Uncategorized

  • インド太平洋の平和維持軍、民間人保護に注力

    マンディープ・シン(Mandeep Singh) 国連平和維持活動に貢献するインド太平洋諸国が一堂に会し、民間人を被害から守る方法を学ぶ機会が設けられた。 2018年12月下旬にニューデリーで開催されたこの共同ワークショップ「総合的文民保護(IPOC/Integrated Protection of Civilians)」には、国連平和維持センター(CUNPK)と赤十字国際委員会(ICRC)が関与している。 国連平和維持活動に関与する23ヵ国が同イベントに代表を派遣し、民間人の保護、紛争関連の性的暴力、児童の保護、社会的弱者の保護などの懸念への対応について話し合った。会議主催者であるインドからは10名の軍当局者が参加している。 公式声明にて、インドの軍広報担当者であるモヒット・ヴィシュヌ中佐は、「本セミナーは、CUNPKやICRCの講師など、世界でも非常に熟練した経験豊富な講師を招聘して実施された。インストラクターやファシリテーターを含め、全大陸から参加者を募り、トレーニング、集中力、方向性において良好なバランスを確保した」と述べている。 Vivekananda International Foundation(ヴィヴェーカナンダ国際財団)はニューデリーに拠点を置くシンクタンクだが、インド陸軍の上級将校とIPOCワークショップについて話し合った同財団の助教、プレティーク・ジョシ(Prateek Joshi)はFORUMに、「(平和維持の)介入の成功は、人民や地形、社会、そして紛争の性質をより深く理解することにかかっている。軍隊と援助機関の間に接点を構築する必要性が非常に高まっている。IPOCのような話し合いの場を設けることで、介入を成功させるためだけでなく、影響を受ける地域社会に対する介入のメリットを高めるためのアイデアや方法をブレーンストーミングできる機会が得られる」と語っている。 国際連合平和維持軍による民間人虐待に関する近年の報告書により、2013年から2018年の間に被害者であることを主張する女性と児童からの612件の申立てを国連が認識していることが明らかとなった。 部隊の戦闘による民間人の死傷を防ぐことが平和維持軍の最優先課題であるとジョシ助教は説明した上で、「強姦、児童の誘拐、人身売買」の防止が大きな関心事となっていると付け加えた。平和維持軍側のより厳しい規律と地元民間人のエンパワーメントという一対のアプローチが必要となっているのである。 同氏は、「平和維持軍が認識すべき基本事項は、同軍は戦うためではなく、紛争を管理して民間人に対する残虐行為を防止するために配備されるということである。軍事力は最小限に抑えるという原則に従うべきであり、紛争地域内部の力学を理解することが不可欠である」と語っている。 地方議会や自衛メカニズムに権限を与え、虐待の主張に対処し、今後の不正行為を阻止することも必要であると同氏は付け加えている。 平和維持活動に関連する虐待や犯罪行為を防止するには、「明確な指揮系統と適切なコミュニケーションシステム、そして自衛のための明確な交戦規定が必要である」と同氏は述べている。 紛争地域に永続的な平和をもたらすことが文民保護における最適な解決策であり、これには紛争地域における暴力的な集団を「排除」するための平和維持軍の努力が必要であると強調する同氏は、「国連とICRCはまた、支援により休戦への道を固めるメカニズムを確立することを目指している」とし、「究極の目標は、政府が良好に機能するような状況を構築することである」と説明。 平和の兆しが見えれば、避難民等の安全な帰還を確実に実現することが平和維持軍の主要任務となると同氏は述べている。 「平和維持軍は機関に兵站を提供する手段となるものである。難民が帰還した後は、帰還者に対する配慮が行き渡り、安全な状況であることを監視する機関を設立する必要がある。軍の撤退後は、現地で活動する国際機関が帰還者の保護と監督を担当する必要がある」と同氏は締めくくった。 マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。

