取材に応じたモルディブ国軍司令官(CDF)のアブドゥラ・シャーマール(Abdulla Shamaal)少将は、同軍がテロ対策としてその特殊部隊と海兵隊の能力強化に焦点を当てていると表明している。

過去10年間にモルディブで発生したテロ攻撃は非常に少ないとは言え、当局は中東の武装勢力を支援してきた過激主義者の共同体による持続的な脅威を認識している。2020年2月4日、マレ首都圏で3人の観光客を刺したイスラム国支持者等は暴力行為を継続することを表明した。

過激主義者の共同体の特定や暴力的過激主義対策としてモルディブ国防軍の特殊部隊と警察が共同で実施した作戦が一部成功を収めている。バランス・メタル演習を通じて、モルディブ国防軍と米軍特殊部隊は暴力的過激主義対策における戦術を改善し、経験を育てている。2020年3月の演習では、高度な射撃、戦術戦傷治療、接近戦、海上作戦の訓練を実施している。

米軍特殊部隊は戦術訓練と計画の専門知識を共有しただけでなく、追加の医療機器をモルディブ国防軍の特殊部隊と海兵隊に提供している。機器にはチェストシールや止血帯などの基本的な外傷治療用具および緊急患者に必要となる酸素濃縮器などの高度な機器が含まれている。

演習実施国の医療訓練と災害準備を支援するため、米インド太平洋軍(USINDOPACOM)の海外人道災害市民支援(OHDACA/Overseas Humanitarian, Disaster, and Civic Aid)プログラムから機器供給資金が提供された。

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