中国にインフラ投資を許可した中央アジア諸国の後悔

中国にインフラ投資を許可した中央アジア諸国の後悔

中華人民共和国(中国)による外国投資と拡張主義に対する反発が世界中でますます拡大している。特に中央アジアでは中国の存在に対する憤りが急速に高まっている。

例えば、ワシントン・ポスト紙によると、カザフスタンではここ数ヵ月の間に中国の工場建設を巡って一連の反中国抗議運動が発生している。また、キルギスでは中国の金鉱採掘会社による環境汚染が家畜大量死に繋がったという疑いが浮上したことで、2019年8月に約500人に上る地元住民が同社運営の建設現場に押し入り、中国人労働者との紛争の末、建設機器等を奪うという事件が発生した。ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE/RL)が報じたところでは、同事件で数十人が負傷を負っている。(写真:2019年9月4日、カザフスタンのアルマトイで開催された集会で、同地における中国の工場建設への反対を表明する抗議者等)

ロイター通信の報道によると、2017年、習近平(Xi Jinping)中国主席が新疆ウイグル自治区の「安定を守るために『鉄の長城』を築かなければならない」と発表した際、中央アジアでは反中国共和党(PRC)感情が湧き上がった。

ロイター通信が伝えたところでは、新疆ウイグル自治区の不安定性は、特にトルコ系少数民族に対する中国政府の弾圧活動に起因していると、人権擁護団体は主張している。国際連合人権理事会の発表によると、中国政府はウイグル人、カザフ人、キルギス人などの民族を厳しく取り締まり、新疆ウイグル自治区の強制収容所に200万人ものイスラム教徒を抑留している。

中国の一帯一路(OBOR)構想にとって、中央アジアは地域を繋ぐ通路として地理的に重要な役割を果たす。経済や政治の推進などを目的として、中国は一帯一路政策を通じて欧州とアジア地域を結ぶ地上・海上ネットワークを構築して管理することを狙っている。

中央アジアにおける中国の一帯一路プロジェクトには、同地域での中国の領土拡大計画が裏に潜んでいる可能性があるとして、多くのアナリスト等が懸念の声を上げている。カザフスタンとタジキスタンは中国の新疆ウイグル自治区と3,200キロ超に及ぶ国境を接している。中国としてはこの一帯をどうしても手中に収めたいと思っている。

アナリスト等の懸念の種は、世界的に影響力を拡大している中国が、1990年代後半にカザフスタン、タジキスタン、キルギスと中国の間で締結された国境協定を中国の利益に有利となるように改正する可能性があることである。

近年、カザフスタン、タジキスタン、キルギスでは中国が賃借する農地も増加している。こうした農地では中国人労働者が農業を行うことから、こうした現状も地元住民の怒りに拍車をかける要因となっている。

また、一帯一路政策の下、財政的に圧迫している国を狙う中国が融資を供与した68ヵ国中、タジキスタンとキルギスを含む23ヵ国が高い債務リスクを抱えていると、ワシントン・ポスト紙は報じている。キルギスが負う対外債務4,000億円相当(40億米ドル)の約50%が中国に対する負債である。年間国内総生産が7,000億円相当(70億米ドル)である同国にとって、これは相当な額となる。同紙によると、タジキスタンでもその対外債務2,900億円相当(29億米ドル)のほぼ半分が中国によるものとなっている。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の解説・分析ウェブサイト「ザ・ストラテジスト(The Strategist)」に掲載された{元豪外務貿易省高官、コナー・ディリーン(Connor Dilleen)研究者著の記事には、中央アジアにおける中国の一帯一路プロジェクトの展開に伴い、「資源と食料の安保を確立するグローバル戦略の一環として、農業開拓と資源開発を目的として、中国は譲歩策としてより多くの土地の使用・管理権を要請することになると考えられる。また、中国は引き続きこうしたプロジェクトを自国労働力の『放出弁』として利用する可能性が高い。そうなれば、中国人労働力の中央アジアへの移動がさらに激しくなる」と記されている。

同研究者はさらに、中央アジアにおける中国の一帯一路プロジェクトは、「明らかに同地域における中国の重要な影響力を強化し、それに伴う土地の搾取と労働力移動という『植民主義』的な作戦の上辺を飾るものに過ぎない。中央アジアにおける中国の投機には、組織的な汚職や権威主義、また潜在的なイスラム軍国主義という点でも莫大なリスクが潜んでいる。しかし、もし中国が最初から中央アジアで帝国主義プロジェクトを繰り広げることを計画していて、こうしたリスクは必然的なものと捉えていたとしたらどうなるのか?」と疑問を投げかけている。

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