    Read More
  • シンクタンク:北朝鮮基地、ミサイル司令部として機能

    ロイター 2019年1月下旬に発表された戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によると、北朝鮮には20ヵ所の未公開弾道ミサイル基地が存在し、その内の一つはミサイル司令部として機能している。 北朝鮮専門家のビクター・チャ(Victor Cha)が共同執筆した報告書によれば、「新五里ミサイル基地とこの地に配備されているノドンミサイルにより、運用可能な原子力または従来型の先制攻撃能力が可能となり、これは推定される北朝鮮の核軍事戦略に沿った動き」と考えられる。 この秘密のミサイル基地は、2019年2月下旬に実施予定の2度目の米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩最高指導者と非核化について議論するのを「楽しみにしている」と発言した3日後に発見されたものである。 2018年6月に実施されたトランプ米大統領との第1回首脳会談で、金正恩最高指導者は非核化に向けて取り組むことを誓約したにも関わらず、以来具体的な進歩はほとんど見られていない。 ホワイトハウスはコメントの要求には即座に応じなかった。 前回2018年11月に20ヵ所のミサイル基地について報告したCSISは、新五里基地は北朝鮮がその存在を公表していないことから、「米朝の非核化交渉の対象ではないとみられる」としている。 報告書は、完全な非核化を進めるためには、同ミサイル基地は申告と査察の対象とし、廃棄する必要があると主張している。 チャ氏は、「北朝鮮は自国が開示していない事柄については交渉を行わない」と説明している。 同氏は、「北朝鮮は一芝居打ったようである」とした上で、たとえ北朝鮮が公表済みの原子力施設を破壊したとしても、「同国はまだ十分な軍事力を備えることができる」と指摘している。 報告書によれば、非武装地帯から北へ212キロメートルの地点に位置する新五里施設は18平方キロメートルに及ぶ基地で、韓国や日本だけでなく、西太平洋の米領グアムにまで到達可能な弾道ミサイル開発に重要な役割を果たすことができる。 同施設には、中距離弾道ミサイル「ノドン1号」を運用する連隊規模の部隊が置かれていると報告されている。(写真:平壌の金日成広場で挙行された朝鮮人民軍創建70周年記念軍事パレードで披露された大陸間弾道ミサイル。2018年2月に北朝鮮の朝鮮中央通信により発表された写真) 2018年12月27日に撮影された基地の衛星写真からは、地下施設への入り口、堅牢なシェルター、司令部への入り口が確認できると報告されている。 「ノドン」(「ロドン」とも発音される)はソビエト連邦のスカッド技術に基づく中距離ミサイルで、北朝鮮は1990年代半ばから配備を開始しているが、韓国にとっては、同ミサイルを備えた基地の一つとして新五里施設は長い間既知の存在であった。 韓国の統合参謀本部広報担当者、金ジューン・ラク(Kim Joon-rak)は、「新五里施設は米国と協力しながら韓国が監視している施設である」と記者会見で語っている。

    Read More
  • ニュージーランド、インド太平洋地域におけるプレゼンス強化を米国に要求

    トム・アブケ(Tom Abke) 南シナ海やインド太平洋の他の地域における緊張が高まっていることを受け、ニュージーランドは米国に対して同地域、特に太平洋諸島諸国全体でより積極的にプレゼンスを高め、ニュージーランド政府の安定性と国土領土的利益の確保を支援するよう求めた。 最近ワシントンを訪れたニュージーランドのウィンストン・ピーターズ副首相は、その訪問中に、「ニュージーランドと米国は連携して、さまざまな地球規模問題に取り組んでいる。ますます紛争が激化し、安保が脆弱化しているアジア太平洋地域において、両国の協力体制と同心がはっきりと浮き彫りになりつつある」と語っている。 2018年12月にワシントンのジョージタウン大学で開催された講演で、ニュージーランド政府の見解ではこの地域は至急対応を要する変曲点に立っていると、ピーターズ副首相は述べている。訪問中、ピーターズ副首相はマイク・ペンス米副大統領とマイク・ポンペオ米国務長官と会見した。(写真:米国務省でニュージーランドのウィンストン・ピーターズ副首相を歓迎するマイク・ポンペオ米国務長官(右)) ピーターズ副首相は、南シナ海において対立する領土主張に伴い高まっている法的問題について言及。 「紛争の激しい海域に建設された人工島の軍事化が進められていることから、緊張が増している。ニュージーランドは、国際法と海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に従って紛争を平和的に解決することを一貫して関係国に訴えてきた」と同副首相は語っている。 中華人民共和国(中国)は、近隣諸国が領土権を主張する海域に複数の人工島を建設して軍事施設を設置した。 ニュージーランドと米国は、特定の国の領土として、あるいは他の憲法上の権利として存在する多くの太平洋諸島に対して憲法上の義務があると、同副首相は指摘している。また、「ニュージーランドは臆することなく米国に対してより積極的な関与を求めた。事態は緊急を要している」と付け加えている。 最近、ニュージーランド政府は、中国の大手通信会社であるHuawei(ファーウェイ)による同国の5Gネットワークへの接続をブロックした。また、同国は米国からボーイングP-8Aポセイドン海上哨戒機4機を約23億ドルで購入することに合意している。さらに、ニュージーランド政府が太平洋島嶼国への開発援助の支出額は世界第2位になったとピーターズ副首相は語っており、これはその領域内において太平洋島嶼国に米国が貢献した額におおよそ匹敵するものである。 同副首相は、「戦略的競争の付随的要素を持ってより大規模な参入者が太平洋への関心を新たにしている時代に、この地域における活動が不均整であることをニュージーランドは強く意識しており、これをひどく懸念している」と続けている。 同副首相はニュージーランドが外交政策の新たな転換に取り組んでいると説明。これは、「Pacific Reset(太平洋リセット)」と呼ばれる戦略により、太平洋島嶼国との関係を強化することで、島嶼国の経済と独立を支援し、民主主義と人権擁護を推進することを目的とするものである。「ますます紛争が激化している太平洋の戦略的環境」における対応として、戦略を成功させるため、ニュージーランド政府がオーストラリア、欧州連合、フランス、日本、英国、米国に協力を求めていると、同副首相は付け加えている。 同副首相は、太平洋諸島地域に関する協力という点で、2018年はウェリントンとワシントン間の関係が良好な年であったと認めている。 「パプアニューギニア、フィジー、トンガの訓練や備品に関する他の支援に加えて、地域全体における海上安保、人道支援、災害救援、平和維持機能を強化する新たな資金提供に関する誓約」を含め、「ニュージーランドはトランプ政権による最近の発表を歓迎する」と締めくくった。 トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

