中国の麻薬密売人の取り締まりを強化する米国

中国の麻薬密売人の取り締まりを強化する米国

米国当局が合成オピオイドの製造に使用される化学物質を製造・販売する中国組織の本格的な取り締まりに乗り出した。こうして製造された合成オピオイドは最終的に米国に流入するからである。

米国財務省の金融犯罪捜査網(FinCEN)はフージン・ジェン(Fujing Zheng、その父親であるグアンフア・ジェン(Guanghua Zheng)、そしてシャオビン・イェン(Xiaobing Yan)の3人の中国国民を「重要な外国人麻薬密売人」および麻薬密売の「中心人物」として特定した。この3人は「致命的な麻薬を製造・販売する国際的な麻薬密輸に関与し、米国におけるオピオイド中毒や乱用および過剰摂取による死亡件数増加の直接的な要因となっている」と、米国財務省は発表している。

数百個に上る合成オピオイドの袋を米国に発送したとされるフージン・ジェン容疑者とイェン容疑者は、「オンラインによる広告と販売手段を通じて顧客を引き付け、民間配送業者を利用して麻薬を密輸していた」と、同省は述べている。

米国財務省外国資産管理局(OFAC)の発表によると、この3人の男性容疑者はデジタル通貨ビットコインを利用することで知られている。同管理局は「密輸取り締まりの効果を最大化する」ため、同密輸疑惑者等に関連付けられているビットコインアドレスを特定した。

2018年、米連邦地検はフージン・ジェン容疑者とグアンフア・ジェン容疑者に対する43件の起訴状を公開した。これは、違法薬物を製造し、少なくとも米国37州と25ヵ国への密輸を企てた嫌疑である。イェン容疑者は2017年に同様の容疑で起訴されている。ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、告発された容疑者等は依然手配中であり、現在のところ中国政府は何の措置も講じていない。

2019年4月、中国はフェンタニル類物質を規制薬物として指定したと発表しているが、製造に使用される化学物質は禁止されていないことから、中国組織はこうした化学物質を自由に製造して、メキシコなどの他国に密輸して麻薬を製造することができる。(写真:米国税関・国境警備局(CBP)が2019年1月にメキシコから米国に向かうトラックから押収したフェンタニルとメタンフェタミンの袋)

フェンタニルは今も中国から直接流入することがあり、米国では相当に高い割合でオピオイドが浸透している。AP通信(AP)の報道によると、2019年8月下旬、バージニア州の法執行当局は複数州にまたがる麻薬組織を摘発し、中国から密輸された安価なフェンタニルを押収したと発表している。このときに押収された麻薬は、1,400万人の命を楽に抹殺できるほどの量であった。この30キロのフェンタニルは上海から米国への郵送物として密輸されたものである。

AP通信によると、バージニア州東部地区連邦地方裁判所のG・ザカリー・ターウィリガー(G. Zachary Terwilliger)検事は、「中国組織によるこうした行為を防止する必要がある」と述べている。

一方中国側は、この問題を米国における麻薬需要の高さのせいにしている。米国は中国を非難する前に、米国が「オピオイド危機」に陥っている根本原因を突き止める必要があると、中国当局は主張しているのである。中国外務省(中華人民共和国外交部)の華春瑩(Hua Chunying)報道官は、「米国におけるフェンタニル問題の根本原因は中国にあるわけではない」と述べている。

フェンタニルは比較的簡単に合成できる安価なオピオイド鎮痛剤である。これはヘロインよりも効力が50倍も強力で、米国のオピオイド危機の主要因となっている。米国ではさまざまな形態で売られているが、どれも死を招く危険性がある。ヘロイン、コカイン、メタンフェタミンと混合できるフェンタニルは、錠剤に形成され、処方薬として誤って販売される可能性もある。

麻薬汚染においてフェンタニルは米国史上最も致命的な薬物である。ワシントン・ポスト紙が報道したところでは、2013年から2017年にかけて6万7,000人を超える米国人が合成オピオイド関連の過剰摂取により死亡しているが、その大部分がフェンタニルによるものである。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2018年にはさらに3万1,473人の米国人が過剰摂取により死亡した。

ベン・ウェストホフ(Ben Westhoff)記者がザ・アトランティック(The Atlantic誌に執筆した2019年8月18日付けの記事によると、フェンタニルの製造に最もよく使用される2つの成分はNPPと4-ANPPと呼ばれる化学物質である。ウェストホフ記者がフェンタニル危機の調査に乗り出した2017年初頭、「インターネットにはこの化学物質の広告が氾濫していた」という。ある中国人実業家は同記者に対して、化学物質は米国よりもメキシコでより多く売られていると語っている。

同記者の記事には、「これは驚くに値しない。昨年、フェンタニルにより約3万2,000人が死亡した米国で使用されている違法フェンタニルのほとんどは、メキシコ経由で流入しているからである。メキシコの麻薬カルテルにはフェンタニルを一から製造できるほど熟練した化学者が存在しないため、こうした組織は中国から大量に前駆物質を買い入れる。その後でフェンタニルを製造するのは訳ない」と著述されている。

Share