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中国による南シナ海での漁業禁止措置に対して、ベトナムとフィリピン人漁業者等が抗議活動を展開

ヘッドライン | May 19, 2020:

ドレイク・ロング(Drake Long/ラジオ・フリー・アジア(RFA

中国は毎年夏季に南シナ海における漁業の一時的な全面禁止を発表しているが、同紛争海域での中国海警局(CCG)による厳格な取り締まりの脅威が高まる中、ベトナムとフィリピンの漁業団体が抗議を申し立て、それぞれの政府に同措置に「強く反対」するよう要請している。

ベトナムの国営報道機関が報じたところでは、ベトナム漁業協会(VINAFIS)は同協会のウェブサイトに「ベトナム人漁業者は主権に基づき同海域で漁業を営む完全な権利を有している」とする声明を掲載した。さらに、中国による漁業禁止措置は西沙諸島(パラセル諸島)に対するベトナムの主権を侵害するものであると同時に、国際法に違反するものであると付け加えている。

同海域では5ヵ国が領有権を争っているにも関わらず、実質的に南シナ海全域の領有権を主張する中国は、2020年5月1日、自国が一方的に主張する管轄権に基づき同海域での休漁期間を設定した。禁止区域には、西沙諸島とスカボロー礁を含む南シナ海の北緯12度線までの水域が含まれる。(写真:2019年6月にマニラの公園で行われた南シナ海漁業禁止措置抗議デモで反中のプラカードと旗を掲げる活動家等)

中国は通常、自国の漁船に対してのみ禁止措置を実施しているが、2020年には他国の漁業者も同措置に遵守することが意図されており、中国海警局と中華人民共和国農業農村部(日本の農林水産省に概ね該当)は8月16日まで続く禁止期間中の違法行為は「取り締まる」と公言している。中国の国営通信社である新華社通信によると、中国の取り締まり活動は「海洋漁業の権利と利益だけでなく、海洋生態環境を保護する」ことを目的としている。

ここ数ヵ月の間、中国海警局の小型哨戒艇による攻撃的な行動が目立っていることもあり、同措置の発表に関しては地域の漁業者団体がそれぞれの政府に対して反対を強く要請するという事態に発展している。

フィリピンの小規模漁民組織連合「パマラカヤ(Pamalakaya)」のフェルナンド・ヒキャップ(Fernando Hicap)会長は声明で、「中国公安機関がフィリピン人漁業者を逮捕すると公言しているのに、フィリピン政府は手をこまねいている場合ではない」とし、「中国の脅し行為に直ちに抗議し、これを停止させるべきである。中国の侵略行為に対抗するために執行できる国際法や地域の漁業法があるはずだ」と述べている。

ラジオ・フリー・アジアが取材したあるベトナム人漁業者は、西沙諸島付近での漁業活動は継続するつもりでいるが、中国海警局と海上民兵からの嫌がらせ行為を懸念していると話しながら、「中国船舶に追跡された場合は [管区海上警察に] 通報するが、通常は [ベトナム海上警察] は全く役に立たない」と説明している。

同漁業者によると、5月上旬には西沙諸島周辺で10隻ほどの漁船が措置に違反して漁業を行っている。

ベトナム漁業協会はベトナム政府と同国を一党独裁するベトナム共産党に対して、「徹底的な措置」を講じて中国の行動に反対し、同措置を阻止するよう要請したと話している。政府支援機関もまた、ベトナム領海で作業する地元漁業者を保護するために哨戒活動を強化するよう求めている。

ベトナム・クアンガイ省ビンソン県ビンチャウ村の漁業共同体の別の情報筋によると、中国船舶による漁網の切断や漁獲物の押収が発生した場合は、通常、漁業者等は地元の海洋捜索救難センターに連絡し、同センターが損失を補償する仕組みとなっている。

ベトナム漁業共同体の情報筋は両者とも、当局からの反発が発生する可能性を考慮し、匿名を条件として取材に応じている。

中国による夏季の漁業禁止措置は、これまでも繰り返し南シナ海周辺諸国との争点となっている。2019年に中国が禁止措置を発表した際は、ベトナムは公式に抗議を申し立てたが、ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領が中国政府との緊密な関係を求めていることから、フィリピンからは正式な抗議は発せられなかった。

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