    Read More
  • 韓国の国防白書、南北朝鮮間のムードの変化を反映させて「敵」を再定義

    フェリックス・キム(Felix Kim) 大韓民国(韓国)による最新の国防白書では、「北朝鮮は敵」という記述が削除され、北側の隣国に対するより懐柔的な語調が反映されている。 文在寅(写真参照)政権では、韓国国防省が最近発表した2018年国防白書が初の白書となる。今回の国防白書では、認識された国家脅威、ソウルとワシントン間の同盟、軍事改革イニシアチブ、そして北朝鮮との長期的平和の構築に向けた取り組みに焦点が当てられた。 国防省当局者は2017年初旬発行の白書以降「敵」の定義が変更されたとニュースリリースで説明している。従来、韓国の「敵」とは、核とミサイルの脅威をもたらす北朝鮮政権と北朝鮮軍を主に意味するものであった。 今回の国防白書には、「国防に関するこの白書では、大韓民国の主権、国土、国民、財産を脅かし侵害する勢力を敵とみなす」と記述されている。定義が「拡大され、北朝鮮による脅威だけでなく、潜在的な脅威、国境を越えた脅威と軍事関連以外の脅威が範疇に含まれた」のである。 韓国国家戦略研究所の統一戦略センター責任者、文成墨(Moon Seong-mook)は、この定義には現在の南北朝鮮間の「和解ムード」が反映されているとFORUMに語っている。 同氏は、「両国首脳は3度にわたって会合を重ね、朝鮮半島に平和をもたらす努力を続けているところである。しかし、[敵] という表現を排除したからといって、国境周辺の敵対的な状況が終結したという意味ではない。厳密に言えば、南北朝鮮は戦争状態にある」としている。 両国の軍隊は国境を境にして互いに反対勢力を維持し、現在の停戦状態が正式な和平条約締結となるまで、この状況は変わらないと同氏は説明している。 また、「同省の決定は南北朝鮮間の関係の改善を反映しているとは言え、これを敵対心の消失を意味するものと解釈されることは意図していない」とも述べている。 同白書は、兵権の再構築を含め、軍事力管理と軍事戦略の変更の明確化と共に、韓国軍の透明性の向上を追求する内容となっている。 同国防省は、「加えて、平和と繁栄に関して韓国を支援する強力な軍の早期実現を目指す国防改革2.0の背景、目標、および実施に関する記述も含めている」と説明している。 国防改革2.0とは、文在寅政権が進める韓国国防組織に対する一連の改革を指すものである。これには、軍人の人権保護、兵役条件の改善、および防衛関連の購買の腐敗排除が含まれる。 韓国が直面している脅威の特徴付けが従来とは異なるものとなり、ソウル国境に駐在する軍隊の担う新しい役割が明確化される一方で、これにより軍の中核機能が再度浮き彫りにされると文成墨は語っている。 さらに、「つまり、国が直面する他の脅威には、テロや自然災害が含まれるということである」とし、同省は、「この種の新たな脅威に対する対応策と準備態勢を改善する予定である。 同時に、準備態勢と軍事力の強化に対する強い意欲を明らかにしている。しかし、最も重要なことは、米韓同盟と抑止力を維持することである」と話している。 フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

