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サイバー脅威の軽減を目指して協力の必要性を強調するASEAN閣僚等

近年、インド太平洋地域ではサイバー攻撃が猛烈な勢いで発生していることから、ASEAN加盟10ヵ国が一丸となってサイバーセキュリティ強化に乗り出した。2019年10月2日にシンガポールで開催された第4回サイバーセキュリティ閣僚会議(AMCC)に加盟諸国の緊迫した意識が顕著に表れている。同会議では、各国閣僚とサイバーセキュリティ関係者等がASEANサイバーセキュリティ調整機構に関する案を起草し、シンガポールとタイに所在するサイバーセキュリティセンターに対する支持を誓約している。

シンガポールのS・イスワラン(S. Iswaran)情報通信相は開会の辞で、サイバーセキュリティ閣僚会議参加者等を前に、「サイバー攻撃者はますます進化を続けており、より精巧なツールやテクニックを開発し続けている」とし、「攻撃者等の動機はもはや経済的利益だけでなく、重要な情報インフラの破壊が目的となっている。同時に、攻撃対象領域が拡大し、IoT(モノのインターネット)や5Gといった新たな技術領域が出現していることで、サイバー攻撃を防御する側はますます困難な地勢を保護しなければならなくなっている」と指摘している。

シスコシステムズ(Cisco Systems)が2018年に実施したサイバーセキュリティ調査により、インド太平洋地域に所在する企業は10秒ごとに新たなサイバー攻撃を検知していることが明らかとなった。調査対象の200組織は、サイバー攻撃による年間合計損失額は1,000億円相当(10億米ドル)を超えると報告している。CIOマガジン(CIO Magazine誌に掲載された同地域での最近の攻撃として、2019年3月に発生したトヨタ自動車のタイとベトナムの現地法人におけるサーバー侵害、90万人を超えるクライアントに影響を及ぼした2019年1月のフィリピン金融サービス大手企業「セブアナ・ルリエ(Cebuana Lhuillier)」のサーバー侵害、2019年1月にシンガポールで発生したHIV診断患者1万4,200人の個人データ窃盗、2018年3月に発生したタイ第2位の大手通信事業者「トゥルー・コーポレーション(True Corp.)」の顧客4万5,000人の身分証明データ暴露が挙げられる。

産業界と政府全体の取り組みを分野横断的な新規調整委員会と統合する必要性を同会議で認識した閣僚等は、この新たな機構により現在の差し迫った問題に対処するが、同機構は「既存のASEAN分野別組織の活動とは重複させない」ことを強調している。

イスワラン情報通信相はまた、見通し予算22億円相当(2,200万米ドル)の5ヵ年計画によるASEANシンガポール・サイバーセキュリティ・センターオブエクセレンス(ASCCE)の開設予定を発表し、地域全体における能力強化の取り組みを目的として、同センターがタイに所在する日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターに追加されると説明している。

「ASEANシンガポール・サイバーセキュリティ・センター・オブ・エクセレンスは3個の主要機能を果たすことになる」と発表した同情報通信相は、「第一に、国際法、サイバー戦略、サイバー紛争、法律、サイバー規範、および他のサイバーセキュリティポリシーに関する問題についての研究を実施し、研修を提供すること。第二に、CERT [コミュニティ緊急事態対応チーム] に関連性の高い訓練を提供し、オープンソースのサイバー脅威と攻撃関連の情報とベストプラクティスの共有を推進すること。第三に、仮想サイバー対策訓練と演習を実施すること」と各機能を説明している。コンピュータセキュリティインシデントの処理を目的として、コミュニティ緊急事態対応チームは各国政府により採用されている。今回のサイバーセキュリティ閣僚会議で発表された実務レベルの委員会がASEAN CERTの協力態勢の調整を担当すると共に、「重要な情報インフラの保護とサイバーセキュリティに関する相互支援」の責任を担う。マレーシアのゴビンド・シン・デオ(Gobind Singh Deo)通信マルチメディア相は、「迅速かつ効果的な行動ベースの対応」を確実に実現するため、同委員会はサイバー攻撃に関する報告書を受け取り調査するという形態で事態に対処する必要があると述べている。

会議の閉会に当たり、世界的に増加しているサイバー攻撃の脅威に対抗するために共同の取り組みが必要であることを強調するイスワラン情報通信相は、

「我々諸国の利益は深く絡み合っている。国家レベルか、国際レベルか、ASEAN内かに関わらず、サイバーセキュリティを強化するために諸国が一丸となって協力することが必要かつ貴重である」と語っている。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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