    Read More
  • 東京都、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に備えてサイバー対策を強化

    フェリックス・キム(Felix Kim) 2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に備えて、日本は重要インフラのサイバーセキュリティ対策強化に一層取り組んでいる。日本政府は、電気通信、銀行業務、輸送、エネルギー、および医療に関するサイバーセキュリティガイドラインの改訂を予定している。 東京の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が作成した日本のサイバーセキュリティ戦略の概要によると、政府自治体はサイバー攻撃対策のために民間企業と連携しながら、攻撃防御のための重要システムを設置している。 NISCの戦略概要には、「重要なインフラの妨害やIoT [モノのインターネット] デバイスの意図しない動作により多数の事業、機能、サービスが中断されると、社会に深刻な影響が及ぼされ、国家安保問題に発展する可能性がある」と記述されている。 毎日新聞によると、こうした危機を防ぐために2019年1月17日に東京で開催された重要インフラに関するサイバーセキュリティ安全保障会議には、政府と民間企業の代表者が参加している。同会議により、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電気、ガス、政府と行政サービス、医療、水、物流、化学産業、クレジットカード、石油といった14種類の重要インフラに関するサイバーガイドラインの改訂が決定された。 潜在的に悪意のあるデバイスの購入を回避するため、通信技術の公的調達が精査される予定である。 NISCは、国務大臣(東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当)と日本のサイバーセキュリティ戦略責任者を務める桜田義隆、および東京の国家安全保障会議、IT戦略本部、防衛省や警察庁を含む多数の政府省庁と密接に連携を図っている。 共同通信によると、東京都はまた、オリンピック・パラリンピック競技大会におけるサイバー攻撃対策の準備を進める上で欧州連合にも支援を求めている。共同通信が「情報通信技術における世界的な先進国」と表現するエストニアが協力国になる可能性が高いとみられている。安倍晋三首相は2018年1月にバルト3国を訪問。 民間企業におけるサイバー攻撃対策強化を推進するため、政府戦略により企業指導者等の意識向上を啓発している。 NISCの戦略概要は、「企業の事業継続性を確保し、新たな価値創造を実現するために、すべての産業分野において一貫したサイバーセキュリティ対策を実施する必要がある」と指摘。 そのため、この戦略では、企業がサイバーセキュリティを「価値創造の推進力」として強化し、経営陣がサイバーセキュリティへの支出をコストではなく投資とみなすことが奨励されている。 日経アジアレビューによると、2019年4月に開催される政府機関や大学長との会合において、民間企業の指導者等がサイバー攻撃に関する懸念を議論し、最新対策に関する情報を取得する予定である。 NISCの戦略概要は、「政府機関、地方自治体、サイバー関連企業、重要なインフラ事業者、教育研究機関、および一般大衆を含む関係者等が協力し合うことで、多層のサイバーセキュリティを確保することが重要である」と結論付けている。 フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

    Read More
  • 中国の領土買収に警戒心を強めるフィリピン指導者と国民

    FORUMスタッフ 比スービック湾に位置する大規模造船所の運営企業が会社更生法適用を申請し、裁判所命令により同工場が管財人による管理下に置かれた後、フィリピン指導者等は同工場をフィリピン管理下に維持するための政策を推し進めている。一部の報道によれば、中華人民共和国(中国)の国営企業1社を含む中国系企業2社が同工場に対する関心を表明しており、中国系企業が同工場を買収する可能性があることから、フィリピン安保に対する新たな脅威が出現することになると関係者等は警告している。 フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)国防相は、2019年1月中旬にロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領やリチャード・ゴードン(Richard Gordon)比上院議員などの関係者等と会談し、韓国系企業の韓進重工業が運営してきたこのフィリピンのスービック湾工場の管理権を維持する計画を策定したと話している。ラジオ・フリー・アジアの提携オンラインニュースサービス、BenarNewsによると、同企業のフィリピン法人は1月初旬に破産を申請している。 マニラ市で開催されたフィリピン外国人特派員協会(FOCAP/Foreign Correspondents’ Association of the Philippines)の年次総会において、ロレンザーナ比国防相は、「フィリピン海軍は、『海軍基地を設置できるため、同地はフィリピンの管理下にすべきである』と提案している」と語っている。BenarNewsによると、ゴードン比上院議員が南シナ海に面する同造船所内にフィリピン海軍本部の移動を推奨している、と報じている。 マニラ市は、今後10年間に船舶をさらに購入することを計画していることから、元米軍基地の敷地内に建設されたこの造船所を管理下に置くほうが有利であると、ロレンザーナ国防相は指摘している。同国防相によると、マニラ市はオーストラリア、日本、韓国、米国といったフィリピン同盟国の事業体に同造船所運営を任せることも検討しているようである。 Maritime Executive(マリタイム・エグゼクティブ)誌のウェブサイトによると、さまざまな安保専門家が中国による同造船所買収に対して警鐘を鳴らしている。これは、中国による投資慣行の傾向を考えると、同造船所買収により中国が西フィリピン海とも呼ばれる南シナ海の支配権を掌握しやすくなるためである。 アレキサンダー・パマ(Alexander Pama)元フィリピン海軍司令官は、Facebook記事で、中国系企業が資産の支配権を獲得することによりもたらされる脅威について警告している。 ニュース報道によると、パマ元海軍司令官は、「この韓進重工業の造船所に関する事象は、事業や財政、またその他の経済上の問題だけではないことに注意してほしい。これは非常に重大な国家安保問題である」とし、「スービック湾の同造船所の所有権を握ることで、その所有者はフィリピンにおける最も戦略的な地理的海事・海上資産の一つに無制限にアクセスできるようになる。これは民間造船所であるとは言え、所有者がここを事実上の海軍基地にしようとしても、それを防ぐ手段はない」と記述している。 また、最近の調査結果によると、フィリピン国民の間でも中国の南シナ海への侵入に対する警戒心が高まっている。2018年9月中旬に18歳以上の成人1,500人を対象として対面形式で実施された国勢調査(Social Weather Survey)をフィリピン統計機構(PSA)の予測による重み付けを用いて分析した結果では、人口の84%が中国の領土侵害に対する政府政策が十分ではないと感じていることが示されている。 また、人口の87%が、中国が領有を主張する南シナ海諸島の領有権をフィリピンが確保することが重要であると述べている。さらに、人口の89%が南シナ海の領土問題を認識しており、中国によりフィリピン人漁師が脅かされていることを65%が認識している。 他国に対する信頼性の高低に関して、調査参加者の回答の比率から分析すると、フィリピン国民は米国を「非常に良好」、日本、マレーシア、イスラエルを「中程度」、そして中国については「不良」と感じている結果となる。 BenarNewsによると、ロレンザーナ国防相は、「フィリピンにとって最も重要な対外安保上の課題は、南シナ海における領土と海事の主張である」と述べている。 また、「海を挟んでフィリピンに対する大国、中国は、当国の沿岸近くを占領し、軍事化している。フィリピンは当国領域のいかなる部分も明け渡すつもりはない」としている。 冷戦終結後、1992年にフィリピン国家主義者等の意向により、米国からフィリピンへのスービック返還が実現した。フィリピンの上院において、「Magnificent 12」として知られる12名の議員の投票により、米国との軍事基地協定の延長が拒否されたのである。rappler.comウェブサイトは、この12名は当時の上院議長のホビト・サロンガ(Jovito Salonga)、上院議員のフアン・ポンセ・エンリレ(Juan Ponce Enrile)、アガピト・アキノ(Agapito…

    Read More
  • 近代化するインドネシア海兵隊

    トム・アブケ 軍関係者によるとインドネシアは、海兵隊に新たな資産を獲得し、国の東部に新しい統括部隊を加え、隊を北部にあるナトゥナ諸島の統合部隊に参加させることで、「複雑で不確実な脅威」に対抗する軍隊能力の近代化に取り組んでいる。 インドネシアの総合的な海兵隊装備計画には、アルチツァ (Alutsista) として知られる主要兵器システムの近代化に合わせ、「作戦分野における海兵隊の役割を強化するための訓練、任命および組織的検証」が含まれることを、2018年12月下旬にジャカルタで開催された、新しいインドネシア海兵隊司令官を歓迎する式典において海兵隊シウィ・スクマ・アドジ参謀総長が明かした。 新しい司令官であるスハルトノ海兵隊少将は、前職ではインドネシア海軍情報局の大統領保安部隊司令官を務めたインドネシア海軍アカデミーの卒業生、34歳である。増加する20,000人もの海兵隊を率いることが期待されているが、このうち3,000名が引継ぎの式典に参加した。(写真:海兵隊司令官バンバン・スワン少将(中央)から指揮を引き継いだ後、海兵隊シウィ・スクマ・アドジ参謀総長と握手をするスハルトノ海兵隊少将(右)、2018年12月27日) シウィ参謀総長はインドネシアと軍隊が直面する脅威として、テロ、過激主義、海賊、違法移民、麻薬密売、環境破壊、自然災害を挙げた。これらに脅威に直面する軍には、多機能を果たすことが期待される海兵隊も含まれている。 シウィは、2018年5月にパスマー 3 (Pasmar 3)として知られるインドネシア東部管轄に、新たに海兵隊最高司令官少将が追加配置されたことにも言及している。インドネシア国防省の声明によると、パスマー 3は海軍の上陸部隊として機能するため、海陸軍の計画と戦略的島嶼における沿岸防衛作戦に「能力、強さ、および作戦準備」を追加するものである。 シウィ参謀総長ははまた、海兵隊は2018年12月18日に設立された、南シナ海のインドネシア北部ナトゥナ諸島の新しい統合軍事部隊に参加するとも話している。この部隊は国境付近の脅威を抑止する目的で、遠隔諸島の統合軍事部隊の計画された部隊の一部として設立されたものである。   海兵隊の拡大にはまた、新たな防衛資産が伴う。 「旧式の兵器システムは、更新および近代化し、新しいシステムに置き換える必要がある」と、インドネシア防衛省、防衛施設長アグス・セティアジ准将はフォーラムに語っている。兵器のニーズの変化に伴い「水陸両用戦車、他の戦闘車両の数を増加するだけでなく、個々の武器およびチームの武器要件を満たすことも必要である」と加えている。 セティアジ准将はまた、軍隊は近代化プロセスにおける「ライフサイクルコスト」を注視し、国内で製造できる資産を優先すると明らかにしている。 海外からの購入が必要な場合、インドネシアが国内のサプライチェーンに外国で開発された防衛技術を合法的に取り込むことができるよう、防衛省の技術移転スキームを使用して購入する必要があることも説明している。 「国内で生産されている防衛装備には、UAV [無人航空機]、中戦車、長筒銃とピストルなどがある」と語る。 インドネシア海兵隊の将来における調達には、潜水艦、戦車揚陸艦、フリゲート艦、海洋巡視船、レーダー、水陸両用戦車、大砲、個人用武器およびチーム用武器が含まれる。 「将来的に、国家防衛産業は軍のニーズを満たせるようになり、同時に外国への防衛製品の販売は外貨獲得の手段となるだろう。インドネシア製品の一部は、友好的関係にある国から需要があるものもある。」と、セティアジ准将は話している。 また近代化の長期的な影響には、地域の安定を維持するための、より良い「力のバランス」と、当該地域での「防衛外交」を行うインドネシア政府の能力強化が含まれる、とも加えている。   トム・アブケは、FORUM の寄稿者。シンガポールより。

    Read More
  • 目が離せない南シナ海の安全を脅かす攻撃的な漁業活動

    FORUM スタッフ 戦略国際問題研究所 (CSIS) の調査によると、南シナ海 (SCS)における重複領域や海域紛争が、乱獲や環境破壊の加速の一因となっている。 CSISのAsia Maritime Transparency Initiative(アジア海事透明化イニシアチブ)のディレクターである研究著者グレゴリー・ポーリング氏は「深刻な漁獲量の減少によってこの周辺地域の生活が脅かされているとしても、当域の諸島、サンゴ礁、水域に関する紛争のために効果的な漁業管理が不可能となっている」と述べている。ブルネイ、中国、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムは、各々南シナ海の領有に関し、競って自国の領有権を主張している。またこれらの国々とインドネシアは、領海の区分けについても同意に達していない。 1950年代以来、乱獲により南シナ海の漁獲量の70 ~ 95%は枯渇し、当域の漁業従事者の生活と食糧安全保障が脅かされている。調査により、過去20年間で漁獲率が66%から75%まで減少したことも明らかになった。 メディアの報告によると、一部の国家、特に中華人民共和国 (中国)は、その領土および領海の領有権を主張するために、紛争水域における漁業を積極的に奨励するばかりか助成までしており、問題の悪化を招いている。この結果、CSISの報告書では、世界中の漁船の半数以上が南シナ海を漁場としていると推測され、このことが世界の漁獲量全体の12 %を占めるという不均衡な状態が明らかになっている。 このような活動がより頻繁になると、地域の安全保障を直接脅かすことになりうる。報告では「漁業従事者が南シナ海に残った魚を競って乱獲することで、その状況は地域の軍隊関与を引き起こすほどの激しい衝突に直面している」と指摘し、「この地域の漁船の相当数が漁業を生業とするのをあきらめ、公式の海上民兵組織を介して国の直接的武力部隊として機能する可能性がさらに高まっている」と懸念を示している。 中国の海上民兵組織はスプラトリー諸島(南沙諸島)における最大の軍として台頭し、報告では、「中国のために当海域で活動する民兵組織の数は一般に理解されているよりもかなり多く、その活動はさらに執拗なものとなっている。南シナ海に着目する専門家や政策立案者は、これら当事者と当海域におけるその役割に相応しい注意を払う必要があるだろう」としている。 2019年1月に発表されたCSISとVulcan Inc.(ヴァルカン社)による6ヶ月にわたる研究では、VulcanのSkylight Maritime Initiative(スカイライト海事イニシアチブ)により、以前は利用できなかったものの現在では使用可能となった技術により、この地域の漁船のサイズと行動を分析した。 研究では、スプラトリー諸島(南沙諸島)で操業する漁船の数は、この地域に不足している自動識別システムといった従来の方法で報告されている数よりも指数的に高くなっていることが指摘されている。調査員らによって導入された可視赤外放射イメージングボート検出器、合成開口レーダ、光学衛星画像などといった機器により、より正確な船舶の数と種類を記録した。また「中国の前哨基地、特に最大規模のスビ礁とミスチーフ礁の2か所にある基地内、およびその周辺に大量の船舶が存在」し、約12海里離れたフィリピンが実効支配するパグアサ島周辺にも船舶が集中していることが明らかになった。高解像度衛星画像によると、スプラトリー諸島(南沙諸島)の船舶の大部分を占めているのは中国漁船であり、過去1年間でその数が大幅に増加したことも指摘されている。(写真:スビ礁の中国漁船、2018年8月12日撮影) 一方、中国は魚類が生息するために必要な当海域のサンゴ礁を大幅な勢いで減少させている。過去5年間にわたり、主に中国による大規模なアサリ漁、採掘、人工島の建設が重なり、南シナ海内の160平方キロメートル以上のサンゴ礁に深刻な被害と破壊がもたらされている。調査によると、現状においてサンゴ礁は1950年代より10年ごとに16パーセント減少し続けていることが明らかになった。 このような変遷の結果として、「南シナ海の漁業は崩壊の危機に瀕しており、漁業従事者の生活と食糧安全保障は重大な脅威に直面している」とまとめている。公式の数字ではおよそ370万人が漁業に従事しているが、もっと多くの人々が当該水域に依存して生計を立てているものと思われる。 研究著者は「南シナ海の漁業従事者を救い、船舶同士の思いがけない事故の頻度を低減させるには、このような船舶に対する監視状況を改善することが極めて重要である」と結論付けている。

    Read More
  • オーストラリア軍による先住民の新兵雇用が8.8パーセントに増加

    トム・アブケ オーストラリア国防軍 (ADF)は、オーストラリアの先住民の採用を強化した。2014年に設立された豪国防軍の先住民専門採用担当チームは、過去5年間で常駐新兵採用におけるアボリジニとトレス海峡諸島人の割合を5%増加し、新兵採用に占める割合をチームの発足時における3.8%から2018年12月までに8.8%まで伸ばした。 2018年12月3日のニュースリリースによると、豪国防軍は13名の先住民採用担当者を雇用している。採用担当者は国内の様々な地域から集められた候補者と共に働き、評価、採用、基本的な訓練に向けた準備を支援し、豪国防軍でのキャリアを開始するうえでの指導を行う。 国防軍採用担当部長、空軍准将のスー・マクグレディ氏は「わが軍の専門採用担当者はコミュニティとつながりを持ち、学校を訪問し、キャリアエキスポに出席し、アボリジニとトレス海峡諸島人のための専用情報セッションを推進している」と、リリースで話している。 オーストラリア国防省によると、国防先住民パスウェイプログラムが、将来性のある先住民新兵に提供され準備を支援している。 「先住民プレ採用プログラム」は、入隊に興味を持つ若者向けの6週間の合宿コースで、身体訓練、人格形成、情操教育といった面に焦点をあてている。一方、国防先住民開発プログラムは、豪国防軍への入隊を希望しているものの、読み書きや身体的能力の点で入隊が難しいと思われる若者向けの5ヶ月半コースである。 マクグレディ氏は「先住民入隊プログラムの導入、文化意識研修、提供される機会の多様性の促進により、採用率が上昇している」と説明している。 また最近における先住民の採用に大きく貢献しているのは、アボリジニとトレス海峡諸島のコミュニティであり、その中でも防衛でキャリアを目指すコミュニティの若者を同コミュニティの年長者が支援していることが大きな要素となっている、とも加えている。2016年の国勢調査ではこのグループの失業率は、非先住民グループの10倍以上であった。 ファーノースクイーンズランド軍団第51大隊(51 FNQR)の1部隊における人員の約30%は、トルス海峡諸島人と本土のアボリジニ人である。第51大隊は地域軍監視部隊として機能し、偵察や監視業務を主な役割としている。(写真:オーストラリア、ケアンズでオーストラリア軍中将リチャード・マックスウェル・バールと共にポーズをとる、ファーノースクイーンズランド軍団第51大隊の隊員たち、2018年3月) 豪国防軍のインタビューで「伝統がどうであれ、どこの出身であろうとも、先住民としての認識を持つことが重要だ。第二に軍隊側に入り軍の仲間に入ると、これで新兵になることになる」と、軍通信将校であるミシェル・フィッチャーは語っている。 先住民ピアラッパー人に囲まれたタスマニア島の自宅から、フィッチャーを豪国防軍へと入隊させたのはキャリア、資格取得、リーダーシップの機会だった。 フィッチャーは「参加している軍の先住民プログラムはスターズ財団のもので、私はダーウィン内の先住民部門代表を務めている。私たちの行くスターズのコミュニティーでは、先住民の若い女性と交流し、軍の存在やリーダーシップ能力などを示したり、彼女たちと1対1の時間を持ったりと、お互いの対人関係や、リーダーシップ、自己成長などの開発も行っている」と話す。 海軍の海上戦闘担当者であり先住民バンジャーラングの子孫でもあるサラ・ハリントンは、海軍より与えられる支援や海軍への入隊が、先住民のコミュニティ内においてロールモデルとして認められることにつながっていると、豪国防軍のインタビュー担当者に話している。 \ 「最初の週に先住民の隊員として歓迎を受け、人々がいかに自らの文化に誇りを持ち継承しているかを知り、実に感動的だった。」と振り返る。 トム・アブケは、FORUM の寄稿者。シンガポールより。

    Read More
  • 米国およびオーストラリア、グアムで対潜水艦軍事演習を実施

    AP通信社 米国とオーストラリアの軍は、航海の自由と「当海域の自由な貿易の流れ」を確保することに焦点を当てた、反潜水艦年次軍事演習に参加している。 2019年1月中旬、米国領土最西端米国準州グアムのアンダーセン空軍基地で2019年シードラゴン軍事演習が始まった。当該演習は紛争の場合における中華人民共和国(中国)または北朝鮮を仮想敵国とみなして実施される。第7艦隊哨戒偵察航空群第72任務部隊司令ブライアン・エリクソン大佐が、第7艦隊ニュースリリースに語ったところによると、11日間を予定している本軍事演習は「反潜水艦戦闘能力を構築し、戦闘における決定性を高めることに集中する…格好の機会である」。 第7艦隊は「シードラゴン軍事演習は、米国とパートナーが国際法が許す場所であれば航行の自由と、自由な貿易の流れを確保する準備が整っていることを示すものになる」としている。 (写真:米国、オーストラリア、大韓民国からのシードラゴン演習の司令官と共にポーズをとる第72任務部隊司令ブライアン・エリクソン大佐、2019年1月シードラゴン軍事演習開始時) 航行の自由は南シナ海での重要な論点であり、米国は国際法が許す場所であればどこでも航行ならびに飛行すると主張している。中国の国際法の解釈は異なっており、米国の防衛行動を危険で不安定なものだとして、これに対抗すべく定期的に航空機や船舶を派遣している。 王立オーストラリア空軍(RAAF)の部隊は、軍事演習の間、米国の部隊に参加予定である。 当該演習中、4機の米軍航空機と1機の豪空軍P-8Aポセイドン対潜哨戒機は、モバイル戦術活動センターからの支援を受けて飛行演習を実施する。ロサンゼルス級の攻撃型潜水艦を含む、動く模擬ターゲットに対し演習を実施する予定である。

    Read More
Back to top button